12月16日、2023年度税制改正大綱が発表となりました。今回は注目すべき改正項目が多いのが特徴です。KaikeiZineでは「インボイス」「電子帳簿保存法」「相続税・贈与税の一体化」「NISA」などを中心に解説していきます。第1回目は世間をにぎわせた「インボイス」です。
(2022年12月27日、2023年1月16日一部修正・追記)
▶「インボイス」の記事をお探しの方はこちらも
インボイス、1000万円以下の事業主に2つの緩和措置?要点まとめ
インボイスにも影響?下請法の改正でフリーランスへの保護が拡大
インボイス1:「免税事業者→課税事業者」の税負担は「売上税額×20%」に
税制改正大綱の発表直前になり、にわかに2つの軽減措置案が浮上しました。
1つが「課税事業者になった免税事業者の納税負担は売上税額の2割に抑えよう」というものです。
【参考】インボイス、1000万円以下の事業主に2つの緩和措置?要点まとめ
これが税制改正で実現しました。具体的には、次のようになります。
対象者
- インボイスの発行事業者として登録した免税事業者
- インボイスを発行しないまでも、消費税を納めることを選んだ免税事業者
インボイス制度開始前(2023年10月1日より前)から課税事業者を選択している小規模事業者は対象外です。
ただし、2023年9月30日以前に課税事業者選択届出書を提出した小規模事業者であっても、2023年10月1日の属する課税期間中に課税事業者選択不適用届出書を提出したのなら、2割特例の対象となります。
この他、「基準期間や特例期間の課税売上高が1000万円を超えた」という理由で課税対象者になったケースも対象外です。
手続き
確定申告書に2割特例の適用を受ける旨を書きます。
適用となる課税期間
2023年10月1日から2026年9月30日までの日の属する各課税期間です。
ただし「1カ月ごと」「3カ月ごと」と、課税期間を短くする特例を受けているなら、短縮した課税期間は2割特例を使えません。
2割特例のメリット・デメリット
2割特例を簡易課税のみなし仕入率との比較で考える人も多いでしょう。
卸売業以外は、2割特例を選んだ方が有利です。
卸売業のみなし仕入率が9割です。簡易課税なら「売上税額×10%」の納税で済みます。
それ以外はみなし仕入率が8割以下となるため、2割特例を選んだ方が得だと言えます。
「簡易課税のような事前の届出がいらない」「必要経費のインボイスを保管しなくてもいい」「本則課税か2割特例かはその都度考えればいい」ことを考えると、かなり柔軟性の高い特例です。
ただし、2割特例は時限措置です。
適用期間が過ぎれば再び「本則課税か、それとも簡易課税か」の選択を迫られます。
この3年の間に、どうするかを考えなくてはなりません。
なお、この2割特例の課税期間の次の課税期間に、簡易課税の届出をすると、届出をした課税期間から簡易課税で申告・納税できます。
※実際の消費税の有利不利は、事業主ごとに異なります。本則課税・簡易課税・2割特例のどれがいいのかはご自身の責任でご判断ください。
インボイス2:1万円未満は帳簿記載のみで仕入税額控除OKに
大綱発表の直前でもう1つ注目されていたのが「1万円未満の仕入税額控除」です。
2023年10月1日以降、仕入税額控除にはインボイスが原則必須です。
とはいえ、中には銀行の振込手数料やETCの支払など、極めて少額の支払もあります。
こういったものにもインボイスを求めるのは、かなりの負担です。
そこで今回の改正では、支払対価が1万円未満の課税仕入れについては、インボイスがなくても帳簿に記載すれば仕入税額控除ができることとなりました。
ただし、これで仕入税額控除できるのは、次のどちらかの事業者のみです。
- 基準期間の課税売上高が1億円以下
- 特定期間の課税売上高が5000万円以下
こちらも1と同様、期限付きです。
2023年10月1日から2029年9月30日までに行った課税仕入れが対象となります。