融資の申し込みや事業入札の際に提出を求められる、納税者の資力や信用力などを証明する「納税証明書」について、元国税徴収官が分かり易く説明します。
国税通則法第123条【納税証明書の交付等】
国税局長、税務署長又は税関長は、国税に関する事項のうち納付すべき税額その他政令で定めるものについての証明書の交付を請求する者があるときは、その者に関するものに限り、政令で定めるところにより、これを交付しなければならない。
2 前項の証明書の交付を請求する者は、政令で定めるところにより、証明書の枚数を基準として定められる手数料を納付しなければならない。
◇納税証明書と課税証明書は違う
納税証明書は納付状況や所得金額を証明するもので、税務署から発行されます。
一方、課税証明書とは、住民税の課税された額を証明する書類で、自治体から発行されます。
その他にも自治体の発行する自動車税の納税証明書などがありますので、証明書を必要としている提出先によく確認を取ってそれぞれの発行先へ交付請求をしましょう。
ここでは、税務署が発行する納税証明書について説明をします。
◇納税証明書とは
納税者の資力(納税額・所得金額)や信用力(未納・滞納がない)などを、直接又は間接に表示し証明する有力な資料です。
また、行政機関の租税債権と私債権のどちらが優先劣後するかといった関係を判定するための資料としても利用されます。
いずれも納税者に便宜を与えることを目的としています(国税通則法第123条)。
◇請求できる者
証明する事項が納税者の個人情報に関する事柄であり、その請求者の国税に関するものに限られていることから、納税証明の請求ができるのは、納税者本人のほかに、第二次納税義務者、保証人及びそれらの者から委任を受けた者に限られています。
◇納税証明書の種類
※これらの税額がないことを含みます。また、納税証明書交付請求書の証明を受けようとする事項の「法定納期限等」欄にチェックを入れると、未納がある場合のみ法定納期限等が表示されます。
法定納期限等とは、国税又は地方税と競合する私債権の担保権を設定しようとするときに、どちらの債権が優先するかといった関係を判定する際の基準となる日です。
◇使用目的
納税証明書は、主に次の使用目的に該当する場合に発行されます。
1.資金借入:資金の融資に関連して、融資先が抵当権等を設定する場合
2.入札参加指名願:入札に参加する場合
3.登録申請(更新):建設業法の規定による登録申請書に添付する場合
4.保証人:身元保証のため、官公庁又は民間業者等に提出する場合
5.その他(相当の理由の付記が必要):生活保護の申請、児童福祉法の規定による育成医療等の申請など
なお、過去3年分しか証明されず(その3及びその4を除く。)、領収書の代わりとして使用する場合には発行されません。
◇請求手続(リンク先はすべて国税庁HP)
納税証明書の交付請求手続には、書面で交付請求する場合とオンラインで交付請求する場合があります。
いずれも、「納税証明書交付請求書」の作成と交付手数料が必要です。
また、納税証明書交付請求書に個人番号(マイナンバー)の記載が必要になりますので、そのマイナンバーを確認できる書類の写しの添付が必要となります。
書面で交付請求する方法は、税務署の窓口での交付請求と郵送による交付請求の2つがあります。
オンラインで交付請求した場合、次の3つの受取方法があり、受取方法によっては、電子証明書等が必要な場合と不要な場合があります。
1.オンラインで交付請求して税務署の窓口で納税証明書を受け取る方法
2.オンラインで請求して納税証明書を郵送で受け取る方法
3.電子納税証明書(PDFファイル又はXMLファイルといった電子ファイル)で受け取る方法
≪参考≫電子納税証明書(PDF)がとても便利です(国税庁HP)
≪参考≫電子納税証明書のご案内(国税庁HP)(youtube動画15分)
◇交付手数料
書面で請求する方法の場合は400円、オンラインで請求する方法の場合は370円です。
なお、請求する税目・年度数・枚数によって計算されます。
また、収入印紙の消印は請求者ではなく税務署長が行います(国税通則法施行規則第14条)ので、郵送で請求される場合には絶対に消印をしないように注意が必要です。
◇留意事項
1. 納税証明書は原則として納税地を所轄する税務署で交付します。したがって、住所等の変更があった場合には、申告や納税をした旧税務署ではなく現在の納税地を所轄する新しい税務署へ請求します。
なお、国税局に徴収の引継ぎがされている年度に係る納税証明書(その1)は、国税局において発行します。
2. 連結子法人に対する連結法人税の納税証明書は、原則として子法人の住所地を所轄する税務署において交付します。
3. 申告や納税をした直後などは、税務署での確認に時間を要し即日発行ができない場合がありますので、税務署の受付印の押印された申告書の控えや納税したときの領収証書原本を用意したほうがいいでしょう。
特にコンビニエンスストアで納付をした場合などは、納付済みの納税証明書の発行が可能となるのは、約3週間後となりますので注意が必要です。
4. 確定申告の義務がないため確定申告をしていない場合には、納税証明書(その2)の請求はできません。
この場合、収入のない方は、市区町村にて交付する「非課税証明書」や、給与所得者で年末調整済みの方は、勤務先が交付する「源泉徴収票」または、市区町村が交付する「課税証明書」を代用するといいでしょう。
5. 納税証明書(その1)に、延滞税や加算税といった附帯税を分離して本税のみの税額を証明することはできません。
6. 被災復旧の借入に使用する場合や法律に定める扶助その他これに類する措置を受けるために請求する場合には、交付手数料を要しない場合があります。詳しくは税務署にお問い合わせください。
◇まとめ
請求人からの請求に基づき正当に発行された納税証明書は、後日、差替えや手数料の返還には応じてもらえません。
したがって、必要な納税証明書の種類・税目・年度・枚数等を提出先等にあらかじめよく確認しておくことをお勧めします。
個別転職相談(無料)のご予約はこちらから
最新記事はKaikeiZine公式SNSで随時お知らせします。
◆KaikeiZineメルマガのご購読(無料)はこちらから!
おすすめ記事やセミナー情報などお届けします
【メルマガを購読する】
【関連記事】
税務署が原告となって訴訟提起できる「詐害(さがい)行為取消訴訟」
▶その他関連記事はこちら