税理士試験は弁護士や公認会計士試験など、難関と呼ばれる試験とよく比較されるくらい難易度の高い試験です。この記事では、税理士試験の難易度と効果的な勉強方法について詳しく解説していきます。

この記事の目次

税理士試験科目と出題範囲

まずは、税理士試験がどのような試験で、合格率がどれくらいなのかについて説明していきます。

税理士試験の目的

税理士試験は、税理士になるために必要な知識と実践力を持っているかを判断することを目的に実施されています。

税理士試験の内容

試験は、会計学分野の科目(簿記論および財務諸表論)2科目と、税法分野の科目(所得税法、法人税法、相続税法、消費税法または酒税法、国税徴収法、住民税または事業税、固定資産税)から受験者が選ぶ3科目(所得税法または法人税法のどちらか1科目は選択しなければなりません。)で行われます。

また、税理士試験は科目ごとに合格が決まる制度で、受験者は5科目すべてを一度に受ける必要はなく1科目ずつ受けても構いません。

科目ごとの出題範囲

税理士試験では、科目ごとに出題範囲が以下の通り定められています。

科目 出題範囲
簿記論 複式簿記の原理、その記帳・計算及び帳簿組織、商業簿記のほか工業簿記を含む。ただし、原価計算を除く。
財務諸表論 会計原理、企業会計原則、企業会計の諸基準、会社法中計算等に関する規定、会社計算規則(ただし、特定の事業を行う会社についての特例を除く。)、財務諸表等の用語・様式及び作成方法に関する規則、連結財務諸表の用語・様式及び作成方法に関する規則
消費税法
又は酒税法
当該科目に係る法令に関する事項のほか、租税特別措置法、国税通則法など当該科目に関連する他の法令に定める関係事項を含む。
法人税法
相続税法
所得税法
国税徴収法
固定資産税
当該科目に係る地方税法、同施行令、同施行規則に関する事項のほか、地方税法総則に定める関係事項及び当該科目に関連する他の法令に定める関係事項を含む。
住民税または事業税

(引用: 試験日程・試験科目について|国税庁

税理士試験の合格率と合格基準

令和4年度(第72回)の科目別の試験結果は次の通りです。

区分
受験者数
合格者数
4年度合格率
(参考)
3年度合格率
科目
簿記論 12,888 2,965 23 16.5
財務諸表論 10,118 1,502 14.8 23.9
所得税法 1,294 182 14.1 12.6
法人税法 3,454 425 12.3 12.8
相続税法 2,370 336 14.2 12.8
消費税法 6,488 740 11.4 11.9
酒税法 454 60 13.2 12.6
国税徴収法 1,709 235 13.8 13.7
住民税 476 82 17.2 12.7
事業税 269 38 14.1 12.6
固定資産税 910 167 18.4 13.8
合計
(延人員)
40,430 6,732 16.7 16.5

引用: 令和4年度(第72回)税理士試験結果|国税庁

税理士試験の合格ラインは各科目ごとに満点の60%と設定されていますが、実際の配点は公開されません。

平均的な合格率はおよそ15%であり、試験は実質的に競争になります。

従って、合格を目指すには受験者全体の上位10%を狙う試験対策が不可欠です。

税理士試験の合格基準(合格ライン)

各科目の合格ラインは満点の60%です。

会計学分野の科目2科目と税法分野の科目3科目、合計5科目に合格した場合、合格者となります。

税理士試験の合格難易度が高い理由

税理士試験の合格難易度が高い理由は次の4つです。

  • そもそも独学での学習が難しい
  • 独学向けの市販テキストが不足している
  • 最適な学習方法やアドバイスを自分で見つける必要がある
  • 長期間にわたるモチベーションの維持が求められる

そもそも独学での学習が難しい

税理士試験に合格するためには、高度な専門知識を身に着ける必要があります。

高度な専門知識を身に着けるためには、誰かに教えてもらうことが一般的ですが、税理士試験に合格できる程度の知識を教えられる人は多くありません。

したがって、独学で勉強し始めたとしても多くの人が挫折してしまいます。

結果として、税理士試験は独学で勉強してもなかなか合格することができません。

合格するためには、資格予備校などへの通学が一般的ですが、そのためには費用がかかるため、このコストを支払えない人はそもそも税理士試験に臨むこともできません。

結果として、十分に勉強して税理士試験に臨める人というのは限られているのです。

税理士試験の独学向け市販テキストがあまりない

現在、税理士試験の独学向けテキストは不十分です。

多くの教材は1〜2年前の税法をもとに作成されており、法改正に対応していないものが多いです。

税理士試験に臨むには最新の税法を理解しておく必要がありますが、そもそも最新の税法に対応したテキストがないのが現状です。

税法は毎年法改正が行われるため、簿記論や財務諸表論などの法改正が少ない科目以外は独学で学ぶのが難しくなっています。

税理士試験の最適な学習方法を自分で見つけるのが難しい

独学では、適切な学習方法や学習のアドバイスを自ら調査しなければなりません。

税理士試験では、税制度が頻繁に変更されるため、税法の改正に関する調査に多くの時間と労力が必要です。

また、古いテキストや問題集を使用すると、すでに改正された税法を学んでしまう可能性があります。

資格スクールでは、税法の改正情報が速やかに入手され、徹底的な対策が行われます。

受験勉強の効率を考慮すると、資格スクールに通ってカリキュラムに従った授業を受ける方が、より迅速かつ確実に結果に辿り着けます。

試験勉強のモチベーション維持が難しい

税理士試験の勉強は長期間にわたって行うことになります。

各科目によって必要な学習時間が異なるため、慎重に学習計画や受験スケジュールを立てなければなりません。

税理士試験で必要となる勉強時間の目安は以下の通りです。

【学習時間の目安】

科目 学習時間 必須/ 選択
簿記論 450~500時間 必須
財務諸表論 450~500時間 必須
所得税法 600~700時間 選択必須
法人税法 600~700時間 選択必須
相続税法 450~500時間 選択
消費税法 450~500時間 選択
酒税法 150~200時間 選択
国税徴収法 150時間 選択
住民税 200時間 選択
事業税 200~250時間 選択
固定資産税 250時間 選択

税理士試験は一度の試験での合格が難しく、通常、資格取得に数年という長い期間が必要です。

そのため、モチベーションを長時間維持しながら学習することが、独学での合格を困難にしている一因となります。

たとえば、700時間勉強する場合、1日5時間勉強すると仮定すると、140日もの時間がかかります。

1日5時間の学習時間を確保できる人は多くありません。

働きながら学習時間を確保し、適切な学習計画を立て、長期間のスケジュールを管理することは簡単ではないのです。

特に、独学で税理士試験に挑戦しようとする場合、勉強の指針も見えず、一緒に努力する仲間もいません。

その結果、勉強のモチベーションが低下しがちです。

そのため、モチベーションを維持するために、税理士補助(税務代理や税務書類の作成、税務相談を補助する仕事)として働きながら税理士を目指す方もいます。