本格化する国税庁のDXと、今後の税務行政や滞納処分はどうなっていくのかについて、元国税徴収官が分かり易く説明します。
そもそもDXとは
DXとは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略で、「デジタル変革」とも訳されます。
変化や変換という意味のトランスフォーメーションの「トランス」は、英語圏で「X」と表記されることがあるため、「DX」と略されています。
政府のDXへの取り組みは、2023年6月9日、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」が閣議決定されました。
それによりますと、「社会全体のデジタル化は、国民生活の利便性を向上させ、官民の業務を効率化し、データを最大限活用しながら、安全・安心を前提とした『⼈に優しいデジタル化』であるべき」となっています。
≪参考≫デジタル社会の実現に向けた重点計画(概要・簡易版)(デジタル庁HP)
国税庁のDXとは
国税庁の「使命」は、「納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現する」とされています。
国税庁レポート2023によりますと、「経済社会のグローバル化・デジタル化の進展等によって、税務行政を取り巻く環境はより大きく変化しています。
また、新型コロナウイルス感染症への対応もあり、税はもとよりあらゆる分野でデジタルの活用が急速に広まっています。
そのため、税務においてデジタル活用が広まることは、納税者にとって、税務手続の簡便化だけでなく、単純誤りの防止による正確性の向上や、業務の効率化による生産性の向上等にもつながることが期待されています。
また国税当局側も、事務処理の効率化や得られたデータの活用等を通じて、更なる課税・徴収事務の効率化・高度化を進められるものと考えられます。」とあります。
このため、国税庁は2023年6月23日に、「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2023-」を公表し、税務行政のDXを更に前に進めていくことを示しました。
≪参考≫税務行政のデジタル・トランスフォーメーションー税務行政の将来像2023ー(国税庁HP)
国税庁のDX化への取り組み
- e-TaxのUI/UX改善
e-Taxに関するソフト等の増加に伴い複雑化した導線を簡素化するために、「受付システム」、「e-Taxソフト(WEB版)」及び「e-Taxソフト(SP版)」などのソフトを統合し、利用者目線に立った導線に整理して、スマートフォン・タブレット、パソコンのどちらからも利用可能とするようUI/UXの改善を行います。
- キャッシュレス納付の推進、公金受取口座を利用した還付
キャッシュレス納付の利用拡大に取り組むとともに、令和4年分の還付申告及び更正の請求から、還付金の振込先として公金受取口座の利用が可能になりました。
- 年末調整手続の簡便化
企業・従業員双方の事務コストを軽減するため、年末調整手続のデジタル化を推進しています。
これにより企業は、従業員の保険料等の各控除額の確認やシステム入力が不要になります。
また、従業員の方は、マイナポータルから控除に関するデータを一括でダウンロード・活用することが可能です。
- e-Taxの「マイページ」の充実
令和5年1月から、個人の方はe-Taxのアカウント画面において、ご自身の基本情報、還付金等の処理状況や各税目に関する情報(各種届出の提出状況など)の確認や、一定の申請を簡易に行うことができるページ(マイページ)の利用が可能になりました。
令和5年9月からは、法人の方に向けてもe-Taxのマイページの利用が可能になり、表示する情報や税務代理人への利用の拡大など機能が充実されました。
- 納税証明書のオンライン取得・納税情報の添付自動化
令和4年9月から、パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットで、電子納税証明書(PDF)の請求から取得までできるようになりました。
また、納税情報の添付自動化(納税証明書の添付を要する申請手続に関して、その手続をオンラインで行う際、納税証明書に代えて、手数料不要で「納税情報」を自動で取得し、申請先に提出することができる仕組み)の活用が見込まれる省庁や関係機関に対し、参加に向けた働きかけを行っています。