年金受給者の方は収入額が少ないケースが多いのでふるさと納税をしても節税にならないと言われることがあります。以下では年金受給者の方がふるさと納税でどれくらい節税できるか節税額をシミュレーションします。
この記事の目次
ふるさと納税とは?
まずは、ふるさと納税の概要について必要なポイントを絞って解説していきましょう。
ふるさと納税は日本の税制の一部で、自分の生活する場所以外の自治体に寄付を行い、その寄付金を所得税や住民税から控除できる仕組みです。
以下に主なポイントをまとめます。
ふるさと納税の目的
ふるさと納税制度は生まれ育った自治体や自分が応援したい自治体に貢献することを目的としています。
都会で生活する人々が、自身の出身地や気に入った地域を経済的にサポートするための仕組みです。
ふるさと納税における寄付と税の控除
一般的に自治体への寄附をすると、所得税や住民税から寄附金の一部が控除されます。
ふるさと納税では2,000円を超える部分の寄附金が控除の対象となり、原則として確定申告を通じて控除を受けることができます。
ただし、寄付できる上限額が定められています。
ふるさと納税における選択の幅
自分の出身地だけでなく、応援したい地域や特定の目的(例:災害復興支援、子育て支援、環境保護など)に寄附することができます。
ふるさと納税の返礼品
多くの自治体が、寄附者に対して特産品やサービスを「返礼品」として提供します。
これが、多くの人にとってのふるさと納税の魅力の一つとなっています。
ワンストップ特例制度
平成27年4月1日以後は「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が始まり、確定申告を簡素化する手続きが導入されました。
この制度を利用すると、特定の条件下で、確定申告の手間なく税控除を受けることができます。
ふるさと納税における控除上限額
ふるさと納税の控除は無制限ではなく、収入や家族構成などに基づく控除上限額が定められています。
この額を超えた分の寄附金は、税控除の対象とはなりません。
ふるさと納税は自分の意思で選んだ自治体や目的に寄附し、その上で税の軽減を受けることができる制度です。
利用者は確定申告やワンストップ特例制度の手続きを忘れずに行い、寄附する自治体や目的を選ぶ際に、詳細な情報を参照することが重要です。
年金受給者がふるさと納税を行う場合の寄附金上限額は?
年金受給者の方についてもふるさと納税を行うことで控除を受けられることから、節税を行うことが可能です。
ただし、年金受給者の方は収入額が少ないことが多いため、ふるさと納税をしても節税の効果は少ない、または効果が得られないケースもあります。
そこで、以下にて年金受給者の方はいくら以上であれば節税効果が得られるのか、寄付金上限額はいくらなのかを解説していきます。
まず、年金受給者の方がふるさと納税による節税効果を得られるかは、所得税や住民税を支払っているかどうかによって変わります。
ふるさと納税は所得税や住民税がお得になる制度ですから、そもそも所得税や住民税を支払っていないのであれば節税効果は得られません。
所得税や住民税は前年度の収入(課税所得額)によって決まるので、いくらの収入があれば所得税や住民税を支払わなければならない状態になるかがわかれば、ふるさと納税による節税効果が得られるかどうかがわかります。
所得税を納める必要があるかどうかは、以下の速算表から計算可能です。
図表1:令和3年度以降の公的年金等所得金額の算出
年齢区分
|
公的年金等の
収入金額の合計 (X) |
公的年金等雑所得の金額 | ||
公的年金等雑所得以外の所得にかかる合計所得金額 | ||||
1,000万円以下 | 1,000万円超 2,000万円以下 |
2,000万円超 | ||
65歳未満
|
130万円以下 | X-600,000円 | X-500,000円 | X-400,000円 |
130万円超 410万円以下 |
X×75%-275,000円 | X×75%-175,000円 | X×75%-75,000円 | |
410万円超 770万円以下 |
X×85%-685,000円 | X×85%-585,000円 | X×85%-485,000円 | |
770万円超 1,000万円以下 |
X×95%-1,455,000円 | X×95%-1,355,000円 | X×95%-1,255,000円 | |
1,000万円超 | X-1,955,000円 | X-1,855,000円 | X-1,755,000円 | |
65歳以上
|
330万円以下 | X-1,100,000円 | X-1,000,000円 | X-900,000円 |
330万円超 410万円以下 |
X×75%-275,000円 | X×75%-175,000円 | X×75%-75,000円 | |
410万円超 770万円以下 |
X×85%-685,000円 | X×85%-585,000円 | X×85%-485,000円 | |
770万円超 1,000万円以下 |
X×95%-1,455,000円 | X×95%-1,355,000円 | X×95%-1,255,000円 | |
1,000万円超 | X-1,955,000円 | X-1,855,000円 | X-1,755,000円 |
たとえば、年齢が64歳の方の公的年金等の収入金額が140万円である方で、公的年金等雑所得以外の所得にかかる合計所得金額が0の場合(年金以外の収入が0の場合)、上記の表から、1,400,000円×75%-275,000円を計算して775,000円が課税所得となります。
775,000円から、基礎控除480,000円が差し引かれるため、この方の課税所得は295,000円となり、ここに所得税率(この場合は5%となりますが、所得税率は課税所得に応じて変わります)を乗じたものを所得税として納めなければなりません。
課税所得額を計算する場合、所得税がかからない金額を計算すると以下のようにまとめることが可能です。
図表2
年金受給者の年齢 | 所得税がかからない総収入 |
65歳未満 | 108万円以下 |
65歳以上 | 158万円以下 |
この表の年齢や収入の範囲に該当する場合、家族の構成にかかわらず、ふるさと納税からの控除は得られないことに注意してください。
また、住民税の税率は各自治体によって違いますので、確認が必要です。
複雑な計算が難しいという方については、公的年金以外に収入がないことを想定すると、以下が控除上限額となります。
図表3:ふるさと納税の寄付上限額
公的年金収入 | 65歳未満 独身 |
65歳未満 夫婦(配控あり) |
65歳未満 寡婦 |
65歳以上70歳未満 独身 |
65歳以上70歳未満 夫婦(配控)あり |
65歳以上70歳未満 寡婦 |
100万円 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
150万円 | 11,000 | 3,000 | 5,000 | 0 | 0 | 0 |
200万円 | 20,000 | 11,000 | 14,000 | 12,000 | 4,000 | 6,000 |
250万円 | 28,000 | 20,000 | 22,000 | 24,000 | 15,000 | 18,000 |
300万円 | 37,000 | 29,000 | 31,000 | 36,000 | 27,000 | 29,000 |
350万円 | 46,000 | 38,000 | 40,000 | 46,000 | 38,000 | 40,000 |
400万円 | 58,000 | 49,000 | 52,000 | 58,000 | 49,000 | 52,000 |
450万円 | 69,000 | 60,000 | 62,000 | 69,000 | 50,000 | 62,000 |
500万円 | 79,000 | 71,000 | 73,000 | 79,000 | 71,000 | 73,000 |