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【BIPA】テクノロジーの力で店舗の手間や苦労を無くす~ トレタ 中村仁代表取締役~

―予約と顧客管理を効率化させるだけで生産性が向上するということですね。

中村 日本全体として労働生産性の低さは問題視されています。その多くを占めるのが、サービス業界であり、中でも飲食業界だと認識しています。これからの日本の環境を考えれば、生産性を向上しないかぎり飲食店の生き残りは難しくなっていくでしょう。とはいえ、そのためには一人ひとりの飲食店経営者の考え方が変わっていかなければなりません。経営者のマインドが「利益を出す」「店舗数を増やす」「売上げを上げる」イコール「人件費を圧縮する」といった、今までのパラダイムのままでは、いつまでも生産性は上がらないでしょう。人手不足、そしてブラック化に悩む飲食業界にとっての最重要課題はテクノロジーの力を使って「生産性を上げること」なのです。例えば、仕入れはファックスではなくタブレットやスマホから行う。これなら閉店後、ファックスを送っている間に終電に乗り遅れることもなくなります。いつでも簡単に発注できて、納品書もデジタルデータで送付されますので原価の管理も簡単になります。請求書は「月末締めてから10日後に請求書が届かないといくら仕入れたかわからない」ではなくて、その日にいくら仕入れたかを集計でき、月次決算もできるといった、ありとあらゆる業務の「やり方」がテクノロジーによって根本から変わりつつあるのです。そしてその中の一つが、「予約・顧客管理」です。これまでの人力を前提とした業務の組み立て方では成立しなくなる。それにいち早く気づいて取り組んだ店舗でないと生き残っていけないと思っています。

―飲食業界は「働き方改革」の流れに置いていかれているような気もします。

中村 現場には、「仕事のやり方を変えたくない」という人も結構います。彼らに「生産性上げない?」と言っても、「今までの仕事のやり方を変えるのは嫌だ」と、終わってしまうことが多いんです。でも、本当は生産性が上がると彼らもハッピーになることを分かってもらいたい。1日16時間働いて1カ月でやっと20万円の給料をもらっていた人が、生産性が倍になれば8時間の労働で20万円もらえるわけです。あるいは16時間働いたら40万円の給料が貰えるかもしれない。本当は経営者だけでなく現場もハッピーにする取り組みのはずなのに、目先の変化を嫌がって、現場からは「生産性を上げよう」という議論は出てきません。経営者から「売上を上げろ」と言われたら「わかりました、頑張ります!」「とにかく一生懸命お客さんのおもてなしをします」「おいしい料理を一生懸命作ります」と精神論になってしまう。一方で経営者にも、現場が身を粉にして働いて売上を伸ばしてくれるなら、わざわざ嫌がられてまで仕事のやり方を変えようとしなくてもいいだろうと考えがちな「甘え」があるのも事実です。結局のところ、このマイナスの悪循環を変えるには経営者自身が変わることしかないのです。

―啓蒙活動はどのようにされていますか?

中村 現場に入り、時間をかけて取り組むしかないと思っています。たとえば、当社では飲食業界向けに「FOODiT TOKYO」というカンファレンスを開催していますが、これは飲食店の経営者とIT関係者を集めて、テクノロジーによって飲食業界がこれからどう変わっていくかを徹底的に議論しています。こういった場に来ると、経営者の視線がひとつ上がるんです。「ああ、そういうことか」と分かってくれる人が出てきて、そんな風にある種の“気づき”を得て「うちもやってみるぞ」と試したら、間違いなく成果が出ます。なぜなら、それだけ無駄が多いからなんです。すると、成功体験を積んだ経営者は「本当にすごいから使ってみろ」と、周りに勧めてくれます。すると少しずつ経営者の中でクチコミが広がっていきます。それとともに、メディアからの情報発信も少しずつ進みます。さまざまな角度から常に経営者を刺激し続けて、少しずつ意識が変わっていくように先導していきたいと思っています。

FOODiT TOKYOの様子(提供:トレタ)

―BIPAに参画されて、どのようなシナジー効果を期待していますか?

中村 当社では、予約と顧客管理を行うツールを提供していますが、この業務だけに閉じてしまうのではなく、各種業務ツールと連携することが非常に重要だと思っています。当社が扱っている「顧客情報」は飲食店にとって最も重要な財産です。たとえば常連さん一人当たりにどれくらいの収益があって、新規顧客だとどれくらいの収益があるのか、○×さんが接客するとお客さんがどう変わるのか等、データを活用するとさまざまな分析が可能です。この顧客情報の価値を最大化させるためにはさまざまな仕組み・サービスとつながっていくことが必要です。裏側でシステム同士が連携し、お店が欲しいデータが必要なときに必要な形で提供される環境を作っていくことが理想だと思っています。そのデータを基に魅力的な店舗づくりをするために工夫する。居心地が良くて、サービスが良くて、美味しくて、素敵なお店の裏側は、実は高度に情報化されている。居心地の良さは科学的に分析され、お客様の価値を生むところに正しく投資されていくような世界を作ることが、当社の役割だと思っています。まさにBIPAの取り組みを通して、より一層の啓蒙活動を進めていきたいと思っています。BIPAのような同じ価値観や問題意識のもとに集まり、メッセージを発信していくことは価値がある取り組みだと思っています。無駄なコストをかけて、過酷な環境の中で従業員に必死に働かせて「利益が上がった」「うちは成長している」というのはサステナブルではありません。社会全体として、ひとりでも多くの経営者に意識を変えてもらう取り組みがとても重要だと思っています。


 

株式会社トレタ
代表取締役
中村 仁

パナソニック、外資系広告代理店を経て
2000年に西麻布で飲食店を開業。とんか
つ業態「豚組」、豚しゃぶ業態「豚組し
ゃぶ庵」などの繁盛店を世に送り出す一
方、ツイッターを活用した集客で2010年
「外食アワード」を受賞。2011年、料理
写真を共有するアプリ「ミイル」 をリ
リースしたのち、2013 年に(株)トレタを
設立。また企業・独立・転職・スキルアッ
プのための専門スクール Schooling-Pad
(スクーリング・パッド」など数々の飲食
店向けセミナーの講師も務める。著書に
『右向け左の経営術』『小さなお店の
ツイッター繁盛論』など。

■トレタ株式会社
https://toreta.in/jp/

著者: KaikeiZine編集部

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