多くの個人事業主の方は消費税を納めていません。なぜ消費税を納めなくても大丈夫なのか?この記事では、個人事業主が消費税を納めなくても良い理由について、インボイス制度の動向を踏まえながら解説します。
この記事の目次
個人事業主が理解すべき消費税の基本的な仕組みと計算方法
個人事業主の場合、(課税)売上高が1,000万円未満である場合、免税事業者となるため、消費者から売上金に含まれた消費税を納税する必要はありません。
しかし、2023年10月からインボイス制度が始まることで、従来、免税事業者であった個人事業主も少なからず影響を受けます。この記事では、個人事業主が消費税をどのように取り扱うべきかを解説します。
まずは、個人事業主の方が理解すべき消費税の基本的な仕組みについて理解していきましょう。
基本的な納付税額の計算方法
消費税とは、商品やサービスを受ける際に商品などの代金に10%(国税7.8%・地方税2.2%)を追加して、消費者が税金を支払わなければならないというものです。
消費税は、次のような計算式で計算することができます。
(引用元:消費税の計算方法|やさしい税の話|一般の方へ)
従来、消費税は売上にかかる消費税として、課税売上高に税率を乗じた金額から仕入等にかかる消費税として、課税仕入高に税率を乗じた金額を差し引いて納付すべき消費税額を計算していました。
しかし、2019年の消費税率変更にともなう軽減税率導入により、異なる税率が適用されることになったため、計算が煩雑となっています。
たとえば、55万円(消費税込み)で仕入れた商品を110万円(消費税込み)で販売した場合、税率が10%と考えると、売上にかかる消費税額は10万円、仕入等にかかる消費税額は5万円となるので、納めるべき消費税額は5万円という計算になります。
以前の税率が一律であった頃は、個人事業主の方も消費税の計算は比較的楽でしたが、軽減税率が適用され、2つの税率が混在するようになった結果、売上にかかる消費税額や仕入等にかかる消費税額が、計算しにくくなってしまいました。
もともと個人事業主の方は、課税売上高が1,000万円未満であれば免税事業者となり、売上にかかる消費税額に関しては、一時的に預かった消費税額の納税が免除されていました。
しかしインボイス制度が導入されることにより、消費税の計算をより正確に行うことが求められるようになるわけです。
消費税免除?個人事業主など小規模事業者には負担軽減制度がある
先ほど書いたように、インボイス制度の導入により、消費税の計算をより正確に行わなければならない点は、個人事業主の方には大きな負担となります。
そこで、個人事業主のような小規模事業者の方には負担軽減制度が導入されています。
以下の2つが、具体的な負担軽減制度になります。
1. 事業者免税点制度
事業者免税点制度とは、個人事業者の基準期間(個人事業者の場合は前々年になります)における課税売上高が1,000万円以下である場合、消費税の納税が免除されるというものです。
インボイス制度が導入されたあとも、この事業者免税点制度を適用することで、消費税の納税義務が免除となります。
ただし、取引先の会社などの事業者が仕入税額控除を利用できず、消費税の納税額が増えてしまうため、事業者免税点制度を適用している免税事業者とは取引をしなくなる可能性もあります。
つまり、インボイス制度のもとでは、免税事業者でいると取引先を失う可能性があるという点は注意が必要です。
2. 簡易課税制度
インボイス制度のもとで個人事業主のような小規模事業者の負担を軽減する制度として、簡易課税制度もあります。
簡易課税制度とは、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した事業者が、基準期間の課税売上高が5,000万円以下である場合は、売上に関する消費税額に事業の種類の区分(事業区分)に応じて予め定められた「みなし仕入率」を乗じた金額を、「仕入れに係る消費税額」にできるというものです。
すでにご説明したように、納付すべき消費税額を計算するためには、売上に関する消費税と仕入に関する消費税を正確に把握しなければなりませんが、簡易課税制度のもとでは売上に関する消費税額が分かれば、簡易的に一定の税率をそれにかけることで、仕入に関する消費税を計算できるわけです。
簡易課税制度の詳細については、以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】