前回は、小規模会計事務所の採用事情の難しさを、紹介させていただきました。
今回は、採用に成功している小規模・個人会計事務所を例に挙げて採用のポイントについてお話させていただきます。

7年ほど前から、お付き合いさせていただいている8名の会計事務所。所長が公認会計士・税理士で、職員に税理士1名、その他は科目合格者、無資格者で構成させています。いわゆる一般的な個人事務所でした。平均年齢は35歳。当時は既存スタッフの退職も相次いでおり、ハーローワークや税理士会、WEB媒体、人材紹介会社など、さまざまな方法で職員を採用していました。とはいうものの、採用には苦戦しており、私の方から条件面の整備など、目先の規定変更だけではなく、採用に成功している個人会計事務所の事例をお話させていただきました。それを1つずつ実践することで、今では社員の定着率も上がり、新規採用の苦労も随分軽減されています。
ポイントは、
・経営理念の策定
・評価制度の導入
・面接官の選定、ヒアリング項目の設定
です。
導入に抵抗もある所長も多いのですが、上記事務所の所長は2代目でまだ若く、各項目導入に対して違和感もありませんでした。経験則ですが、個人事務所の場合、上記項目がすべて整備されている事務所は、ほとんどありません。所長が年配であるほど、職員は丁稚奉公的に低い給与で勉強しながら働くもの、という意識をお持ちです。しかしながら、現在は少子高齢化で若い労働力は減少、さらに会計業界以外にもさまざまな就職先があります。加えて景気向上による売り手市場となっていますので、いち早く昔ながらの採用手法から脱却することが採用の成否を分けるポイントだと言えます。
「何のためにこの事務所で働くのか?」―。既存の職員にとっても重要なテーマですし、1年後、2年後の目標設定により、スキルアップすることで事務所からどういった評価があり、給与にも反映されるのか、こうしたものが提示されていなければ、日々のモチベーションも上がりません。クライアントへのサービスという観点でも、こうした制度設計が出来ていれば、良い影響が目に見えて出てきます。評価制度の導入は、すべての人にとって平等ではないケースが多く、導入時は必ずと言って良いほど、不満も出てきます。30名、50名規模になってからの導入は、逆に難しいと言われますので、むしろ10名以下の間のほうが導入チャンスです。
少数事務所では、一緒に働くスタッフとの相性は重要です。面接は所長のみではなく、現場の職員も同席させ、意見を聞くのも良いでしょう。候補者スクリーニングという意味だけではなく、事務所に合う人を真剣に選考しているという姿勢が職員にも伝わり、信頼関係も強くなります。
職員の満足度が高まり、定着率が上がれば、退職補充の採用活動も少なくなります。また、採用時にも外部人材会社の力に頼らずに、自社職員からの紹介も期待できます。職員紹介が出てくるレベルになれば、業界の中でも採用力の高い会計事務所と言えます。
職員紹介まで行かずとも、上記項目が整備されている会計事務所は、われわれ人材紹介会社にとっても自信を持って候補者に紹介できる案内先になりますので、公募の際にも良い候補者を集めることが出来るでしょう。
次回は少し個性的な採用手法を導入している会計事務所について、お知らせしたいと思います。