所得税に並び身近な税である住民税。給与明細で税額を確認している方も多いのではないでしょうか?シミュレーションを用いて住民税を計算しながら、その仕組みを説明します。
住民税は1月~12月の所得に応じて、翌年の6月から支払いが始まります。
シミュレーションをして支払う住民税を知っておくことで、支出の予定を立てることが可能です。
今回は、住民税はなんとなく支払っているから詳しくわかっていないという方に向け、どのような計算によって住民税が算出されているのか、シミュレーションを用いて解説していきます。
「所得割」の一部を控除!住民税の金額が安くなる場合
住民税の計算を簡単に表すと、「所得割額」+「均等割額」となります。
所得割は所得に応じて変動しますし、所得税と同じように算出されるので、扶養家族や保険などの個人の事情によって、一定の額を非課税にすることができます。
また、均等割は居住地によって多少変動します。
以下では、住民税をシミュレーションで計算したときに安くなる3つの例を紹介します。
扶養家族がいる場合
扶養する家族がいる場合は、「所得割」の一部を控除できます。
その、生計を一にする配偶者がいる場合に受けられる控除を「配偶者控除」といいます。
配偶者控除には2種類あり、前年の合計所得金額が38万円以下の配偶者を有する場合に受けられる控除が「配偶者控除」、前年の合計所得金額が38万円~123万円の場合に受けられる控除が「配偶者特別控除」です。
配偶者控除は、納税義務者の合計所得金額と控除対象配偶者の年齢により控除額が定められており、控除額は13万円~38万円となっています(老人控除対象配偶者の控除額は16万円~48万円)。
配偶者特別控除は、納税義務者の合計所得金額と控除対象配偶者の合計所得金額により控除額が定められ、控除額は1万円~38万円です。
上記は、所得金額が1,000万円以下でなければ適用がありませんので、注意が必要です。
保険料の支払いが多い場合
保険料の支払いがある場合は、「所得割」の一部を控除できます。
対象となる保険は、健康保険や厚生年金保険などの社会保険、生命保険、地震保険です。
対象の範囲は、本人または本人と生計を一にする親族が負担することになっている保険料のうち、本人が保険料を支払った場合に受けられます。
社会保険料控除は、前年中に支払った保険料の全額が控除されます。
生命保険料控除は、一般の生命保険、個人年金保険、介護医療保険などが対象となっています。
控除額は、支払った保険料の金額によって変動します。
地震保険料控除は、居住用家屋や生活用動産を保険の対象とし、地震等を原因とする損害により生じた損失額を補てんする、損害保険契約等に係る地震保険部分の保険料を支払っていた場合に受けられる控除です。
こちらも控除額は、支払った保険料によって変動します。
また、地震保険料控除の申告時には証明書類が必要です。
詳しくは、下記のリンクも参照してみてください。
先ほど紹介した、扶養控除についてもこちらで確認ができます。
(参照:住民税の所得から差し引かれる金額(医療費控除・生命保険控除・配偶者控除・扶養控除など) | 調布市)
居住地によって住民税が変わる場合
住民税のうち、「均等割」は居住地によって変動することがあります。
基本的には、均等割は全国どこの自治体においても5,000円と決められています。
内訳は、道府県民税(都民税)が1,500円、市町村民税(特別区民税)が3,500円です。
しかしながら、環境保全などの目的のために、均等割を多く納めなければならない自治体もあります。
例えば、大阪府に住んでいる場合は、均等割額が5,300円と通常と比べて300円高くなります。
これは、森林の土石流・流木対策及び都市緑化を活用した猛暑対策を実施することを目的としています。
(参照:大阪府/個人府民税)
そうして、もともと住んでいた自治体の均等割が、他の地域と比べて高い場合は、引っ越しをした際に住民税が安くなることがあります。
居住地の自治体のホームページで、支払っている住民税の均等割を確認しておきましょう。
住民税の計算をシミュレーションしてみる
ここからは実際に住民税の計算のシミュレーションをしてみましょう。
今回は、東京都江東区の例を紹介します。
(参照:住民税の税率・計算例(その1)|江東区)
・条件:単身世帯で給与収入が480万円、年間の社会保険料は449,753円、生命保険料控除は69,500円
まず所得割額を求めて、そのあとに均等割額をたすという順番で算出してみます。
所得額を求める
まずは、給与収入4,800,000円から、給与所得控除額1,400,000円を引きます。
48,000,000-1,400,000=3,400,000円
この3,400,000円が、所得額となります。
課税所得額を求める
所得控除額は、社会保険料控除449,753円、生命保険料控除額69,500円、基礎控除額430,000円の場合、それを合計した949,253円です。
さきほど求めた所得額の3,400,000円から所得控除額の949,253円を引くと、
3,400,000-949,253=2,450,747円
1,000円未満の端数額がある場合は切り捨てなので、課税所得額は2,450,000円になります。
課税所得額に住民税の税率をかける
たとえば、東京都江東区の所得割の税率は都民税4%、特別区民税6%の合計10%です。
ちなみにこの所得割の税率は、全国一律10%と定められているので、単純に10%で計算しても問題ありません。
課税所得2,450,000円の10%は245,000円なので、これが所得割額になります。
均等割を足す
均等割は基本的には全国一律5,000円で、自治体によって多少変動するの前述した通りです。
たとえば、東京都江東区の均等割額は5,000円なので、さきほどの所得割額245,000円に均等割額の5,000円を足すと、250,000円になります。
つまり、今回の例で求められる住民税は、250,000円となるわけです。
税金計算を事前にシミュレーションしておきましょう
住民税は、前年度の1月~12月の所得から算出されるので、事前に住民税を算出しておくことも可能です。
住民税を事前に把握しておくことで、それに備えて貯蓄をしたり、それを踏まえた支出予測を立てることができます。
また、住民税の詳細を理解しておくことで、一部税負担を減らすことができる場合もあるので、節税にもつながるでしょう。
まとめ
本記事では、住民税計算のシミュレーション方法とともに、実際に例を挙げて住民税を算出してみました。
住民税は、「所得割額」+「均等割額」で求めることができます。
基本的に住民税は所得によって大きく変動しますし、保険料の支払いや扶養家族、配偶者の有無によっても負担額が変わってきます。
住民税は、日本に住んでいる限り納めなければならない税です。
住民税についてきちんと理解し、できるならば負担額を減らせるようにしましょう。
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