2017年1月から、国税のクレジット納付がスタートする。便利になる一方、デメリットもあるのでしっかり押さえておきたいところだ。また、併せてマイナンバー本格実施に伴い、税務署総合窓口(管理運営部門の窓口)で申告書・届出等の税務関係類を提出の際に「提出票」の作成が求められる。納税者はもとより、税理士もしっかり確認しておきたいこれらの施策を改めて確認してみる。

新たな国税納付方法「クレジット納付」開始

大手クレジット会社のJCBが2016年2月に公表した調査結果によると、ここ数年減少傾向となっているものの5人に4人がクレジットカードを持っていると回答しているが、2017年1月から、いよいよクレジットカードによる国税の納付がスタートした。
これまで国税の納付方法は、①税務署、金融機関の窓口で納付書に現金を添えて納付(現金納付)、②振替納税、③ダイレクト納付またはインターネットバンキング等を利用して納付(電子納税)及び、④延納・物納(相続税・贈与税)とされていた。
しかし、国税の納付手段の多様化を図る観点や、一足先にスタートした地方税のクレジット納付が広まり、納税者から国税についての要望も高まってきたこと、また国税当局としても収納率の一層の向上を図れることから、平成28年度税制改正大綱に盛り込まれ、導入が決定した。
仕組みは、国税庁長官が指定した納付受託者(トヨタファイナンス株式会社)へ納付の立替払いを委託することにより納付する手続きとされ、利用金額は1千万円未満かつ利用するクレジットカードの決済可能額以下の金額(決済手数料含む)。利用できるクレジットカードは、今のところ「Visa」「Mastercard」「JCB」「American Express」「Diners Club」「TS CUBIC CARD」の6社とされているが、今後拡大される可能性もある。

利用可能税目は、以下の通りほぼ全ての税目で利用が可能で、本税に加えて加算税や延滞税等といった付帯税の納付も可能だ。

■納付可能税目■
・申告所得税及び復興特別所得税
・消費税及び地方消費税
・法人税(連結納税を含む)
・地方法人税(連結納税を含む)
・相続税・贈与税・源泉所得税及び復興特別所得税(告知分のみ)
・源泉所得税(告知分のみ)
・申告所得税・復興特別法人税(連結納税を含む)
・消費税・酒税・たばこ税
・たばこ税及びたばこ特別税
・石油税
・石油石炭税
・電源開発促進税
・揮発油税及び地方道路税
・揮発油税及び地方揮発油税
・石油ガス税
・航空機燃料税
・登録免許税(告知分のみ)
・自動車重量税(告知分のみ)
・印紙税

利用手順は、サイトトップ(https://kokuzei.noufu.jp/)で利用規約の確認後、名前や住所、電話番号などの利用者情報を入力し、続いて納付税目などの納付内容を入力していく。最後にクレジットカード情報を入力すことで納付手続完了となる。

メリットだけじゃなくデメリットもしっかり確認

クレジット納付では、税務署や金融機関等に行く必要がなく、現金の持ち運びの必要もないなどのメリットもあるが、最大の特徴は、(1)夜間休日を問わず24時間納付可能、(2)支払いを分割払いやリボ払いが可能、(3)カード会社のポイントやマイレージをためられるなどといったメリットがある。
一方でデメリットとしては、たとえば、利用するには利用料(決済手数料)として納付税額1万円毎に76円(税抜)が必要となる。消費税を含むと決済ごとに0.82%加算される。

たとえば100万円の納付税額があるとすると、決済手数料は消費税込みで8208円となり、税込支払額は100万8208円となる。
「どうして?」と思う人も少なくないだろうが、これは国税庁長官が指定した民間の納付受託者が、利用者から納付の委託を受けて立替払いにより国に納付する仕組みなので、納付受託者が国へ納付した後、利用者から代金が支払われるまで一定のタイムラグが生じることとなり、納付受託者は貸倒リスクを負う一方、利用者は納付繰り延べなどの利益を得ることとなることから、納付受託者のリスクや利用者自身が享受する利益に対して納付受託者が決定しているものであるので、利用者が負担する必要があるというのが理由だ。
また、その他にも、
・領収証書が発行されないので、どうしても必要な場合は利用できない
・インターネット上のみの手続で、金融機関やコンビニエンスストア、税務署の窓口では利用できない
・その都度納付手続きを行う必要がある
・他税目をまとめて決済はできず、税目単位での納付となる
・納付済となった国税は、納税の猶予等を受けられない
などのデメリットがあるので、利用に当たっては考えてから始めたいところだ。