国税庁は令和3事務年度(令和3年7月~令和4年6月)の調査事績を公表しました。それによると海外投資等をした富裕層の申告漏れ、追徴税額は過去最高となりました。
国税庁は、このほど令和3事務年度(令和3年7月~令和4年6月)の調査事績を公表しました。
これによると、海外投資等をした富裕層の実地調査では、1件当たりの申告漏れ所得金額は7,836万円、1件当たりの追徴税額は2,953万円と過去最高となりました。
富裕層に対する調査の状況
国税庁では、有価証券・不動産等の大口所有者、経常的な所得が特に高額な個人、海外投資等を積極的に行っている個人など、いわゆる「富裕層」に対して、重点的な調査を実施しています。
富裕層に対する調査の状況をみると、令和3事務年度では1件当たりの申告漏れ所得金額は過去最高の3,767万円となりました。
特に、海外投資等を行っている富裕層に対しては、1件当たりの申告漏れ所得金額は7,836万円、1件当たりの追徴税額は2,953万円とこちらも過去最高となっています。

上図は海外投資等をした富裕層に対する調査の状況の推移を示したものです。
調査件数は新型コロナウィルス感染症の影響によりここ数年は低水準となっていますが、1件当たりの申告漏れ所得金額は大きく増加しています。
高額・悪質な事案に的を絞った実地調査が功を奏した結果となっています。
こうした背景には、海外取引による課税逃れを封じるため、近年、国税当局が日本人の保有する国外財産に対する情報収集を強化していることが挙げられます。
国外財産を把握するためのツールとして代表的なものが、「国外送金等調書」、「国外財産調書」といった法定調書、及び外国の税務当局から提供される「CRS情報」などです。
今回は、こうしたツールを国税当局がいかに活用しているかについて、みていきたいと思います。
国外送金等調書
国外送金等調書は、国外へ送金した金額又は国外から送金を受領した金額が100万円を超えた場合に、金融機関が税務署に提出する法定調書をいいます。
国外送金等調書には、⑴送金者又は受領者の氏名・名称、⑵国外送金等年月日、⑶国外の銀行等の営業所(支店)の名称、⑷相手国、⑸本人口座の種類、口座番号、⑹国外送金等の金額、⑺送金原因などが記入されます。
国外送金等調書は、国税当局にとっては海外取引に係る資金の流れや国外財産を把握するための重要な情報源であり、調査事案の選定などに活用されています。
例えば、海外に開設した本人名義の口座から日本の口座に100万円を超える多額の送金があった場合、海外で預金利子が生じていることが想定されるため、当該海外預金の利子所得を申告しているかどうかチェックされるでしょう。
税務調査が行われた場合には、当該海外預金のステートメントの提出が求められ、海外での預金の運用状況や、他の金融機関に資金が流れていないかなども確認されます。
このように100万円を超える海外との送受金は、常に国税当局の監視の目に晒されています。