インボイスに登録した後、気になるのが2024年の確定申告です。個人の事業主は所得税だけでなく消費税も申告しなくてはなりません。「消費税の確定申告?所得税と同じでしょ」と思っていると、かなり大変になります。消費税と所得税の違いを、今回、対話形式で解説します。
消費税の申告はいつもの確定申告とまったく違う
【登場人物】
まゆこ(以下「ま」):税理士・税務ライター。「こむずかしい税金をいかに分かりやすく表現するか」ばかり考えている。趣味は、よっちゃんのごはんを食べること。
よっちゃん(以下「よ」):まゆこの夫。行政書士。仕事はできるが税金はくわしくない。特技は料理と釣り。夢は釣り三昧の日々。
よ「インボイスに登録した!あとはいつも通り会計ソフトに入力するだけだ」
ま「よっちゃん、今年は注意が必要よ。入力が面倒だからね。10月から入力モードを消費税の課税事業者モードにしないといけないよ」
よ「え?なんで?」
ま「消費税は仕訳のチェックが必要だからよ」
よ「そんなのいつもやってるじゃん。まゆこが」
ま「あれは所得税の内容をチェックしてるの。それとは別に、消費税の課税区分も見ないといけないの」
よ「ふーん…なんで?」
ま「なんで…って」
よ「だって消費税の計算って、いつもの所得税の確定申告と大して変わんないでしょ?」
ま「い、いや…消費税と所得税とでは、計算ぜんぜんちがうよ」
よ「そうなんだ」
ま「消費税、ふだんの買い物でなじみがある分、簡単そうに見えるけど…実際は複雑よ。トラブルの元No.1にもなっているし」
よ「そうなんだ。どんな感じで違うの?」
ま「こんな感じ」
よ「…わかりにくい」
ま「だよね。所得税だとざっくり利益だけに注目しておけばいいの。でも消費税は…」
よ「収入と経費の一部しか使わないのね。この段階で『は?』って感じ」
ま「一つひとつ確認してみよっか。よっちゃんの所得で説明するね」
所得税は「所得」を基準に計算
ま「まず所得税。これはおなじみだよね」
よ「うん、見慣れてる。わかりやすい。売上から経費を引けばいいんだもん」
ま「所得税は所得を10種類に分けた上でそれぞれの区分ごとに計算するの。みんながこう計算するわけではないけど、ざっくりイメージは似てるかな」
よ「で、このあとはどうなるの?さっきの図のまんま?」
ま「さっきのは、ホントにおおざっぱなイメージよ。この後、いろいろな所得を合算して、そのあとで所得控除を引いていく」
よ「扶養控除とか医療費控除とかでしょ」
ま「そうそう。で、課税所得を計算する」
よ「課税所得?さっきの所得とちがうの?」
ま「課税所得は、税金の計算のベースの金額のこと。これに税率をかけて所得税を計算するの」
よ「ふーん。で、おしまい?」
ま「まだまだ。このあと、税額控除を引いていくの。ウチ、何年か前まで住宅ローン控除とかあったじゃない。あれは税額控除。他に寄附したお金の一部も税額控除になるよ」
よ「ふーん」
ま「もろもろ引いた後で復興特別所得税も計算し、源泉所得税や予定納税など納め済みの所得税を引いて納税か還付かを見るわけよ」
よ「なるほどね」