国税OB税理士が監修。公認会計士・税理士・会計事務所・企業経理担当、税金・会計に関わる“会計人”がいま必要な情報をお届けします!

会計人ニュース

注目キーワード

【電卓持って世界一周!】お金儲けで世界を救う6つの方法(前編)〜レソトなう〜

シンガポールで活躍した現役女性会計士が、電卓片手に、世界各地のNGOで会計士ボランティアをしながら世界一周!旅の中での発見を、会計士目線で伝えていきます。第3弾は、アフリカ南部に位置する国レソトからお届け!まだまだ身近ではないソーシャルベンチャーでの仕事について解説します。

会計士の皆さん、正義の炎を心に宿していますか?

会計士には正義感が強い人が多いと私は思っている。

会計士はいわゆる「士業」であるし、その社会的ステータスに魅力を感じる方もいると思う。しかし、同じ士業の中で比較すると、給与面では弁護士や医師ほど高くはないし、映画やテレビドラマの題材になったりすることも少ない。

合コンの席でも、会計士の男性の名刺が女性の心をわしづかみにする可能性は、外資系金融マンや商社マンと比べると、低いのではなかろうか。おそらく、具体的に何をやっているのかイメージしづらい職業だからだろう。こちらとしても「会計士ってどういう仕事をしているんですか?」と聞かれると、説明しづらいというのが本音である。

同僚のフランス人会計士2人と、仕事帰りに飲みに行ったとき。さらっと隣の席の金髪女性とお近づきになっていた

「縁の下の力持ち」的な存在である会計士の仕事に、われわれはなぜ魅力を感じて働いているのか?それは「自分たちの仕事は、最終的に社会正義に貢献している」と、感じられるからだと思う。専門的な会計知識をもとに数字をアセスメントし、企業の正しい財務情報を公に提供する。その使命感にグッとくるのであろう。

正義に燃えるフィリピン人会計士たちとのカラオケ大会

私も例外ではなく昔から正義感の強い女で、人事考課で今後の希望を聞かれると、「贈収賄や粉飾決算をしていそうな会社の監査をして、社会悪を暴きたいです!」などと言っては、上司を困らせていた。

結局、一度も社会悪を暴くことなく、平和に4年間の監査法人生活を終えたのだが、今私がアフリカ大陸のレソトという小国に一人佇んでいるのも、結局その正義感みたいなものが大きな原因となっている気がする。

アフリカ・ライフのスタート! レソト上陸!

そもそも名前を聞いたことがない方が多いと思うのでご説明すると、アフリカ大陸南部に位置するレソトは、他国(南アフリカ)に周囲をぐるりと囲まれた小さな国である。

大きさは九州よりやや小さい

Map by 白地図ぬりぬり– Change of venue

標高が平均千メートル以上と高く、「天空の王国」とも呼ばれている。人口は約180万人で、4人に1人がAIDSキャリアといわれており、平均寿命は52歳と南アフリカの西部にあるシエラレオネ共和国に続く世界第2位の短さ。首都はマセルといい、私の前任のコロンビア人をして、

「ほとんどのものはマセルで手に入る。娯楽以外は」

と言わしめる、国全体がピースフルな雰囲気に包まれた場所だ。

町中はこのような感じである。

首都マセルののどかな風景

私はこの国にある「Kick4Life」というソーシャルベンチャーで、ファイナンスディレクターとして6ヵ月間働くことになった。

ソーシャルベンチャーっていったい何?

Kick4Lifeの話はおいおいするとして、今回はまずソーシャルベンチャーとは、一体どういった会社なのかをご説明したい。

ソーシャルベンチャーのコンセプト。それはズバリ、

「世の中を良くすることでお金を稼ぐ」

である。具体的には、

① 株式会社またはNGOとして利益をあげながら
② 存続可能なやり方で
③ 何らかの社会問題を解決する

起業やベンチャーが通常「どういったビジネスをすれば儲かるか」「この商品はどうすれば売れるか」というアイディアから始まるのに対し、ソーシャルベンチャーは「世の中にこういった問題がある」「どうすれば収益を得ながら解決できるか」という問題先行型のアプローチをすることが多い。

Kick4Lifeが経営しているレストランの内装。利益は地元の子どもたちのサッカー教育に使われる

また、国連やユニセフなどの国際機関が、問題解決に向けて「大きなアプローチ(各国の政府に児童教育プログラムの向上について働きかけるなど)」を行うのに対し、ソーシャルベンチャーは「小さなアプローチ(NYでバッグを作って売り、その利益でカンボジアに小学校を建設するなど)」を行うのが特徴だ。

では、ソーシャルベンチャーは、どのようにお金を稼ぎながら世の中を良くしているのだろうか。方法はさまざまあるが、まとめると以下の6つに集約される。

(1) 売って救う
(2) 買って救う
(3) 雇って救う
(4) 儲けて救う
(5) 投資して救う
(6) お金を貸して救う

では具体的な例を通して紹介していこう。

お金儲けで世界を救う(1)売って救う

可愛さ大爆発な友人の子どもと。ちなみに両親は東京で共働き。児童預かり問題が良くなっていくことを願う

最初のアプローチは「売って救う」である。企業が提供しているモノやサービス自体が社会問題を解決しているタイプ。「売上」を上げる自体で世の中に貢献するパターンだ。

たとえば、日本のNPO法人「フローレンス」では、子どもが病気で熱を出すと保育園に預かってもらえず、親が働けないという社会問題に着目し、病児保育のサービスを提供することをビジネスとした。

売上はサービスの利用を希望する親から月々の定額制で徴収し、いざ子どもが病気になったら、専門の担当員の自宅で預かってもらう仕組みだ。病気になりやすい子どもには高めの、なりにくり子どもには低めの料金を設定することで、公平さを図る「保険共済制」を採用している。

お金儲けで世界を救う(2)買って救う

第2のアプローチは「買って救う」。発展途上国で作られた原材料や製品を適正な価格で買い取ることにより、生産者側の生活向上を支える仕組みである。

たとえば、スターバックスのコーヒー豆の99%以上は、自社のフェアトレード・ガイドラインに準じた農家から調達されている。全世界で、コーヒーは石油に次いで取引量の多いコモディティであり、生産者は2500万人以上。そのうちの50%近くが小規模農家であり、買い手の選択肢のない貧しいコーヒー農家は、地元のバイヤーから豆を安く買い叩かれてしまうことがある。

こういった状況を打開すべく、スターバックスでは高品質な豆を栽培する農家から、マーケットを介さず直接購入する仕組みをとっている。生産者がコーヒー豆を販売することで公平な利益を得て、農園の運営を持続することができることを目指す仕組みだ。

シンガポール滞在時は、仕事、勉強、友人との歓談など、スタバで過ごすことが多かった

また自然派化粧品メーカーのザ・ボディショップは、材料調達に「コミュニティ・フェアトレード」という、独自のプログラムを設けている。

たとえば、同社のファンデーションに保湿剤として使用されている「マル―ラ・オイル」は、ナミビアで採れる。 ナミビアは失業率が非常に高い国で、特に女性が収入を得ることが難しい。

そこで、ザ・ボディショップは、ナミビアに生育しているマル―ラの実から採れるオイルに着目。地元の小さなコミュニティである女性協同組合と直接、持続性のある取引関係を築き、女性たちが定収入を得て、子どもの教育費、医療費、生活費などを支払うことができるよう、長期的なサポートをしている。

バングラデシュの農村にて。地元の女性経営者たちと一緒に

お金儲けで世界を救う(3)雇って救う

アンナプルナ連峰トレッキングに浮き立つ私。奥に見えるのは、神様が住むといわれる神聖な山ワイナピチュ

3番目のアプローチは「雇って救う」。社会的に立場の弱い人を従業員として雇うことで、彼らの経済的自立・キャリア構築を促す。

私が2015年にネパールへヒマラヤ登山に行った際、「3 Sisters Adventure Trekking」というローカル企業に出会った。

ネパールでは以前から、地元の男性ガイドによる女性の個人トレッカーへの性的嫌がらせ行為が多発していた(トレッキングは通常5日~2週間の長期。その間はガイドと1対1なので、何かあったとしても逃げ場がない)。その状況を打開するために、ネパール人3姉妹が立ち上げた団体が「3 Sisters Adventure Trekking」である。

同社の登山ガイドは、全員女性。地元の女性にヒマラヤ登山のトレッキング・ガイドとしての教育を授け、希望する人にガイドとして働いてもらっている。

ネパールには昔から「男性は外で働くもの。女性は家にいて家事や子守をするもの」という封建的な価値観があり、農村部の女性が職を得ることは難しいのだが、地元の女性もトレッキングガイドとしての安定した収入を得ることで、経済的自立を図ることができる。

私のガイドさんは20歳の女性。5日間の山登りでお世話になった

私のガイドさんは20歳の女性。5日間の山登りでお世話になった

私がソーシャルベンチャーへの就職を決め、アフリカ・ライフをスタートさせるきっかけとなった理由。それは会計士時代に、

「お金って、もっと世の中を公平に、より良くするような方向へ、流れないものか」

と思ったことがきっかけだ。

今社会にある金融システム(投資銀行、証券会社、ファンドなど)は、基本的に今お金を持っている人が、よりお金を増やすために生まれたシステム。それはそれで、社会には必要な機能であって、全く否定するつもりはない。

でも、富裕層がますます豊かになっていく一方で、貧しい人は日々一生懸命働いても、貧しいままだったりする。いや、職があればまだいい。生まれてから一度も教育を受ける機会に恵まれず、家事を手伝っていたら、いきなり親に売られて、売春宿で働き、病気になって死んでしまう女の子もいるのだ。

私は若いころから旅人だったので、途上国に行くたびに「貧しい人がいかに貧しいのか」ということを、外からの視点とはいえ、ずっと見てきた。そういう視点を持った人間が、企業の財務諸表を読んでいると、どうにも、

「この会社には、こんなにお金がある・・・この利益の0.01%でもお金のない場所や人に還元できたら・・・」

というパッションがふつふつと湧き出てきてしまって、抑えられなかったのだ(笑)。

われわれは「ビジネスとお金が正義」の資本主義社会に生きている。ならばその正義の力をもって、もっと人のために役立つことが、ビジネスにはできるような気がしているのだ。

ソーシャルベンチャーは、市場としての規模は小さいけれど、今後その「ビジネス」と「社会正義」の橋渡しをする存在になっていくのではないかと思っている。

山に囲まれたレソトの美しい朝焼け

さて、次回もここレソトから、「お金儲けで世界を救う6つの方法(後編)」をお送りしたく思う。

著者: 石井友里

わんぱく会計士

早稲田大学教育学部卒。米国公認会計士。日本の不動産投資法人等で経理を4年経験した後、単身シンガポールへ。監査法人で法定監査を4年、事業会社で財務部長を1年経験した後、唐突に仕事を辞めて、会計士ボランティアをしながら世界を一周することに。昔から勢いで行動することには定評のある、元気な日本人女性。

ページ先頭へ