軽減措置の適用をうけるには、その税目に係る全ての帳簿が要件を満たす必要があります。このことについて説明していきます。
【軽減措置の適用を受けるための帳簿保存】
前回説明したように、対象となる帳簿は、所得税、法人税及び消費税に関する帳簿です。
具体的には個人・法人の青色申告者及び消費税事業者の備付ける帳簿を特例国税関係帳簿として法令に定めています。
過少申告加算税の軽減措置を受けるために優良な帳簿の保存要件を満たしていなければならない帳簿は、「修正申告等の起因となる事項に係る」ところの所得税、法人税及び消費税に関する帳簿です。
申告漏れとなっている所得金額等の税目以外の税目に係る帳簿が、優良な電子帳簿の要件を満たしているか否かに左右されないことを明らかにするために、法令上このような定め方をしています。
この定めにより適用を受けようとする税目に係る全ての帳簿が優良な電子帳簿である必要があり、その税目の一部の帳簿が優良な電子帳簿である場合にも過少申告加算税の軽減措置が受けられることを前提としていません。
したがって、対象帳簿は、所得税法上の青色申告者又は法人税法上の青色申告法人が保存しなければならないこととされる帳簿全てを指すことを意図して法定されたものであり、これらの帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存が「国税の納税義務の適正な履行に資するものとして財務省令で定める要件」(すなわち優良な電子帳簿の要件)を満たしている場合に、過少申告加算税の軽減措置が適用されることとなります。
ここで注意すべきは、適用を受けようとする税目に係るすべての帳簿について、保存要件に従った保存が必要となるということです。
保存義務者が備付け、保存を行う総勘定元帳や仕訳帳以外の帳簿は、納税者が行う事業の業種や規模によって異なり、保存義務者によって作成している帳簿はまちまちです。
例えば、現金出納帳、固定資産台帳、売掛帳、買掛帳、経費帳等の帳簿を作成している場合には、各帳簿について優良な電子帳簿の要件に従って保存する必要があります(国税庁「電子帳簿保存法一問一答(電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係)」問39参照https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_01.pdf)。
【優良な電子帳簿の要件のシステム対応】
優良な電子帳簿の要件には、トレーサビリティの確保などのシステム要件が課されています。
したがって、適用を受けようとする税目に係るすべての帳簿が要件にしたがったシステム対応をしていなければなりません。
しかしながら現時点では、固定資産台帳についてはシステム未対応であるなど、全ての帳簿についてシステム上未だ対応していない場合があります。
実務上、軽減措置の適用を受けるに当たっては、例えば法人税に係る全ての帳簿について保存要件を満たすことは困難な場合もあることから、まずは消費税について適用の可否を検討してみるなど、現実に沿った対応を検討する必要があります。