前回の「これからの会計人に確実に求められる『事務所のDX化』」では、会計事務所のDX化の必要性について解説しました。今回は初級編として、会計事務所が導入し、使いこなすべきDXツールを大きく3つに分けて解説します。
この記事の目次
「会計事務所が活用すべきDX化ツール」とひとくちに言っても、業務によって導入が必要なツールは異なります。
以下のように、大きく3つに分けて解説していきます。
- DX化を進める上での環境整備である「ITインフラツール」
- 勤怠・請求書等の「バックオフィス(経営管理)ツール」
- 税務業務に直結する「業務ツール」
1. ITインフラツール
「ITインフラツール」の整備はDX化を行う上で不可欠です。
今回の初級編で紹介するツールを未導入の場合は、今すぐ導入の検討を行いましょう。
(1)メールアドレス(ドメイン)
会計事務所によっては、従業員ごとにメールアドレスを発行せずHPの問合せで使用する「info」アドレスのみ使用しているケースや、「Gmail」「yahoo」等のドメインのままフリーメールを利用しているケースが見られます。
各種ツールを導入するにあたって、従業員ごとのメールアドレスがないと、そもそもツールの導入ができません。
未導入の場合には、今すぐ全従業員へメールアドレスを発行しましょう!
またお客様とのやり取りでフリーメールのドメインをそのまま利用している場合、お客様から事務所としての信用度を疑われるケースも考えられます。
昨今、ビジネスチャットでのやり取りが増加し、メールアドレスを介したやり取りは減少しつつあります。
しかし、ビジネスチャットでのコミュニケーションを開始する際にメールアドレスの通知が必要なツールもあります。
独自ドメインを未取得でフリーメールをそのまま利用している場合は、事務所のホームページ(HP)が無いケースもあると思いますので、ドメインを取得し、独自メールアドレス及びHPを作成しましょう!
(2)ノートPC
業務を行う上で、一番利用するツールであるパソコン(PC)の選択は非常に重要です。ノートPCを導入すると持ち運びできるため、柔軟な働き方が可能となります。
オフィス内でのフリーデスクや会議室への移動、また外出時や自宅でのリモートワークなど、場所にとらわれずにパソコンを使えます。
さらに、顧問先へ訪問した際のお客様とのやり取りや会議室でのプレゼンテーションなど、ノートPCがあればモニターを通して画面を表示しながら説明できます。
これらは、デスクトップパソコンでは対応できません。すべてのデスクトップPCをノートPCへ変更するのは難しいと思いますので、お客様とのやり取りを行う可能性がある者からノートPCへ変更しても良いかもしれません。
- 推奨スペック:メモリー8GB以上、SSD500GB以上
- おすすめノートPC:Lenovo ThinkPad、Panasonic レッツノート、dynabookなど
(3)Wi-Fi環境
Wi-Fiとは、ケーブルを使った有線接続ではなく、無線でインターネット回線を使う接続方法です。
Wi-Fi環境が整うと、オフィス内でどこでもインターネットに接続できるので、やはり社内の様々な場所でミーティングができるなど場所を選ばず作業が可能になります。
会議室にモニターを設置すれば、たとえば顧問先訪問時の説明で、荷物になる紙資料をわざわざ印刷する必要もありません。
ただしWi-Fi設置にあたっては、セキュリティ対策が非常に重要となります。導入時には、通信会社などの専門家に相談することをおすすめします。
おすすめ:光回線、置くだけwifi、ポケットwifiなど
2. バックオフィス(経営管理)ツール
ここでは、バックオフィス(経営管理)の効率化ツールを紹介します。
電子契約書
電子契約書は、契約書の作成・署名・管理をデジタル化するツールです。
会計事務所では顧問契約時・更新時・スポットでの業務依頼時など、契約書・確認書等を取り交わすケースが非常に多いと思います。その度に、印刷・製本を2部以上行い、押印を頂戴し、ファイルで管理する業務は非常に煩雑です。
電子契約書を導入すると、オンライン上でやりとりができるので、このような作業を大幅に削減することができます。
今後、顧問先によっては、電子での契約締結が当たり前になってくると思いますので、未導入の場合には導入を強くおすすめいたします!
おすすめ:クラウドサイン、Great Sign
3. 業務ツール
ここでは税務業務を行う中で使用するツールを紹介します。実務に直結するツールですので、導入していない場合はぜひ導入を検討していきましょう。
(1)クラウド会計
顧問先においてクラウド会計の導入がますます加速しています。
初期設定やデータ移行にある程度の労力が必要ですが、導入後は会計データを直接閲覧・編集できるようになるので、会計データをやり取りする時間が削減できます。
預金・カード情報等とAPI連携する機能もあり、残高が合わなくなることもありません。またサービスによっては入金消込も自動化されるものもあり、作業効率・正確性も向上します。
まだ導入していない顧問先からも問い合わせを受けるケースも増えていると思います。
顧問先への説明が不安な場合は、自身の会計情報をクラウド会計に変更し、試してみる方法も良いでしょう。
おすすめ:freee会計、マネーフォワード会計、弥生会計オンラインなど
(2)自動仕訳ツール
自動仕分けツールとは、領収書・請求書・預金通帳をスキャンするだけで仕訳データが納品され、仕訳起票が完了するサービスです。
新設の法人やベンチャー企業を除き、一定の社歴がある法人の仕訳業務は定型的な仕訳が大部分を占めると思います。
これまでは熟練工のように仕訳スピードが速い者の育成が重要でしたが、このようなサービスを利用すればその必要もありません。
また税理士の先生や優秀なコンサルタントは起票作業をせずに、仕訳の確認作業のみを行うほうが効率的です。
サービス利用にあたって費用は発生しますが、ここで削減した時間を顧問先との面談に費やし、これまでできなかった申告以外の提案を顧問先へ実施しましょう!
(3)業務BPO(アウトソーシング)
業務のBPOとは自動仕訳ツール等を使うのではなく、そもそも仕訳業務自体を外部へアウトソーシングすることです。
単調かつ定型的な作業が多い仕訳業務ですが、業務時間の大部分を占めていると思います。
会計事務所によっては担当者が長年同じクライアントを持つケースも多いですが、その担当者が辞めてしまった場合、昨今の採用状況も鑑みると、同レベルで記帳作業ができる者の新規採用は難しくなってきているのではないでしょうか?
このような背景もあり、記帳代行業務自体をアウトソーシングし、むしろ記帳代行以外の単価の高い税務業務などに人的リソースを集中する方法を検討してみる方が、将来的にもメリットが大きいのではと思われます。
最後に
辻・本郷ITコンサルティング株式会社では、辻・本郷税理士法人で培った会計事務所のDX化のノウハウを、会計事務所様へ提供しております。
DXツールの導入支援・経理業務(記帳代行)のアウトソーシング等、会計事務所の業務を効率化できる各種サービスを展開しております。
DX化と言っても、まず何から検討して良いか分からない方も多いと思いますので、ぜひお気軽にお問合せください!
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