インボイス登録をまだ迷っている、登録を見送ったけど不安を抱えている。そんな個人事業主やフリーランスが意識しておくべきこと、取るべき対策を解説します。
この記事の目次
まだインボイス登録をすべきか迷っている。もしくは、登録を見送る方針でいるけどなんだか不安だ。
登録しないならしないで、なにか対策すべきことがあるのではないか。
インボイス登録をしていない免税事業者の個人事業主・フリーランスの方の中には、いま、そんな気持ちで過ごしている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで当記事では、インボイス登録を「しない」場合に起こりうることと、しないと決めたら取り組むべき対策を解説します。
登録しないと、値引き・転注・失注のリスクが高まる
インボイス登録をしなかった場合、顧客である事業者が税務署に納める消費税額が増えることとなります。
インボイス未登録の相手に支払った金額は、消費税申告上の「仕入税額控除」の対象とならないためです。
取引先は納税額が増える分だけ手取りが減るわけですから、手取り減少分を補填するためになんらかのアクションを起こす可能性があります。
経済合理性を考えれば、当然のことです。
日本は自由経済社会の国ですから、事業者間において「誰から・何を・いくらで」購入するかは企業の自由意志で決まります。
今後はその意志決定の判断要素として、「相手先がインボイスに登録しているか否か」が加わることになるのです。
そこで取引先は、未登録の事業者に対して次のような反応を示すことが想定されます。
1. 登録済みであるか、登録の意向があるかを確認される
まずはあなたがすでにインボイス登録しているか、もしくは登録の意向があるかどうかが確認されるでしょう。
近く登録の予定があるのであれば、取引先はそれ以上のアクションを起こしてこない可能性が十分あります。
2. 登録を要請される
あなたがまだインボイスに登録しておらず、その意向も無いとなれば、取引先はあなたにインボイス登録をお願いすることが考えられます。
登録さえしてくれれば、取引先自身の手取り額には影響が生じないためです。
3. 値引きを要請される
登録しておらず、登録の意志も予定も無いとなれば、取引先は未登録事業者との取引価格を引き下げて、消費税負担増の穴埋めを図るかもしれません。
もとより、上述したように「いくらで買うか」「いくらで売るか」は企業が自由に決めることですが、未登録であることが取引価格の押し下げ要因になることは間違いありません。
4. 取引停止・失注となってしまう
繰り返しになりますが、事業者間において、「誰に売るか」「誰から買うか」は各企業の自由意志で決まります。
インボイス制度が開始されると、取引の意志決定にあたって「インボイス登録をしているかどうか」が重要な判断要素になりえます。
登録していないから取引しない、登録をしていないから見積が通らない、といった事態は生じえるでしょう。
5. 変化無し
筆者が税理士として多くの経営者にお話を伺っていると、意外にも「インボイス登録しているかいないかによって、取引条件を変えることはない」と答える方が多くいらっしゃいます。
自社にとって大事な戦力である外注先を大事にしたい、取引停止なんてしたらむしろ自分たちが困る、という考えが根底にあるようです。
クリエイティブ職や高度専門人材など、替えの効きづらい職業においてこの傾向は顕著です。
6. 登録した場合は値上げ可の提案をされる
免税事業者がインボイス登録をすると、新たに消費税の申告と納税を行う必要が生じます。
そこで、取引先によっては「もし気が変わって登録するのなら、その分値上げしてもいいよ」と提案されるケースもあります。
これも、筆者が税理士として関わった企業で実際に起こったことです。