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2019年度税制改正で遠距離恋愛に救いの手!? 旅費、転居費をサラリーマンの経費に

今年も残すところ2カ月。書店ではそろそろ「確定申告」本が棚に並べられるころだが、サラリーマン向けの節税策の一つとして注目されるのが「特定支出控除」だ。2013年の導入時は、「スーツ代も経費に出来る」という触れ込みで有名になった制度だが、2019年税制改正では、遠距離恋愛を税金面から応援する内容が盛り込まれるかもしれない。

「スーツ代も経費に出来る」という触れ込みで有名になった特定支出控除だが、2019年税制改正で、少子高齢化対策として、遠くに住む男女が結婚する場合、婚姻費用等を所得税の特定支出控除の対象に追加する可能性が出てきた。

税制改正要望は内閣府から上がっており、その内容は、結婚の段階における支援の充実策として、相互に遠方に居住する男女が婚姻する場合、(1)婚姻に伴う同居のため、双方の勤務地に通勤可能な範囲内に転居する場合の転居費、(2)仕事の都合により婚姻後も同居できない場合の旅費、を特定支出控除の対象に加えるとういうもの。

特定支出控除は、ビジネスパーソンが自腹を切る交際費や研修費など、いわゆる「特定支出」の額の合計額が給与所得控除額の2分の1を超える場合、その超える部分について、確定申告を通じて給与所得の金額の計算上控除することができる制度。給与所得控除額の上限は125万円だ。

たとえば、給与と自腹を切った額面で考えるなら、以下が目安になる。

現在、この「特定支出」は、

①通勤費

②転居費(転任に伴う引っ越し代など)

③研修費(資格取得以外で、仕事に直接必要なスキルを身につけるためのもの)

④資格取得費(弁護士や会計士などの資格取得も含む)

⑤帰宅旅費(単身赴任の場合に家族の元に帰るための旅費など)

⑥その他勤務必要経費(図書費、衣服費、交際費など)

 

となっている。

適用基準は思ったよりも細かい

いずれの特定支出についても、領収書などを保管しておき、かつ、会社の証明を貰う必要がある。実は適用できるかどうかの実際のチェックはかなり細く、思うほど何でもかんでも認められるわけではない。

この中でとくに注意が必要なのが④資格取得費、⑤帰宅旅費、⑥勤務必要経費だ。

④資格取得費だが、弁護士・公認会計士・税理士・弁理士といった資格取得のための費用は、勤務に必要な資格で会社が証明するものであれば、結果として資格取得に至らなくても対象となる。

⑤「帰宅旅費」については、生計を一にする配偶者との別居を常況とすることとなった場合。 配偶者と死別・離婚した後、生計を一にする所得金額の合計額が38 万円以下の子や生計を一にする特別障害者である子などがいる場合もその対象になる。ただ、1カ月4往復分までのみOKとされ、それを超えたら自腹だ。月をまたがって帰宅する場合(月末に帰宅して、翌月初めに勤務地に戻る場合)には、それぞれの月に片道1回として計算する。

⑥の「勤務必要経費」だが、基本的に職務に関連する書籍、定期刊行物などの「図書費」、制服・事務服・作業服など勤務場所において着用する「衣服費」、職務上関係のある者に対する「交際費・接待費その他の費用」となっている。

図書費については、仕事で必要な書籍、雑誌、新聞などが対象。ビジネスパーソンなら日経新聞を個人的に定期購読しているケースが多いが、これも特定支出として適用できる可能性もある。

衣服費は、勤務場所において着用するように定められている衣服が対象。この「定め」とは、社内規定等の明文の定めがない場合であっても、勤務場所において背広などの特定の衣服を着用することが必要である場合は含まれる。つまり、スーツも特定支出として認められる可能性が高いのだ。最近は、私服の会社も少なくないが、シャツやジーンズなど費用は、普段着にもなるので特定支出としてはNGだ。

このほか「交際費」だが、基本的に特定支出となるのは 「接待等の相手方が給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者であること」。「支出の目的が給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者との間の親睦等を密にして取引関係の円滑化を図るものであること」。「支出の基因となる行為の形態が、接待、供応、贈答その他これらに類するものであること」という要件を満たしていることが必要。つまり、取引先とのお付き合いで、自腹を切ってその場の支払いした場合だ。

特定支出控除の適用に当たっては、確定申告時には、資格取得費も勤務必要経費も支払いを証明する領収書や会社の証明書が必要。国税庁からは会社が証明する用紙などが提示されている。

ただ頑張って特定支出控除を勝ち取ったとしても、戻ってきた金額を見て愕然とする人も少なくないのが現実だ。たとえば、年収700万円の人が根性で年間100万円の領収書を集めたとして、給与所得控除額は「700万円×10%+120万円=190万円」。特定支出控除額は「特定支出額-190万円×1/2=95万円」

100万円-95万円=5万円の支出が控除対象になる。特定支出控除は、所得控除になるため、還付金は税率にもよるがザックリ計算して2500円から6千円ぐらいだ。全く戻ってこないよりはましだが、特定支出を100万円も使ってこの金額なので、無理して経費を集めるよりも、よくよく考えて活用したほうがよい。

著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は租税研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャーとしても活動。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
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■KaikeiZine
https://kaikeizine.jp/

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