今年の1月末、高校生による迷惑行為が大手回転寿司チェーンのスシローのある店舗で発生しました。撮影動画はSNS上で拡散され、スシローの社会的信用はガタ落ちに。すでに警察に被害届を提出、今後は加害者に対して賠償請求をするのではないかと見られています。
この記事の目次
迷惑行為の賠償請求はスシローだけの問題ではない
迷惑行為を受けているのはスシローだけではありません。
はま寿司やくら寿司、ココ壱番屋でも、似たような迷惑行為による被害が生じています。
衛生管理に対する意識の高い日本人は、いったんこういったことが起きると外食から足が遠のきます。
食の安全が脅かされた印象から「行きたくない」と恐怖を感じるのです。
コロナ禍が収束したとは言えない今、その恐怖はかなり強いと思われます。
また、こういった被害は大手外食産業に限った話ではありません。
チェーンではない、小さな飲食店にもかかわります。
むしろ、被害の度合いは大手よりも深刻になるはずです。
賠償金を請求するケースも出てくるかもしれません。
そんなときに備え、賠償金の税金のことも知っておいた方が安心です。
事業主が受け取ったとき
ここから受け取った損害賠償金の税金の扱いを、個人・法人別に見ていきましょう。
個人の場合
個人事業主が受け取った賠償金は「原因がどこにあるか」で扱いが変わります。
1. プライベート(家事)で起きたことが原因の賠償金
この賠償金には所得税も住民税もかかりません。
所得税法第9条第1項第18号に非課税所得である旨が規定されています。
【引用元】所得税法(e-gov)
また、所得税法施行令第30条でくわしい内容が書かれています。
第三十条 法第九条第一項第十八号(非課税所得)に規定する政令で定める保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)は、次に掲げるものその他これらに類するもの(これらのものの額のうちに同号の損害を受けた者の各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補塡するための金額が含まれている場合には、当該金額を控除した金額に相当する部分)とする。
【引用元】所得税法施行令(e-gov)
ただし、被害者の各種所得額を計算する際の必要経費を補てんするものが含まれているなら、その部分は除きます。
この「必要経費を補てんするもの」の扱いは、2で書きます。
2. 業務上で起きたことが原因の賠償金
業務上の出来事が原因で受け取った損害賠償金も、基本的には非課税です。
ただし、例外があります。
棚卸資産など、事業所得や雑所得などの必要経費となるべきものの補てんとして受け取った賠償金は、所得税や住民税が課税されます。
「収入に代わるもの」として扱われるからです。
スシローの事件がもし個人の事業で起き、備品や調味料をすべて取り替えたとしましょう。
このときの賠償金は事業所得や雑所得の総収入金額となります。
また、建物など事業用の固定資産に被害を受けたことを原因とした賠償金も非課税です。
ただし、必要経費に算入する資産損失から受け取った賠償金分を減らします。
「純粋に自腹を切った分だけ費用にする」わけです。
医療費控除の計算方法と似ています。
【参考】コロナ「みなし入院」保険金・給付金の税金は?医療費控除も解説
法人の場合
法人が受け取った賠償金は、法人税法上の収益である益金の額に算入され、法人税や法人住民税、法人事業税がかかります。
法人税法には、所得税法のような非課税規定がないからです。
計上するタイミングは原則、支払いを受けることが確定した日となります。
今回のスシローの事件で言うなら、受け取った賠償金は支払いを受けることが確定した日に益金として計上するわけです。
事業主が支払ったとき
事業主が賠償金を支払うケースも確認しましょう。
個人の場合
個人事業主が支払った賠償金も「原因がどこで起きたか」で変わります。
1. プライベートで起きたことが原因の賠償金
この支払った賠償金は何の所得にも影響しません。つまり必要経費にはなりません。
2. 業務上で起きたことが原因の賠償金
業務上の過失を理由に払った賠償金は原則、所得計算上の必要経費となります。
つまり、事業所得や不動産所得、雑所得の必要経費となるわけです。
これにも例外があります。
賠償の起因となった出来事が事業主の故意または重過失によるものなら、必要経費にはできません。
業務中の飲酒運転による事故が原因で支払った賠償金がこれに当たります。
「こういった賠償金は、罰金と性質が似ているから」という考え方が背景にあるようです。
法人の場合
法人は次の2パターンに分かれます。
1. 業務上で起きたことが原因の賠償金
原則、法人税法上の費用である損金の額に算入します。
しかし、起因となった出来事が役員や従業員の故意や重過失によるものなら損金になりません。
問題を起こした役員や従業員への債権として扱われます。
「故意や重大な過失の責任は、法人ではなく役員や従業員個人にある」と考えるからです。
役員や従業員から債権回収をしないのなら、本人への賞与として扱われます。
2. 業務以外で起きたことが原因
業務外の出来事が原因で支払った賠償金も、役員や従業員への債権として扱われます。
業務外ということは「役員や従業員それぞれが本来自分で支払うべき賠償金である」ということです。
つまり法人は立て替えたに過ぎません。
こちらも債権回収をしないのなら、本人への賞与として扱われます。



