納税者が自ら税法に従って所得金額と税額を正しく計算して納税まで行う申告納税制度を採用する日本には、個人事業主の方が所得税を申告する方法が2種類用意されています。ここでは、青色申告と白色申告の概要を解説していきます。
この記事の目次
確定申告制度における青色申告と白色申告
日本では、納税者が自ら税法に従って所得金額と税額を正しく計算し納税するという申告納税制度を採用しています。
そのため、自らの所得について申告を行わなければなりませんが、個人事業主が申告をする場合、青色申告と白色申告のどちらかを選択して申告を行うことができます。
ここでは、青色申告と白色申告では何が違うのかについて詳しく解説します。
青色申告とは
青色申告とは、税制上のメリットが多い代わりに、帳簿の作成に手間がかかる申告方法です。
青色申告を行う方は、日々の取引を所定の帳簿に記帳して、その記帳に基づいて所得金額や税額を正しく計算し申告を行います。
そのため、帳簿の作成に手間がかかりますが、所得の計算などについて有利な取扱いが受けられます。
白色申告とは
白色申告とは、税制上のメリットが少ない代わりに、帳簿の作成に手間がかからない申告方法を言います。
白色申告を行う方は、収入金額や必要経費を記載すべき帳簿(法定帳簿)を備え付け、収入金額や必要経費に関する事項について記帳を行わなければなりません。
青色申告と白色申告の違い(まとめ)
青色申告と白色申告の制度上の違いは以下のとおりです。
白色申告 | 青色申告 | ||
届出の必要性 | なし | あり | |
開業届の必要性 | なし | あり | |
特別控除 | なし | 10万円 | 最高65万円 |
記帳義務 | あり | 簡易簿記 | 正規の複式簿記 |
決算書作成 | なし (収支内訳書を作成) |
貸借対照表・損益計算書(一部未記入でも可能) | 貸借対照表・損益計算書 (原則はすべて記入) |
従事者
(家族従業員への支払)
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配偶者86万円まで それ以外は50万円まで |
妥当であれば金額の制限なし (一定以上は源泉徴収が必要、専従者の届出が必要) |
|
赤字処理、減価償却の特例など | なし | あり |
確定申告における青色申告の3つの特典
青色申告を行うことで以下の3つの特典を受けることができます。
- 青色申告特別控除
- 青色事業専従者給与
- 純損失の繰越しと繰戻し
以下では、それぞれのポイントについて詳しく解説していきます。
所得金額から最高65万円を差し引くことができる
事業所得や不動産所得を生ずべき事業を営んでいて青色申告をしている方のうち、正規の簿記の原則により記帳している方については、その記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付して、確定申告書をその提出期限までに提出します。
そうすることで、青色申告特別控除として、一定の要件の下で事業所得等の金額から最高55万円を差し引くことが可能です。
これに加えて、e-Taxによる申告(電子申告)又は仕訳帳及び総勘定元帳について優良な電子帳簿の要件を満たして電磁的記録により保存を行っている方については、その年分の事業所得または不動産所得の金額の計算上、青色申告特別控除として最高65万円を控除できます。
上記以外の方であっても、青色申告の方は正規の簿記の原則による記帳ではなく、簡易な帳簿による記帳であれば青色申告特別控除として、一定の要件のもとで事業所得等の金額から、最高10万円を差し引くことが可能です。
これらをまとめると、次の表のようになります。
控除額 | 摘要要件 |
55万円 | (1)事業所得または事業的規模の不動産所得のある人で (2)正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により取引を記録し (3)貸借対照表、損益計算書、その他の計算明細書を確定申告書に添付して (4)申告期限内に提出すること |
65万円 | 上の(1)~(4)の要件に加え、次の(5)と(6)のいずれか一つを実施 (5)e-tax(イータックス)で確定申告書・青色申告決算書などを提出 (6)電子帳簿保存法で仕訳帳および総勘定元帳を備付け・保存 |
10万円 | 上の55万円または65万円の控除額の適用を受けない青色申告者 |
配偶者等に支払う給与を必要経費に算入することができる
青色申告の方は、生計を一にする配偶者やその他の親族(15歳未満の人を除きます)で、もっぱらその事業に従事している人に給与を支払っている場合には、その支払った金額のうち、相当であると認められる金額を必要経費とできます。
この特典を受けるためには、「青色事業専従者給与に関する届出書」を所轄税務署長に提出する必要があるので注意してください。
赤字を前年や翌年の所得金額から差し引くことができる
青色申告をされている方については、事業から生じた純損失について、翌年以後3年間にわたり、順次各年分の所得金額から差し引くことができます(純損失の繰越し)。
また、前年も青色申告をされている方は、純損失の繰越しに代えてその損失額を前年分の所得金額に繰り戻して控除し、前年分の所得税額の還付を受けることが可能です((純損失の繰戻し))。