海外勤務者などの非居住者は、日本国内で生じた国内源泉所得についてのみ課税されますが、役員の場合は、その勤務が外国で行われた場合でも国内源泉所得となります。

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日本法人の役員に支払われる給与は、勤務が国外で行われたとしても国内源泉所得となり、20.42%の源泉徴収が必要となります。

ただし、「国外において使用人として常時勤務を行う場合」に該当すれば、例外的に国内源泉所得とはなりません。

今回の事例は、内国法人の代表取締役が国外において行う業務が「使用人として常時勤務を行う場合」に該当するか否かが争点となりました(平成6年5月25日裁決)。

海外勤務する役員に支払った給与は国内源泉所得!

海外勤務者などの非居住者は、日本国内で生じた「国内源泉所得」についてのみ課税されます。

海外勤務者が受け取る給与が、国内源泉所得か国外源泉所得のいずれに該当するかは、その勤務がどこで行われたかにより判断するのが原則です。

よって、国外で行われた勤務に対して支払われた給与は国外源泉所得となり、日本の所得税は課税されません。

しかし、同じく海外勤務する人であっても日本の法人の役員の場合には、その受け取る給与については取扱いが異なります。

役員については、たとえその勤務が外国で行われた場合であっても、日本国内で生じたものとして「国内源泉所得」とされてしまうのです。

これは、企業経営を担う役員については、使用人のような一定の場所、一定の時間を使用者の指揮監督の下に労務を提供するという概念がなく、その所得の源泉地を実際の役務提供地国に限定することは適切ではないと考えられるからです。

そこで、内国法人の役員に支払う給与は、その勤務が国外において行われる場合であっても、国内源泉所得として支払をする際に20.42%の税率で源泉徴収しなければなりません。

これは、原則として源泉徴収のみで課税関係が完結する源泉分離課税となりますので、年末調整や確定申告により精算することはできません。

内国法人の使用人として常時国外勤務を行う場合

内国法人の役員としての勤務で、国外において行うものであっても、内国法人の使用人(海外支店の支店長等)として常時勤務するような場合に受ける給与については、一般の使用人が勤務した場合と変わりがないことから、国内源泉所得に該当しないこととされており、源泉徴収の必要はありません。

例えば、内国法人の取締役がロンドン支店長やベトナム工場長など使用人としての立場で常時海外において勤務している場合が該当します。