PwCあらた有限責任監査法人とPwC京都監査法人の統合を見据え、大手監査法人業界への影響を、売上、クライアント数及び人員数から分析します。

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2023年6月、PwCあらた有限責任監査法人とPwC京都監査法人は統合に向けた協議を開始したことを発表しました。

2023年8月末時点で追加のリリースはなされていませんが、当記事では統合が成立した場合における大手監査法人の勢力図を見ていきます。

 

PwCあらた有限責任監査法人(以下あらた)は、旧中央青山に所属していた公認会計士が中心となって2006年に設立された監査法人です。

2022年度の売上は565億円であり、トヨタ、ソニーといった日本を代表する企業を監査クライアントに抱え、大手監査法人の一つに数えられています。

一方、PwC京都監査法人(以下京都)は2007年にみすず監査法人京都事務所の業務を引き継ぐ形で設立され、代表的な監査クライアントにはKDDI、ニデック等が挙げられます。

京都の2022年度売上は67億円であり、こちらは太陽有限責任監査法人などと並び、準大手監査法人に位置付けられています。

あらた、京都はいずれも世界最大級の国際会計事務所であるプライスウォーターハウスクーパース(PwC)のグローバルネットワークにメンバーファームとして加盟しており、以前から合併がささやかれていましたが、2023年6月、統合に向けた協議を開始したことがリリースされています(*1)。

以下では、あらたと京都の統合が大手監査法人の業界地図にどのような影響を与えるのか、売上、クライアント数、人員数の点から見ていきます。

なお、特に断りがない限り、あらた、京都、有限責任あずさ監査法人(以下あずさ)及びEY新日本有限責任監査法人(以下新日本)は2022年6月期の決算(*2)を、有限責任監査法人トーマツ(以下トーマツ)は2022年5月期の決算(*3)をもとにしています。

1. 売上

(1) 業務収入

まずは売上を見ていきます。

2022年度の売上は、あらた565億円、京都67億円であり、合計すると632億円となります。

うち監査業務収入は343億円、非監査業務収入は289億円です。

トーマツの1,388億円をはじめ、あずさ、新日本が1,000億円を超える中、統合後はトーマツの半分弱、あずさと新日本の5~6割程度となります。

準大手である京都の売上はあらたの1割強、また業界1位であるトーマツの5%であり、全体への影響は限定されたものになりそうです。

(2) 監査業務収入

監査業務で見ると、2022年度の売上はあらた282億円、京都61億円であり、合計すると343億円となります。

KDDI、ニデック等をクライアントとする京都の監査売上はあらたの20%強あり、統合により大きく伸ばすことができます。

しかしながら他の大手は売上800億円を超えており、単純合算した343億円でも売上1位である新日本の4割弱にとどまります。

統合が成立したとしても、監査業務においては上位との差は大きいものとなりそうです。

(3) 非監査業務収入

非監査業務で見ると、2022年度の売上はあらた283億円、京都7億円であり、合計すると289億円となります。

もともとあらたは非監査に強く、大手の中でトーマツに次ぐ2位となっている一方、準大手に区分される京都の売上は7億円にとどまることから、こちらは大きな影響はなさそうです。

売上についてまとめると、監査売上としては統合により2割強増加することで他3法人との差は縮まるとはいえ、その差は依然として大きいものとなっています。

一方、非監査売上にはほとんど影響がないようです。

京都の売上はトーマツの5%、あらたの10%程度であり、売上全体で見るとBIG4の勢力図に大きな影響はないと言えます。

2. クライアント

次にクライアント数を見ていきます。

(1)監査クライアント合計

2022年度の監査クライアントは、あらた1,157社、京都326社であり、合計すると1,483社となります。

京都の監査クライアントはあらたの3割弱であり、単純合算で28%増加となります。

統合により監査クライアント数は大きく伸びるものの、他3法人がいずれも3,000社を超えているのに対して1,483社にとどまり、差はまだ大きなものとなりそうです。

(2)金商法・会社法監査クライアント

金商法・会社法の監査クライアントを見ると、2022年度はあらた142社、京都62社であり、合計すると204社となります。

京都の金商法・会社法の監査クライアントはあらたの4割強であり、単純合算で44%増加するものの、依然として他3法人の2~3割にとどまります。

(3)大会社等監査クライアント

大会社等の監査クライアントを見ると、2022年度はあらた258社、京都74社であり、合計すると332社となります。

京都の大会社等の監査クライアント数はあらたの3割弱であり、単純合算で29%増加するものの、統合後でも他3法人の3割程度にとどまります。

(4)非監査クライアント

非監査業務のクライアントについて、2022年度はあらた1,233社、京都148社であり、合計すると1,381社となります。

京都のクライアント数はあらたの1割強であり、単純合算で12%増加することになります。

統合後は1位トーマツの半分弱、3位新日本の7割強となる見込みです。