インターネット上で行われる電気通信利用役務の提供について、平成27年度税制改正で、「リバースチャージ方式」が導入されました。これはどのような制度でしょうか。

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改正前は、国内事業者がインターネットを介して電子書籍・音楽・広告等の配信を行う場合には国内取引に該当するため消費税が課される一方、国外事業者が行う場合には国外取引に該当するため消費税は課税されませんでした。

こうした国内事業者と国外事業者の間での不均衡を是正するため、平成27年度の税制改正で国境を越えた役務の提供に係る課税の見直しが行われました。

平成27年度改正の概要

インターネット上で行われる電子書籍・音楽・広告等の配信など、電子通信回線を介して行われる役務の提供(以下「電気通信利用役務の提供」)について、内外判定基準を『役務の提供に係る事務所等の所在地』から『役務の提供を受ける者の住所地等』に変更されました。

これにより、国外事業者から受ける電気通信利用役務の提供は国内取引となり、課税の対象となりました。

また、国外事業者から受ける電気通信利用役務の提供を「事業者向け電気通信利用役務の提供」と「消費者向けの電気通信利用役務の提供」に区分し、「事業者向け電気通信利用役務の提供」については、リバースチャージ方式が導入されました。

リバースチャージ方式とは

リバースチャージ方式とは、消費税の申告納税義務を、役務提供を行った国外事業者から、役務提供を受けた事業者に転換する方式をいいます。

通常は、売上側が消費税を納めますが、リバースチャージ方式の下では、サービスを受けた側が消費税を納めることとなります。

以下の図は、国外事業者からの役務の対価を500とした場合のリバースチャージ方式のイメージ図です。

このように、国内事業者が国外事業者から電気通信利用役務の提供を受けた場合には、国内事業者が消費税を納付するとともに、同額を仕入税額控除します。

なお、リバースチャージ方式は、当分の間、課税売上割合が95%以上の事業者簡易課税を適用している事業者には適用されません。

したがって、その間に受けた事業者向け電気通信利用役務の提供については、リバースチャージ方式による申告は必要なく、また仕入税額控除も行えません

電気通信利用役務の提供の全体像

電気通信利用役務の提供の全体像は、概ね以下の通りとなります。

このように、課税処理を判断するためには、自分が受けたサービスが、「電気通信利用役務の提供に該当するか?」「もし該当するなら、事業者向け電気通信利用役務の提供に該当するか?」がポイントとなります。

「電気通信利用役務の提供」とは

電気通信利用役務の提供とは、電気通信回線を介して行われる著作物の提供その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供とされています。

通信そのものや、調査結果などの成果物をインターネットで送信するなど、電気通信回線を介する行為が他の資産の譲渡等に付随して行われるものは該当しません。

 

(電気通信利用役務に該当する取引例)

  • 電子書籍・電子新聞・音楽・映像・ソフトウエアの配信
  • クラウド上のソフトウエアやデータベースを利用させるサービス
  • クラウド上で顧客の電子データの保存を行う場所の提供を行うサービス
  • インターネット等を通じた広告の配信・掲載
  • インターネット上のショッピングサイト・オークションサイトを利用させるサービス
  • インターネット上でゲームソフト等を販売する場所を利用させるサービス
  • インターネットを介して行う宿泊予約、飲食店予約サイト、英会話教室 など

「事業者向け電気通信利用役務の提供」とは

「事業者向け電気通信利用役務の提供」とは、国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち、役務の性質取引条件等から当該役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるものをいいます。

代表的なものとしてネット広告の配信サービスがあります。

広告は企業が商品等の宣伝目的で行うものなので、役務の性質から事業者向けとなります。

また、事業者が個別に契約し、その契約に基づいて提供されるものは、取引条件等から事業者取引であることが明らかであるため事業者向けとなります。