準大手監査法人である東陽監査法人、仰星監査法人の合併協議が報じられており、合併が成立した場合の売上、クライアント数、人員数を分析します。
2023年7月、準大手監査法人である東陽監査法人(以下、東陽)、仰星監査法人(以下、仰星)の合併協議がダイヤモンドオンラインにより報じられています。(*1)
7月末時点では両法人から公式に発表された情報はありませんが、今回の記事では合併が成立した場合の新法人の売上、クライアント数、人員数を分析していきます。
東陽は昭和46年設立の監査法人日東監査事務所を母体とする監査法人であり、直近の売上は46億円(2022年6月期)と、4大監査法人、太陽有限責任監査法人(以下、太陽)及びPwC京都監査法人(以下、京都)に次ぐ業界7位となっています。
主なクライアントにはパブリック・リレーションズ等を行うベクトル、中堅規模の証券会社である岡三証券グループを抱えています。
一方、仰星監査法人は平成2年に設立された北斗監査法人を母体とし、売上は東陽に次ぐ41億円(2022年6月期)で8位となっており、主なクライアントには電気通信工事大手であるコムシスHDや、熊谷組、東建コーポレーション、西松建設などの建設業を営む上場企業を抱えています。
東陽及び仰星はともに大手監査法人に次ぐ規模の準大手監査法人とされており(*2)、以下ではその他の準大手監査法人と比較する形で、新法人の売上、クライアント及び人員について見ていきます。
* 以下の分析はいずれも2022年6月期の実績に基づく
* 京都はPwCあらたと統合に向けた協議を行っていることが公表されているが(*3)、当記事では京都を準大手監査法人として扱っている
1. 売上
* 各法人の業務及び財産の状況に関する説明書類より(*4)
売上は単純合算で88億円となり、準大手で現2位の京都(67億円)を上回り、1位の太陽に続く売上となります。
これまで両法人は準大手の中で中位に位置していましたが、合併を機に売上100億円も視野に入る規模になります。
内訳を見ると監査が85億円で京都(61億円)を上回り、非監査は3億円で三優とほぼ肩を並べる水準です。
ただし、1位の太陽は直近で142億円を計上しており、東陽・仰星を合算しても太陽の2/3程度にとどまる見込みです。
また準大手で最小規模の三優監査法人(以下、三優)は売上37億円であり、太陽の1/4、東陽・仰星の4割程度にとどまり、準大手間の差が大きく開きます。
なお東陽、仰星いずれも売上全体に占める監査業務収入の割合が高く、非監査業務収入は京都と太陽の半分、三優と同程度の水準となっています。
今後、急激に非監査に力を入れるとは考えづらく、引き続き監査業務主体の法人となることが想定されます。
2. クライアント
* 各法人の業務及び財産の状況に関する説明書類より(*4)
クライアント数は単純合算で710社となり、現2位京都の474社を上回って太陽に次ぐ規模となります。
監査クライアントは549社で、2位京都の1.7倍程度、非監査クライアントは161社で、京都とはほぼ同水準です。
一方で1位の太陽は1,461社(うち監査1,053社、非監査408社)を抱え、準大手で唯一1,000社を超え、1,500社が視野に入っています。
太陽のクライアント数は、合併前の時点で東陽、仰星それぞれの4倍以上であり、東陽・仰星合計でも太陽の半分程度にとどまります。
合併によりその差は縮まるものの、売上と同様、新法人と太陽の差はまだ大きいと言えます。
なおここでも三優と他法人の差は大きく開いており、クライアント数合計では太陽の2割強、東陽・仰星の半分弱となっています。
続いて売上単価を確認します。
※単価は売上÷(前期末のクライアント数と当期末のクライアント数の平均)で算出
合併前時点で東陽と仰星はそれぞれ1,302万円、1,131万円であり、両者の単価にそれほど大きな差はありません。
合算で見ると1,216万円となり、準大手の平均的な水準になりそうです。