ビジネスの短命化は進む一方です。人件費や材料の高騰、需要の拙速な変化などその理由は様々ですが、そうしたリスクの予防策はできれば複数用意しておきたいところです。

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営業利益を増やすべく、地代家賃を抑えたい。

会計本来の役割ですが、改めて見ると「ビジネス→会計」なる一方通行です。

会計を見据えながらビジネスを考えるという視点を加え、目線を2車線にする。

両者の横断を可能にすれば、間違いなくいずれの精度も向上します。

ビジネスから会計、会計からビジネス第5回は、「売上の分散」です。

売上の分散

売上の分散という言葉の意味は説明不要でしょう。

特定のビジネスだけに収益を頼るのではなく、別の事業を立て、収益全体のバランスを取ることの重要性を指しています。

ビジネスと会計、それぞれの面をドリルダウンしてみましょう。

まず、ビジネスです。

ビジネス面から見た売上の分散には大きく2つの類型があります。

1つは同一カテゴリー、そしてもう1つが別カテゴリーによる事業との両立です。

同一カテゴリーでよく見かけるのが「川上と川下」。

ビジネスの領域を川の流れに例え、川上をメーカー、川下を小売と位置付けた概念です。

例えば、現在の自社ビジネスが小売の場合、取り扱う商品の原材料や部品の製造事業を展開する。つまり、川下→川上への展開です。

逆も同様です。

昨今、メーカーが消費者とのタッチ・ポイントを増やすべく、またDtoCを実現すべく、リアルならカフェ、ネットであればダイレクト販売やSNSの活用などをよく目にします。

コンビニやスーパーで見かける「PB商品」などはこの派生です。

川上と川下は、同一カテゴリービジネスにおいて「顧客との距離」を拡縮する分散スタイルと言い変えることもできます。

さて、もう1つは別カテゴリーです。

別業種への展開を意味しています。現在の事業とは異なるカテゴリーを狙う。

当然のことながら、同一カテゴリー内での分散に比べリスクを伴いますが、一方で本業を維持しながら新たな収益を獲得できる強いメリットがあります(参入先での競合が自社の本業の収益を脅かさない)。

では、会計面での分散についてです。

会計における売上の分散は、シンプルに売上が計上されるだけですが、ビジネス面を考慮した際、ぜひ予め設計し、狙っておきたいのがその構造です。

できれば「P/L」と「B/S」の形を本業と重ならないようにしておくのがベストです。

もっともわかりやすいのが「変動費」と「固定費」でしょう。

本業が固定費型、例えば運送業だとしたら、新たに立ち上げる事業はできれば「変動型」が望ましい。逆も然りです。

本業、新規事業ともに、同一の財務構造を持っていると、負荷が重複してしまうためです。

例えば、昨年から続く燃料費の高騰のようなことが起きた場合、どうなってしまうか自明です。

つい、利益が出る、出ないに目が行きがちですが、一歩下がって「収益やコストの構造」においても果たして分散するのかどうか、会計サイドから押さえておきたいところです。

以上、売上の分散についてビジネスと会計面から確認しました。

続けて「分散」の事例を3つ見ていきましょう。

分散の好例

1つめは、無印です。

「無印良品の家」/株式会社 MUJI HOUSE

なんと、住宅です。

文具や、食品、寝具など生活における様々な商品群を展開していますが、さらに射程が拡大しています。

無印良品と言えば、そのわかりやすさが定評です。

住宅にもその特徴が通底しており、「木の家」「窓の家」などとても選びやすいラインナップになっています。

2つめは、ワークスーツでその名を圧倒的なものにしたワークマン。

着る網戸(エアロガード)/株式会社ワークマン

作業着を起点に、オフィス向けそしてアウトドアと利用シーンやライフスタイルに応じて、様々な方面に展開しています。

最後は、「吉本興業」です。

「地方創生」Cheeky’s channel/吉本興業株式会社

吉本=お笑いはもはやステレオタイプです。

お笑いというコンテンツを起点にし、BS放送や海外、地方創生など社会課題にまでその世界観を拡大。

アパレルの世界でいう「ルイ・ヴィトン」や「シャネル」のようなポジションにあたる「総合コンテンツ企業」になっています。