【BIPA】進化する技術を誰もが使いやすいITツールに~日本マイクロソフト佐藤亮太 業務執行役員 SMB営業統括本部統括本部長~
クラウドとデバイスを提供する日本マイクロソフトがこの数年、中小企業向けIT支援に力を入れている。日本マイクロソフトが提供するサービスは、中小企業をどのように変えていくのか。日本マイクロソフト株式会社(東京・港区, 代表取締役社長=平野拓也氏以下、「日本マイクロソフト」)の佐藤亮太 業務執行役員 SMB営業統括本部 統括本部長に話を聞いた。

―御社のプロダクトやサービスは、中小企業にどのような効果をもたらしますか。
佐藤 当社には、予算や人材の確保が難しい状況でも技術革新によって得られるメリットを、すべての人に享受してもらいたいという思いがあります。「Office 365」「Microsoft Azure」「Microsoft Dynamics 365」やクラウドサービスに代表されるテクノロジーの進化によって、これまでは大企業しか利用できなかった、高額で高度な機能を持ったシステムをすべての企業が初期投資なしで、それも低額で利用することが可能になりました。1975年のマイクロソフト創業当時から思い描いていたことが、今、ようやく実現しつつあるという思いでいます。
―具体的に中小企業に提供していくのはどのようなことですか。
佐藤 基本的には3つあります。1つ目は、「デジタルトランスフォーメーションの推進」。技術革新によって、安価にできることが格段に増えました。社内システムをデジタル化して、業務効率を上げていくこと。そして、社内の暗黙知のようなものをデジタル化し、事業そのものを大きく変えていきます。社内のIT システムを効率化するだけではなく、ビジネス自体をマイクロソフトのテクノロジーを使って大きく発展させる。そのお手伝いをさせていただきたいと思っています。
◆デジタルトランスフォーメーションを推進する4つの領域

佐藤 2つ目は「働き方改革の推進」です。お客様のデジタルトランスフォーメーションの推進における注力シナリオでもありますが、国全体で解決すべき課題だと認識しています。日本は人口減少が進むにも関わらず、世界的に見ても労働生産性が低く、長時間労働が世界一であり、この状況を改善する必要があります。当社の「働き方改革」に関する取り組みは、2016年の「働き方改革週間」では833法人から賛同を得、「働き方改革推進会社」として注目されています。
3つ目は、「パートナーシップ」です。クラウドサービスにより、中小企業とのパートナーシップを強化しながらビジネスを支援します。クラウドビジネスに特化したCloud Solution Providerという新たなライセンスプログラムにより、マイクロソフトのクラウドサービスの取り扱いがしやすくなりました。これによって、ビジネスの仕方も変わっていくと思います。現在、約1万社の企業がパートナーですが、自社の独自サービス融合による他社との差別化や既存顧客へのアップセル、クロスセルの機会創出、定期的で予測可能な収益確保といったメリットを感じていただけると思います。新しいビジネスのノウハウや商材の提供は業務効率を上げることも可能です。
―中小企業の経営革新は、日本経済が次のステップに進むカギだと思いますが、2014年に就任されてから変化していると感じますか?
佐藤 変わってきたように感じます。およそ1万社あるパートナー企業のうち、当社のクラウドサービスを再販していただいている企業は2500社ほどに上りますが、その何社かの経営トップとお話しをすると「本当に変わってきているな」という実感があります。ユーザーが求めていることは、「紙ベースのハンコ業務をなんとかしたい」「外出先でもメールを確認したい」「息子が病気で休んだから、今日は自宅で作業したい」、でも、「会社に貢献したい」。そういった社員に対して「会社として何をしてあげられるだろう」という経営者からの問い合わせが圧倒的に増えています。その要望に応えるひとつの答えが「Office 365」や「Microsoft Azure」「Microsoft Dynamics 365」 といったクラウドサービスです。「Office 365」の売上はこの2年間でおよそ3倍にまで伸びていますし、この勢いはさらに加速していくと思います。
限られた人材でビジネスを行っている中小企業経営者が抱えている課題には、共通項が多いと思います。
―業務効率化が喫緊の課題となっている中小企業にとっては、御社の「働き方改革」を体現する姿は響くものがあると思います。
佐藤 当社では、働き方改革の取り組みにおいて、テレワークという働き方を推進しています。当社の調査によると、テレワークの導入によって社員1人当たりの売上が26%上がりました(*)。今話題の残業時間の削減やペーパーレスなど、テレワークはビジネスの効率化、生産性向上を実現しています。今や当社の女性の離職率はとても低くなり、 私の組織でも子育てをしながら働いている社員が多くいます。結婚、出産、育児、介護といったライフステージの変化は誰にでも訪れます。当社では「今日は1日自宅で仕事をします」とメール1本送れば、私は「分かりました」と了承します。それだけのやり取りで柔軟に働くことができるのです。コアタイムすらなくしましたが、業務効率や売上げが下がったということはありません。
(*)2010年から2015年の推移、同社調査による。
―テレワークへの移行にあたって懸念材料はありませんでしたか。
佐藤 私も管理職なので、ビジネスの結果や部下のマネジメントなど、責任を持つ立場にあります。「自宅で仕事をしているふりをするんじゃないか…」など不安を挙げたらきりがありません。一歩踏み出すとしたら、やはり経営者です。部下を信頼して一歩踏み出した経営者に対して、メンバーがどう応えてくれるか、そこはお互いが正面から向き合っていくべきことだと思います。働き方の自由度を必要としている社員も多くいます。その働き方を壊さないためにも、社員全員で自分が会社に何を提供していくのかを自覚し、強い信頼関係の絆を築いていける経営体制や働き方のフレームワークを作っていくことが求められていると思います。
◆日本マイクロソフトが考える働き方改革
