「寡占状態」とも言われる日本の監査法人業界。新日本、トーマツ、あずさ、およびあらたの4大監査法人が圧倒的な規模を誇っているが、回復基調にあるIPO件数の増加などを受け、それ以外の監査法人も少しずつ存在感を高めている。そこで今回は大手に次ぐ規模を持つ、中堅監査法人について全3回に渡り、さまざまな角度から分析します。

中堅監査法人の業界動向を分析する前に、まずは、大手とそれ以外の違いを簡単に見ておきましょう。

公認会計士・監査審査会が2016年に公表した「監査事務所の概況 (平成 28 年版モニタリングレポート)」(以下「レポート」)では、大手監査法人は「上場会社を概ね100 社以 上監査し、かつ常勤の監査実施者が1000 名以上の 監査法人」と定義され、新日本、トーマツ、あずさ及びあらたの4法人とされています。

一方、それ以外の法人は「準大手監査法人」「中小監査事務所」に区分されており、それぞれ「大手監査法人以外で、比較 的多数の上場会社を被監査会社としている監査法人」「中小監査法人(大手監査法人及び準大手監査法人以 外の監査法人)並びに共同事務所及び個人事務所」と定義されています。

そして「レポート」でも述べられている通り、大手とそれ以外には下記の点で規模に大きな違いがあります。

①人員数

「監査事務所の概況 (平成 28 年版モニタリングレポート)」をもとに作成

4大監査法人が合計1万9400人を抱え、8割以上を占めている一方、準大手及び中小合わせても3768人に過ぎず、2割にも届きません。

②業務収入

「監査事務所の概況 (平成 28 年版モニタリングレポート)」をもとに作成

業務収入(一般の事業会社における売上)で見ると大手4社の占有率はさらに高まり、85%を越えます。

③監査クライアント数及び規模

「監査事務所の概況 (平成 28 年版モニタリングレポート)」をもとに作成
「監査事務所の概況 (平成 28 年版モニタリングレポート)」をもとに作成

上場監査クライアント数で見ると、準大手及び中小合わせて1/4以上を占め、人員数や業務収入に比べると大手との差は縮まるように見えます。しかしながらクライアントの規模を表す一つの指標といえる時価総額ベースで見ると、なんと1割にも満たず、実質的に大手が圧倒的に強いことが分かります。

以上より、人員、業務収入、上場監査クライアント数及びその時価総額、いずれの点で見ても大手とそれ以外の法人の間には大きな差があり、日本の監査法人業界は上位4法人が圧倒的な規模を誇っています。

とはいえ、最近の動向では大手からそれ以外の法人に監査クライアントが流れる傾向がみられます。例えば、2016年には大手4法人の監査クライアント数が-26社に減少している一方、準大手は+15社、中小監査事務所は+11社となっています。寡占状態にはありながらも、少しずつ中堅監査法人の存在感は高まってきているのではないでしょうか。

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