ノーベル医学・生理学賞の受賞者に、細胞が不要になった、たんぱく質などを分解する、「オートファジー」と呼ばれる仕組みを解明した東京工業大学栄誉教授の大隅良典さん(71歳)が選ばれた。賞金は800万スウェーデンクローナ。日本円にして約1億円だが、賞金には税金がかかるのだろうか。
スウェーデンのカロリンスカ研究所は10月3日、ノーベル医学・生理学賞に東京工業大学の大隅良典栄誉教授(71)に授与すると発表した。
大隅氏は、「オートファジー(自食作用)の仕組みの発見」の功績が評価されたもの。同研究所は声明で、大隅氏の発見は、がんやパーキンソン病、2型糖尿病のような病気解明に役立っているとし、「細胞内でいかにタンパク質が再利用されるかを理解するうえで、新たなパラダイムに導いてくれた」としている。
日本人のノーベル賞受賞は3年連続。アメリカ国籍を取得した人を含めて25人目だ。
医学・生理学賞の受賞は、寄生虫による熱帯病の治療薬を開発した大村智・北里大特別栄誉教授に続き4人目となる。以下、これまでノーベル賞を受賞した日本人一覧。
【ノーベル賞】日本人受賞者一覧
1949年 湯川秀樹(物理学賞)
1965年 朝永振一郎(物理学賞)
1968年 川端康成(文学賞)
1973年 江崎玲於奈(物理学賞)
1974年 佐藤栄作(平和賞)
1981年 福井謙一(化学賞)
1987年 利根川進(医学・生理学賞)
1994年 大江健三郎(文学賞)
2000年 白川英樹(化学賞)
2001年 野依良治(化学賞)
2002年 小柴昌俊(物理学賞)、田中耕一(化学賞)
2008年 南部陽一郎 / 小林誠 / 益川敏英(物理学賞)、下村脩(化学賞)
2010年 鈴木章 / 根岸英一(化学賞)
2012年 山中伸弥(医学・生理学賞)
2014年 赤崎勇 / 天野浩 / 中村修二(物理学賞)
2015年 梶田隆章(物理学賞)、大村智(医学・生理学賞)
2016年 大隅良典(医学・生理学賞)
大隅氏には、ノーベル賞の賞金として800万スウェーデンクローナ(約9500万円)が授与される。授賞式は12月10日にストックホルムで行われる。
下世話な見方だが、この約1億円の賞金には税金がかかるのか?答えは「ノー」。
ノーベル賞は所得税法9条の非課税項目で、税金は納めなくてもよいことになっている。
ノーベル賞が非課税となったのは昭和24年の湯川秀樹博士が日本人初のノーベル物理学賞を受賞した際までさかのぼる。このとき「賞金に課税するのはどうか」と議論が浮上、法律が改正され、所得税法に「ノーベル基金からノーベル賞として交付される金品」と明記された。
ノーベル賞は、物理学、化学、生理学・医学、文学、平和および経済学の「5分野+1分野」で顕著な功績を残した人物に贈られるが、ノーベル経済学賞だけは課税対象。なぜなら、経済学賞だけはノーベルの遺言にはなく、スウェーデン国立銀行の設立300周年祝賀の一環としてノーベルの死後70年後にあたる1968年に設立されたから。賞金はノーベル基金からではなく、同行が運営する基金から支払われているため、所得税法に明記された「ノーベル基金から」に該当しないため、経済学賞だけは課税対象となっているのだ。
ノーベル賞以外にも、オリンピックのメダリストへの賞金も非課税のほか、「文化功労者に対する年金や金品」「日本学士院や日本芸術院から渡される各賞金」も、所得税法9条13項ホに記載の通り非課税となっている。