公認会計士試験は難易度の高い試験であると言われています。この記事では、公認会計士試験がなぜ難易度が高いと言われているのか、その理由を解説しつつ短期間で試験を突破するためのポイントを解説します。
この記事の目次
データから見る公認会計士試験の難易度
公認会計士試験は、医師や弁護士の試験に比べて受験しやすい試験です。
医師になるためには医学部に進学する必要があり、弁護士になるためにはロースクールに進学する必要があります。
しかし、これらの進学には多額の費用がかかる上、長い準備期間が必要です。
一方、公認会計士試験は大学や学部を問わず、誰でも受験することができます。
さらに、年齢制限もないため高校生であっても受験することができます。
また、日本国籍を持っていない方も受験することが可能です。
このように、公認会計士試験は受験資格がないという点において、非常に受験しやすい試験と言えます。
ただし、公認会計士試験自体は非常に難しい試験であり合格率も低いため、受験者は十分な準備をして臨む必要があります。
以下では、公認会計士試験がなぜ難しいと言われるのか、その理由を公認会計士試験の過去データなどを活用して解説していきます。
合格者のデータから考える公認会計士試験の合格率
(引用: 令和 4 年公認会計士試験 合格者調 )
毎年の公認会計士試験の合格率は約10%と、非常に高い難易度の試験となっています。
令和4年第Ⅰ回試験においては、総合合格率が7.7%、短答式試験が12%、論文式試験が35.8%という結果が出ています。
なお、令和4年第Ⅱ回試験の短答式試験の合格率は7.9%です。
各年度における短答式試験の試験結果
令和元年 (2019年) |
令和2年 (2020年) |
令和3年 (2021年) |
令和4年 (2022年) |
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短答式 | 第I回 | 第Ⅱ回 | 第I回 | 第Ⅱ回 | 第I回 | 第Ⅱ回 | 第I回 | 第Ⅱ回 |
願書提出者数 | 8,515人 | 9,531人 | 9,393人 | 9,383人 | 14,192人 | - | 12,719人 | 14,958人 |
受験者数 | 6,610人 | 5,604人 | 7,245人 | 5,616人 | 9,524人 | - | 9,949人 | 9,870人 |
合格者数 | 1,097人 | 709人 | 1,139 人 | 722人 | 2,060人 | - | 1,199人 | 780人 |
合格率 | 16.6% | 12.7% | 15.7% | 12.90% | 21.60% | - | 12.00% | 7.90% |
論文式試験の合格率が短答式試験より高い理由は、決して論文式が簡単だからというわけではありません。
短答式試験の難しい12%(令和4年第Ⅱ回は7.9%)の壁を越えた中でも、3人に1人しか合格できないことから、その高い難易度が伺えます。
年齢から考える公認会計士試験の年齢別合格率
(引用: 令和 4年公認会計士試験 合格者調)
(引用:令和4年公認会計士試験 合格者調)
職種別の合格者を見ると、学生や専門学生が66.1%、会社員は6.5%(公認会計士・監査審査会調べ)と、学生が合格者のおおよそ7割を占めています。
合計3,000時間の学習時間が求められる公認会計士試験は、時間的な余裕がある学生にとって有利です。
それにもかかわらず、社会人でも年間100人以上が合格しています。学生に比べて1〜2年長い時間がかかるかもしれませんが、地道に努力を続けることで合格は十分に可能です。
勉強時間から考える公認会計士試験の難易度
公認会計士試験に合格するには、おおよそ2,500〜3,500時間の勉強が必要だと言われています。
これは、1日に5時間勉強し続けるとしても、連続で600日勉強しなければならないことを意味します。
これだけ勉強して、ようやく試験を受験できるレベルに到達できるということです。
もちろん、あくまでもこの勉強時間は目安ですから、この時間分勉強したとしても必ず合格できるわけではありません。
公認会計士試験は、短答式と論文式の2種類の試験から構成されており、各科目ごとの勉強時間の目安は以下の通りです。
【短答式試験】
- 財務会計論: 750〜900時間
- 管理会計論: 300〜400時間
- 監査論: 150〜200時間
- 企業法: 300〜350時間
【論文式試験】
- 会計学(財務会計論): 250〜300時間
- 会計学(管理会計論): 50〜130時間
- 監査論: 80〜130時間
- 企業法: 120〜180時間
- 租税法: 300〜350時間
- 選択科目(経営学、経済学、民法、統計学): 200時間
ただし、公認会計士試験合格に必要な勉強時間は人によって異なりますし、受験指導を行っている予備校によっても違うのであくまでも参考程度のものに過ぎません。
仕事を持ちながら試験に合格を目指す場合、2年近くもの間、ほとんどの自由時間を勉強に費やす必要があるかもしれません。
したがって、十分に勉強時間を確保できる人しか合格の可能性がない試験であるという意味で、かなり難易度が高いということがわかります。
他の資格との比較から考える公認会計士試験の難易度
公認会計士試験を受けることを検討している人にとって、他の資格試験との難しさの違いが気になるかもしれません。
公認会計士と、税理士、司法書士、弁護士それぞれの資格試験について、合格難易度を比較していきましょう。
公認会計士と税理士ではどちらが難しい?
一般的に、税理士試験よりも公認会計士試験の方が難しいとされています。
理由は以下の4つです。
- 公認会計士資格だけでも税理士業務が可能(税理士登録は別途必要)
- 税理士試験は「科目合格制度」があるため、時間をかければ合格しやすい
- 公認会計士試験が「上位資格」とみなされており、受験者層が高い
- 税理士試験の合格率は高め(毎年15%~20%程度)
早期に会計業界で働くことを優先したい受験生には、公認会計士試験よりも税理士試験が適しています。
ただし、公認会計士試験は短期間(2年程度)でも合格できますが、税理士試験は科目合格制を採用していることから、3年〜4年かけて合格するのが一般的です。
合格までの勉強時間だけを考えるのであれば、税理士試験の方が難しいといえるでしょう。
公認会計士と司法書士ではどちらが難しい?
公認会計士と司法書士の仕事や試験内容は異なるため比較が難しいですが、一般的には司法書士試験の方が難易度が高いとされています。
その理由は以下の4つです。
- 司法書士試験の合格率は低い(約5%)
- 司法書士試験は年1回の一発勝負(公認会計士試験は短答式試験が年2回受験可能)
- 司法書士試験には免除制度がない
- 公認会計士試験の一部合格者にも市場ニーズが高い
受験期間中に知識を活かし業界で働きたい受験生には、司法書士試験よりも公認会計士試験がおすすめです。
公認会計士と弁護士ではどちらが難しい?
弁護士資格を取得するには、司法試験に合格する必要があります。
司法試験の合格率は20%〜35%で、公認会計士試験よりも簡単とされることがありますが、実際はそうではありません。
理由は以下の3つです。
- 司法試験の受験資格には予備試験の合格か法科大学院卒業が必要(最低2年の通学が必要)
- 司法試験の難易度は、同じ法律系資格の司法書士試験と比べても非常に高い
- 司法試験の試験範囲は広い
つまり、司法試験は受験するだけでも厳しい過程を経る必要があり、競争の激しい受験者層の中での合格率は2割〜3割程度です。
法学部卒業者や法務部の経験者など、特別な事情がある場合を除いて、誰でも挑戦できる公認会計士試験の方が難易度が低いと言えます。
公認会計士試験は税理士試験より難しいとされていますが、司法書士試験や弁護士試験に比べると、難易度は低いと言われています。
それぞれの受験生の目標や希望によって、どの試験が適しているかは変わるため、自分に合った試験を選択することが大切です。