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パナマ文書問題でクローズアップ 日本の国税当局の国際課税体制はここまで整備されている

国税庁では、かなり前から国際取引における租税回避には厳しい目を向けている。意外と知られていない国税当局の国際部門について、元国税庁相互協議室課長補佐で複数の税務署長を経験された小寺壽成理士に話を聞いた。

租税調査研究会 小寺壽成主任研究員

・・・海外を経由した租税回避が全世界でクローズアップされ、日本の課税当局も国際部門を充実させていますが、どのような指揮系統で動いているのですか。

小寺 国税庁において国際業務を行う部署として、長官官房に「国際業務課」と「相互協議室」があります。何をしているかといいますと、国際業務課では、国税庁国際担当審議官の指揮の下、外国税務当局との協力関係の促進や経験の共有を行うため、外国税務当局との租税条約等に基づく情報交換の実施、アジア税務長官会合、OECD租税委員会等の国際会議への参加、開発途上国への技術協力などを行っています。相互協議室では、移転価格課税等により国際的な二重課税が発生した場合に、租税条約の規定に基づき外国税務当局との相互協議を実施し、国際課税問題の解決を図っています。

国税庁では、海外の情報を適切に収集し、また 各国税務当局との連携強化を図るため、昭和60年から、米国をはじめ日本と経済的つながりの大きい国・地域へ職員を長期間出張させています。派遣先国の税制・税務行政などに関する情報の収集、国税庁からの依頼に基づき現地企業の実態確認や情報収集を行うほか、相手国の税務当局との連携が必要となる事項につき、重要なパイプ役としての役割を果たしています。長期海外出張者の派遣都市は、ニューヨーク、ロスアンゼルス、ワシントン、ロンドン、パリ、オタワ、ベルン、ボン、アムステルダム、香港、上海、北京、シンガポール、ソウル、ジャカルタ、バンコク、マニラ、シドニーなどです。

・・・国税局は、大規模法人や富裕層の情報収集・調査のための国際部門があると聞いていますが、どのような部門が、どのような仕事をしているのですか。

小寺 東京国税局を例にとると、大法人の国際課税に関しては、その先駆的役割を担い、国際課税事案調査の集積、精緻な分析を長年に渡り執行してきた、調査部の国際部門の組織の理解が重要です。調査一部の国際監理官を筆頭に国際調査課、国際情報第1・2課があり、調査部全体の国際税務調査の支援、外国法人の調査、移転価格調査、移転価格に係る事前確認等の業務等を行っています。調査部の国際業務については、専門誌「税理1月号」P22~29に税理士中山正幸先生の「国税庁。国税局の国際調査体制の変化と現在」の論文に詳細に紹介されているので、参照していただきたい。

また、課税部のなかの資料調査課(3課、4課)も重要です。「料調(リォーチョー)」ともいわれている部署で、資料調査3課では、国際化・IT化に係る資料源開発、金融商品等の実態解明及び運用益等の把握を行っており、資料調査4課は、国際的租税回避スキームなどへの対応、国際調査事案のための基礎的情報の収集、管理・分析、複数税目国際調査事案の選定に資する資料の収集及び分析などを行っています。

・・・東京国税局には、個人・法人の両方をカバーする海外取引担当がいますね。

小寺 課税部に統括国税実査官(国際担当)を配置しています。国際的租税回避スキームの解明には、外国の租税法、租税条約、金融取引等の専門的知識が必要になるため、法人・個人を通じた総合的な課税関係を分析・検討するため各事務の精通者が配置されています。つまり、税目横断的な業務を行なっているのです。

さらに、査察部、いわゆるマルサでも、国際事案を担当する部署があります。「査察国際課」がそれですが、富裕層などの国際取引の監視については、調査部に加えてマルサが、その実力を発揮していく時代が、もうそこまで来ていると思います。最近、講談社現代新書から「国税局査察部24時」という優れた書が出ております。一見の価値ありますよ。

・・・税務署における国際調査体制はどのようになっているのですか。

小寺 比較的規模の大きい税務署には、国際税務専門官が配置され、調査部門に対する調査支援、自らの事案の調査及び情報取集などを日々行っています。東京国税局を例にとれば、たとえば京橋や麻布、渋谷税務署には、法人税部門などに海外取引を担当する統括官が積極的に国際調査を実施しています。

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