相続税の節税目的で金購入者が増えているという。金なら、値上がりも期待できるほか、5年超の長期保有なら税額も半分以下になるほか、節税効果も期待できるためだ。節税となれば、申告漏れがないか、課税当局も厳しい目を向けている。金地金調査の目は年々厳しくなってきているのだ。
相続税の増税で、巷では、相続対策に関心が高まっているというが、金投資もその一つのようだ。マスコミも煽るため、読者が過剰に反応している部分もあるが、百貨店で開催されている金の展示即売にはかなりのお客が集まっている。
7月に日本橋三越で開催された「大黄金展」では、金の仏像や仏具、小判まで展示され、1つ数百万円の24Kの置物やぐい呑など関心を集めていた。
この会場では、100g単位のバーに加工できるイベントも行っており、こちらの方もかなり盛況だった。
子どもや孫に財産を分配するのに、1Kgの金より、100グラム金の方が使い勝手が良いという理由らしいが、加工料手数料は1g216円。1Kgとなると21万6千円となるだけに決して安くない。
金をわざわざ黄金輝く仏像や、蝋燭立て、線香差しなどの仏具を購入する人も増えているという。都内では、高さ10cmほどの純金の仏像が約500万円、手のひらに納まるくらいの18Kの仏鈴が約350万円で販売されている。なかには、数千万円単位の仏像や、上限金額がない特注品などの製造を行う業者もかなりお客からの依頼があるという。
こうした金の仏具を購入する人は、全てが敬虔な仏教徒ではない。相続税対策で購入する人も少なくない。
というのも、仏具には相続税がかからないためだ。国税庁ホームページにも、「相続税がかからない財産」として、「墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物」とある。国税庁がホームページで紹介しているということは、こうした相談が多いということもできる。
一方で国税庁では、金地金の税務調査に力を入れている。平成24年1月から導入された「金地金等の譲渡の対価の支払調書」のほか、あらゆる機会を通じて資料情報を収集。金やプラチナの価格が高値水準である傾向もあって、購入者に対するチェックは厳しい。調査件数は急増しており、平成23事務年度は、1309件だったものが同24事務年度は1813件、そして同25事務年度は3193件となっている。課税当局が、どれだけ金地金調査に力を入れてきているのか一目瞭然だ。
金節税は決して脱税ではないが、手法次第では申告漏れとの指摘を受ける可能性も少なくない。節税対策は、税理士ら専門家のアドバイスを受けて取り組むことが不可欠だ。