日本では、年金は老後生活を支える要(かなめ)です。年金の受給額の最低額がいくらになるかは人によって違います。この記事では、年金の受給額がどれくらいになるのか、実際のデータを用いて詳しく解説します。

この記事の目次

年金制度の現状

日本の年金制度は主に次の3つの制度から構成されています。

国民年金(第1号被保険者) 基本的に全ての20歳以上60歳未満の人(一部除く)が被保険者となります。
厚生年金保険 一定の規模以上の事業所に勤める従業員(70歳未満)が被保険者となります。
共済年金 公務員や私立学校教職員、農協職員など特定の職種に就く人が被保険者となります。

これらの年金制度はすべて保険料を払い、それによって一定の年金が老後に受け取れるという制度です。

ただし、日本の年金制度は高齢化社会とともに持続可能性に課題を抱えています。

現役世代の保険料が年金受給者へと直接的に分配されるPAYG(Pay-as-you-go)方式を採用しているため、現役世代と高齢者の人口バランスが大きく影響します。

日本の高齢化が進むにつれて現役世代の負担は増大し、年金受給額の縮小などが問題となっているのが現状です。

この問題に対処するために、様々な改革案が検討されています。

年金の受給資格

日本の年金制度は、主に国民年金と厚生年金の2つから成り立っています。

受給資格は基本的にはこれらの保険料の納付状況によります。

以下、各年金制度における受給資格について詳しく説明します。

国民年金の受給資格

国民年金は全ての日本国民が対象となる制度で、保険料を一定期間(最低25年)納付することで受給資格を得られます。

65歳から受け取り開始することが一般的ですが、60歳から受け取ることも可能です。

ただし、受け取り開始年齢が早いほど月額の年金額は少なくなります。

20歳から60歳になるまでの40年間にわたって、保険料をすべて納めた場合、満額の老齢基礎年金を受け取ることができます。

その場合、受け取ることができる老齢基礎年金額は795,000円(年額)となります。

したがって、月額は66,250円と計算することが可能です。

厚生年金の受給資格

厚生年金は、一定の規模以上の企業に勤務する従業員が加入する制度です。

保険料を最低10年納付することで受給資格を得られます。

また、厚生年金の受給資格は保険料の納付期間や納付額、最終給与などによって計算されるため、国民年金とは異なり個々の収入状況に応じた年金額が支給されます。

なお、両方の年金制度に加入している場合、65歳になったときには国民年金と厚生年金の両方から年金を受け取ることができます。

それぞれの年金制度では、障害者年金や遺族年金といった特別なケースでの年金受給も考慮されています。

たとえば、25年から10年に短縮されたのは老齢年金の受給資格期間だけで、老齢年金の受給資格期間が10年以上あっても、25年未満ならば遺族年金を遺族が受給することはできなくなっています。

平均受給額

国民年金と厚生年金はその支払期間と支払額に応じて、受給できる年金額が変わってきます。

したがって、人によって受給最低額は異なるのが普通です。

以下では、国民年金と厚生年金の平均年金受給額(月額)について紹介します。

まず、国民年金受給権者の平均年金月額(単位:万円)の推移は以下のとおりです。

平成29年度 55,615
平成30年度 55,809
令和元年度 56,049
令和2年度 56,358
令和3年度 56,479

次に、厚生年金保険(第1号)受給権者の平均年金月額(単位:万円)の推移は以下の通りです。

平成29年度 144,903
平成30年度 143,761
令和元年度 144,268
令和2年度 144,366
令和3年度 143,965

年齢別の年金受給額の目安

令和3年度末現在における、年齢別老齢年金受給権者数と平均年金月額は次の表のとおりとなっています。

老後の生活費は賄える?

日本の年金だけで老後の生活費を賄うことができるかどうかは、その人の生活スタイル、生活コスト、受給する年金の額、その他の収入や貯蓄などに大きく依存します。

しかし、一般的に言えば多くの人にとって年金だけでの生活は厳しいと言われています。

これは、年金の受給額が高齢期の生活コストを完全にカバーするには不十分であるという事実に起因しています。

特に医療費や介護費用など、老後にかかる可能性のある出費に対する備えが不足している場合、経済的な困難に直面する可能性があります。

そのため、多くの専門家は年金に頼らずに、定年後の生活資金を準備することを強く推奨しています。

これには、個人年金や生命保険の加入、貯蓄、投資、不動産賃貸などを含む多様な資産形成と収入源の確保が含まれます。