中小企業の経営・働き方改革をITでサポートする BIPA~「会社のお金の流れをシンプルに」マネーフォーワード 辻 庸介社長~
「お金を前へ。人生をもっと前へ。」をミッションに掲げ、ビジネス向けクラウドサービス「MFクラウドシリーズ」を提供するマネーフォワード株式会社(東京・港区,代表取締役社長CEO=辻庸介氏、以下「マネーフォワード」)は中小企業の生産性向上にどう貢献していくのか。その戦略と今後の展望について辻社長に聞いた。

―中小企業の生産性向上に貢献したいという思いで、ビジネス向けクラウドサービス「MFクラウドシリーズ」をリリースされました。どのようなイメージを描いているのか教えてください。
辻 まず、「中小企業のお金の流れの記録・管理をシンプルにしましょう」ということです。経済産業省の中小企業政策でも「生産性の向上」を支援の中核に据えていますが、これを実現するカギとなるのがITやクラウドといったテクノロジーです。極端な話ですが、IT導入によってこれまでは10人で行っていた業務を2人で行える世界もある、ということです。10人の内8人は営業などに時間を割くことができるようになるのです。
当社は「MFクラウド会計」「MFクラウド請求書」「MFクラウド給与」「MFクラウド経費」など、7種類のプロダクトを提供させていただいておりますが、これらを連携させることで、手入力で行っていた業務を自動化し、リアルタイムに、かつ、正確な数値としてデータ化することができます。数値を「見える化」することで改善のPDCAサイクルが早くなります。今までのように、過去の数字を見て経営判断をしているようでは、なかなか改善につながりません。バックオフィス業務が簡単に行える環境を整え、スピーディな経営を可能にすることがファーストステップです。

セカンドステップは、「中小企業のお金の流れをもっとよくしていきましょう」ということ。お金の流れを「見える化」して、必要なときに融資が受けられるような、「お金が流れる仕組みづくり」に貢献していきたいと思っています。中小企業の経営が「見える化」されて、いつでも必要な数字が確認できれば、より早く正確な意思決定が可能になります。その上で、「お金が必要なときに借りられるプラットフォームづくり」に取り組んでいるところです。スピーディな融資、与信の最適化など、会社の状況に応じたソリューションの提供を目指し、1月には資金調達サービス「MFクラウドファイナンス」をリリースいたしました。
サードステップは、そのデータを元に人工知能を介入させることで「どのような経営判断をするべきか」といった指標の提示を可能にすることです。「MFクラウドシリーズ」にログインすれば、何をすればいいか分かる」という世界感をイメージしています。
―企業にとっては、 “バックオフィスの自動化”はうれしいことですね。
辻 ほぼすべての銀行の入金情報を自動で取得でき、さらに、毎日自動で消込作業が行われるため、月末にまとめて行う必要がありません。作成した請求書の売掛金の仕訳も自動で会計ソフトに反映されるため、いちいち都度入力などが必要ありません。ERP※1的な仕組みを提供していくことによって、本業に注力していただく。入金・消込が楽になっていくイメージです。
※1 ERPとは・・・Enterprise Resource Planningの略であり、企業におけるヒト・モノ・カネの動きを管理し、コンピュータを利用して情報を統合化し、経営を支援するためのシステムのこと。
―先日、IBM社が税務サービスを手がけるH&R Block社と提携し、人工知能「IBM Watson」を活用した税務申告サービスを提供すると発表しました。御社では、現在、申告のフォローはしていませんが、今後、人工知能を使った税務申告サービス等も目指す範囲になってくるのでしょうか。
辻 「どこまで人工知能でできるのか」という点が、今後、クラウド会計ソフト業界の話の中心になってくるとは思います。現時点では、「申告」よりも「申告するまでの過程」にユーザーが抱えている課題が多いと思っているので、そちらの改善を中心に行っています。
たとえば、エクセルで経費精算を行っている人も多いと思いますが、「MFクラウド経費」を使えば、OCR機能を使ってレシートを自動で読み取り、手書きの領収書はオペレーターが入力を代行します。ほかにも、設定すればスマホひとつで経費の申請・承認が可能になりますから、移動時間などのすき間時間を使って経費精算を完了させることもできます。
当社のメンバーも使用していますが、今までは2時間かかっていた経費精算がおよそ20分で終わります。これだけでも随分と時間の短縮になりますよね。その分、営業や企画会議などの本業に注力していただけるということ。こうした「申告するまでの過程」にある「バックオフィスを効率的に動かしていくためにはどうすればいいか」といった課題にまずは応えていきたいと思っています。
―実際に、中小企業の手応えはいかがですか。
辻 需要はどんどん伸びていて、たくさんの企業にご利用いただいています。
当社の統計によると、およそ3分の1まで手入力を減らすことができています。単純におよそ3倍は生産性が高くなっているということですね。「仕事をいかに効率化させるか」ということですが、利用明細や入出金履歴の自動取得に加え、CSVでのデータインポートなどを活用することで、業務効率化の効果が現れてきているのだと思います。
たとえば法人の損益計算書(PL)に関連する仕訳では、手入力の割合が約3割になっています。手入力している作業のうち、約半分が債権債務の入力です。これについても、効率化できるよう、いろいろと取り組もうとしている段階です。
ほかにも、「MFクラウド給与」のユーザーに好評なのが、勤怠管理機能です。WEB打刻機能を使えば、勤怠を紙のタイムシートから集計するわずらわしい作業をなくすことができ、実際に、「ロスが減った」「ラクになった」といった声をいただいています。残業時間も打刻時間に応じて自動で計算しますから、勤怠管理が簡単になります。「MFクラウドシリーズ」のそれぞれのプロダクトでお客さまには非常に喜んでいただいています。