「全国旅行支援」が開始するなどアフターコロナの動きが活発ですが、それは旅行だけはありません。
「儲けのしくみ・ビジネスモデル構築の極意」、第60回のテーマは「フィットネス」です。
市場の概況
「フィットネス」は飲食業、旅行業と同様にコロナ禍によって小さくない影響を受けた業態の1つです。
経済産業省の「特定サービス業動態統計調査」によると、2020年は前年比1000億円以上も売上が縮小するほどの厳しい状況に追い込まれました。
しかし、2021年5月頃から利用者数が戻りはじめ、2019年度の約7割に至るまでになっています。同様の影響を受けた旅行業と似た傾向になっていることがわかります。
■スポーツ施設の売上高と利用者数(2019-2021)
■スポーツ施設の利用者数 (単位:千人)
出典:経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」
こうした傾向の下では、利用者におけるライフスタイルに2つの変化がありました。
1つは、「クローズド」。閉じた世界です。家にいながら、ほとんどのことが完結してしまう。テレワークの定着などオンライン前提が一般化し、フィットネスの世界もそこに包含されていきました。
もう1つが、「不景気による支出の変化」。
コロナ禍、ウクライナ問題などによって景気は大きく後退しました。
それは2020年よりも2021年からより鮮明になっています。
厚生労働省が毎月発表する「毎月勤労統計調査」によると、2021年9月頃から実質賃金と消費者物価指数が逆転、いわゆるスタグフレーション状態に入っています。
(特に顕著だったのがガソリン価格。150円→159円と10円近く上昇。2022年3月まで続きます)
出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査」
また、総務省統計局が発表する「家計調査」によると、2019年8月と2022年8月の同月実質増減率の比較では、外食を除く食品類と保険用消耗品(マスクなど)を除いて未だ大幅なマイナス状態が続いていることがわかります(平均値:▲34.7)。
出典:総務省統計局「家計調査」追加参考図表/新型コロナウイルス感染症により消費行動に大きな影響が見られた主な品目など(2022年8月分)
こうした「クローズド」「不景気」という2つの波が広がる中、旧来は「総合型」「パーソナル型」「目的特化型」「24H型」の4種類だったフィットネスビジネスの世界に、新たな業態が誕生しています。
フィットネスの新しい可能性
新たなスタイルとして定着しつつあるのが、「オンライン」「アプリ」そして「手軽」です。
「オンラインフィットネス」/コナミスポーツクラブ
https://www.konami.com/sportsclub/fitness/online/live_lesson/
フィットネスジム大手のコナミが展開するオンラインフィットネスです。
月額550円から、24H、ヨガ、リンパ、ストレッチなどをオンデマンドで利用できるプログラムです。(施設も利用する場合は、別途料金が必要)
「Nike Training Club」株式会社ナイキジャパン
https://www.nike.com/jp/ntc-app
2つめは、「アプリ」。
世界的スポーツシューズメーカーのナイキが提供するトレーニングアプリです。
狭い場所でもできるワークアウト、腕など体の一部分を鍛えるワークアウトなど190種類に及ぶメニューのほかに、健康的な食事レシピ、マインドフルネスのテクニックなど、心身両面からアプローチしたプログラムが無料で提供されています。
chocozap/RIZAP株式会社
「コンビニジム」のコンセプトで打ち出されたRIZAPの新業態です。
コンビニのコンセプト通り、RIZAP本体の長年の実績に基づいたノウハウをベースに“気軽さ”に利用できること、そして継続しやすさを体感でき組み込まれています。
まとめ
以上、フィットネスビジネスについて市場の傾向と変化、そして新たに誕生した業態について事例を交えながらご紹介しました。
それまで定番となっていた形態が、経済や社会環境の変化によって、大きく様変わりすることはもっぱらです。
既存企業にとってはリスクでもありますが、一方で新しい利益を模索する企業にとっては大いなるチャンスです。フィットネスビジネスのような比較的参入障壁の低いカテゴリーは、特にそうであると言えます。
2022年も終わりに近づいていますが、2023年はさらなる変化があることが予想されています。もちろん、マイナス面も拭えませんが、変動の幅が大きければ大きいほど新たなチャンスが誕生する可能性も十分にあるでしょう。
ぜひ、自業界に囚われることなく、さまざまな業態を視野に次なる利益の源泉を探ってみてください。
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