税金の業界で秋といえば、税務調査シーズン。調査官にとって、年末までにどこまで調査件数を上げられるかが重要になってくる。一説では、調査官の勤務評定にも影響してくるだけに、年明けまで持ち越したくないのが本音のところ。こうした調査真っ盛りの中、法人調査においては、「交際費」に調査官は熱視線を送っている。
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税務調査において、調査官が必ず確認するのが交際費。経理処理としてとくに間違いが多く、ミスを指摘できる可能性が高いためだ。そして現状においては、資本金1億円以上の大企業にも認められるとあって、注目度も俄然高い。
税の現場では、資本金1億円以上の会社は、「大会社」に分類され、基本的に税務署ではなく、その上部組織である国税局が調査を行う。国税局の調査は、税務署の調査とは、深度、日数、動員する人員が違い、調査に入るからにはそれなりの成果を求める。全国5万7千人の国税職員から選ばれし先鋭が所属しているのが国税局だ。
大企業の飲食費50%基準チェック
調査官が交際費でとくに目を光らせているのが、交際費として損金算入できないものを交際費として落としていないか。さらには、交際費に含まれない「5千円基準」の適用は正しくできているかだ。大企業も現状、交際費のうち飲食費については50%まで損金算入が認められているが、これはあくまでも飲食代に限っている(措法61の44)。国税庁によると「社内飲食費に該当するものを除き、得意先等を接待して飲食するための『飲食代』、飲食等のために支払うテーブルチャージ料やサービス料等、飲食等のために支払う会場費、得意先等の弁当の差入れ、飲食店等での飲食後、その飲食店等で提供されている飲食物の持ち帰りに要する『お土産代』などがそれに含まれる」としている。
社員間の接待は認めていない。このほか認められないのが、
①ゴルフや観劇、旅行等の催事に際しての飲食等に要する費用
②接待等を行う飲食店等へ得意先等を送迎するために支出する送迎費
③飲食物の詰め合わせを贈答するために要する費用だ。
「社内の飲食費」に該当しない物差しとしては、「専ら当該法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する」(措法61の44)と規定、自社(当該法人)の役員、従業員に該当しない者に対する接待等のために使った飲食費等であれば、社内飲食費にならなとしている。
たとえば、
イ、親会社の役員等やグループ内の他社の役員等に対する接待等のために支出する飲食費
ロ、同業者同士の懇親会に出席した場合や得意先等と共同で開催する懇親会に出席した場合に支出する自己負担分の飲食費相当額だ。
一方で社内の飲食費に該当するものとしては、出向者に注意が必要。一般に出向者は、出向先の会社と出向元の会社の双方に雇用関係があるので、その人が出向先法人の役員等の立場で飲食等の場に出席したか、出向元法人の役員等の立場で飲食等の場に出席したかで判断する。 具体的には、出向者が出向元の親会社の役員等を接待する会合に、親会社の役員等の立場で出席しているような場合に支払う飲食代は、社内飲食費には該当しない。しかし、出向者が自社の懇親会の席に、あくまで自社の役員等の立場で出席しているような場合に支払う飲食代は、社内飲食費に該当する。
「5千円基準」の消費税には注意
このほか、調査の現場でよく指摘されるのが交際費に含まれない5千円基準だ。とくに消費税。会社が内税で処理していれば、消費税込みで5千円以内。外税なら税込で5400円までとなる。また、5千円を超えてしまったら、超過分だけ経費に落とせなくなると勘違いしている人も多いが、一人5千円を超えてしまったら、そもそもこの5千円基準が使えなくなる。つまり、税抜きで一人5010円でも、全額損金処理できなくなるわけだ。よくあるケースは、参加者を一人水増しすれば、一人当たり5千円を切ると考えがちだが、人数については税務調査で必ず確認する。 大企業も交際費枠が使えるようになった状況下、経理担当者だけでなく営業マンなど、実際に交際費を使う現場にも、交際費課税の実務に直結する問題については教育しておく必要がある。 一般的に大規模法人が課税当局に申告漏れの指摘を受けるケースでは、経営者が絡んでいるケースより、現場での処理において問題があることがほとんどだ。
ちなみに、中小企業の場合は、選択制となり800万円基準もしくは大企業同様の50%基準のどちらか。さらには5千円基準が使える。50%基準を選択する場合、年間1600万円以上の交際費を使わない限り損をするので、現実的には800万円基準を適用するケースが多いようだ。