6月13日、政府の子ども未来戦略会議で「こども未来戦略方針」案が発表されました。案の一つに、児童手当の拡充が挙げられています。しかしその一方、少子化対策の財源として扶養控除の廃止が検討されている模様です。扶養控除が廃止になったら、税額ベースでどれくらい影響が出るのでしょうか。今回、扶養控除の基本を確認するとともに、扶養控除廃止でどれくらいダメージが出るのかを試算しました。
この記事の目次
【登場人物】
よっちゃん(以下「よ」):まゆこの夫。行政書士。仕事はできるが税金はくわしくない。特技は料理と釣り。夢は釣り三昧の日々。
まゆこ(以下「ま」):税理士・税務ライター。「こむずかしい税金をいかに分かりやすく表現するか」ばかり考えている。趣味は、よっちゃんのごはんを食べること。
年少扶養控除は2010年度税制改正で廃止に
よ「扶養控除、昔は0歳児からあったよね?」
ま「うん。民主党政権のとき、子ども手当の代わりに16歳未満の扶養控除がなくなったね」
よ「あのときの子ども手当は大盤ぶるまいだったなぁ(しみじみ)」
ま「でもそのあと、手当はどんどん縮小したのよね」
ま「今回の異次元の少子化対策も、同じようになる気がして不安なのよね」
よ「確かにねぇ。国家財政の債務超過もあって、最近、課税が厳しくなっているしね」
扶養される側が16歳以上なら扶養控除できる
ま「よっちゃん。扶養控除はどんな人ができるか、知ってる?」
よ「子どものいる人でしょ?子どもと言っても高校生以上だけど」
ま「ぶー!はずれ。実はもっと広いのよ」
区分 | 年末時点の年齢 | 控除額(所得税) | 控除額(住民税) |
一般の扶養控除対象親族 | 16歳~18歳 | 38万円 | 33万円 |
特定扶養親族 | 19歳~22歳 | 63万円 | 45万円 |
一般の扶養控除対象親族 | 23歳~69歳 | 38万円 | 33万円 |
老人扶養親族(別居) |
70歳以上
|
48万円 | 38万円 |
老人扶養親族(同居) | 58万円 | 45万円 |
ま「扶養される側が年末時点で16歳以上なら、扶養控除が受けられるの」
よ「22歳まではまだ分かる。70歳以上の扶養親族もわかる。どっちも働けないし、働いても少額にしかならない。でも、社会人になるべき年齢も扶養控除の対象にするというのは納得いかないなぁ」
ま「2020年分から配偶者控除が厳しくなったことを考えると、なんか不公平感があるよね」
扶養控除できる親族の所得条件と範囲
よ「扶養していても、扶養される側がソコソコ稼いでいたらダメなんでしょ」
ま「うん。扶養される側の合計所得金額が48万円を超えていると、控除できない」
よ「合計所得金額?」
ま「ざっくり言うと『いろいろな所得を合算した金額』ってこと」
よ「そもそも所得って何?手取りじゃないの?」
ま「手取りとは違う。所得は利益みたいなもの。収入とも違う」
【引用元】確定申告の基本!収入・所得・手取りはどう違う?所得10種類って何のこと?
ま「実際の所得は10種類の区分に分けてから計算するの。区分ごとの所得の計算式が違うから、ホントは『所得=利益』とはいいにくい」
よ「今の公的年金って48万円以下が多いよね。年金暮らしの親を扶養してたら、扶養控除が受けられるの?」
ま「そうだよ。さっき表で見たじゃん。別居でも控除できる」
よ「なぜ?」
ま「生計一であればいいの。生計一というのは『一つのお財布で生活しています』っていう意味。同居か別居かは問わない。そうでないと『留学している子どもに送金していても扶養控除を受けられない』ってなるでしょ」
よ「そっか」