【電卓持って世界一周!】お金儲けで世界を救う6つの方法(後編)〜レソトなう〜
シンガポールで活躍した現役女性会計士が、電卓片手に、世界各地のNGOで会計士ボランティアをしながら世界一周! 旅の中での発見を、会計士目線で伝えていきます。今回もアフリカ南部に位置する国レソトから、現地での生活の様子とともにソーシャルベンチャーでの仕事について解説します。
アフリカで寒さに震えるなう
こんにちは、ゆりです! 日本はまだまだ残暑が厳しい時期であろう。皆さん夏バテなどされていないだろうか? わんぱく会計士の私はというと、アフリカのレソトにて、毎日元気だが寒さに震えている。
日本の友人に「アフリカに冬なんてあるんだ! 常夏だと思ってた!」と言われることがあるが、冗談はよしこさんである。アフリカの中で常夏なのは、赤道直下のケニアとコンゴくらい。ほとんどの国は、それより北か南に位置しているので、日本と同じく冬はある。さらにアフリカの中で最も南極に近い、南アフリカの冬はかなり寒い。
しかし不思議なのは、レソトの緯度と寒さの相関関係である。レソトの首都マセルは南緯-29度。北半球の日本で北緯29度の場所というと、奄美大島(28.3度)あたりだ。レソトの冬も奄美大島くらい暖かくてもよさそうなものだが、それよりも絶対に寒い。
夜中になると気温は3~4度まで下がる。1月の東京くらいの冷え込みだ。今朝は車のフロントガラスにみっしりと霜が降りてしまっていて、運転できなかった。

寒さは厳しいが、その分夜空の星は美しい。仕事が終わると毎日、天の川と南十字星を見ながら、徒歩15分の道のりを歩いて帰宅している。マセルは1年のうち300日が晴天という、天気のよさだけはどこにも負けない場所なので、いつも満天の星空だ。東京都新宿区出身の私には、とても贅沢な光景である。
アフリカ途上国の人と働くコツ
さて、アフリカの人と一緒に働くということが一体どんな感じなのか、イメージが湧きづらいかと思うので、説明してみよう。
アフリカに来る前、面接で「レソトの人は皆のんびりしてるから、速いスピードでの働き方に慣れていると、かなりストレスを感じるよ」と、先方に3回くらい念を押されていた。いったいどんなにのんびりしているのかと、恐恐としながらレソト行きの飛行機に乗ったのを覚えている。
でも実際に働いてみたら・・・・
思ったよりは、ずっと大丈夫だった(笑)。
確かにのんびりとはしているが、経験したことのないスローさでもない。東南アジアでたとえるなら、ベトナムやラオス、ミャンマーあたりの人と一緒に働くイメージか。動きはゆっくりだが、皆人がいいし、正直なので、あまりストレスは感じない。
とはいえ、途上国の人にオンタイムで仕事をしてほしい時もあるだろう。そういう時どうするか? そのテクニックをここで披露したいと思う。
①待たない
私はアフリカに来て以来、生活のすべてにおいて「ギリギリを狙う」のを完全に捨てた。仕事で誰かに何かして欲しいときは、3~5日前から頼む。カフェの勘定は、店を出たい時刻の15分前くらいに頼むのが鉄則だ。
自分が何も悪くなくても、物事を遅滞させる要素が、途上国にはいくらでも存在する。
たとえば、昼間の停電などは、何の前触れもなく突然やってくる。時には数時間くらい続くことがあるのだが、その間はパソコンも立ち上がらなければ、インターネットも不通である。データ入力もできない。メールも打てない。
「21世紀は、電気がないと、何の仕事もできない世の中になってしまったんだな・・・」と、物言わぬ黒い箱になってしまったパソコンを撫でるしかない。
だから何事も早め早め、先手必勝なのだ。

②遠慮しない
仕事を頼んだ後はどうするか? 「あれやってくれた?」と、リマインドする。しかも毎日である。日本だったら「そんなことして鬱陶しいと思われたら」と、遠慮の気持ちが働くところだが、ここはアフリカ。そのような気遣いは不要である。相手も気にしない。
③怒らない
リマインドする際は笑顔でフレンドリーに! 怒ってはいけない。厳しい態度をとったところで、仕事の仕上がりのタイミングは変わらない。むしろ心証が悪くなる分、こちらが損である。ただし態度に緩急をつけるのはありだ。
私は締め切りの日に向けて、クレッシェンド的にテンションをあげていく。
「あと2日しかない! マジで頼むよー!」
「絶対今日の午後までにー!」
といった風に。
困っていなくても「困っているふり」の演技はできるが、本当に窮地に立っていると演技はできない。だから早め早めに頼み、自分の心の安寧を保った状態で交渉に入ることが、肝要である。
NGOで働くのは楽しい!
そんなこんなで、私がレソトの「Kick4Life」というNGOで働き始めてから早2カ月強が過ぎた。財務ディレクターとしての仕事にも慣れ、毎日が楽しい。正直いって今まで10年間働いてきた会社の中で、ここでの仕事が一番楽しい。何たって従業員もマネジメントも性格がいい。
私は新卒の頃、会社の先輩から「上司や同僚は選べないから、嫌だなと思う人とも協調して、仕事ができるようにならないとね」という言葉をもらった。この10年間、気に食わない上司や同僚がいても、時に我慢し、時に文句を言いながら、共に働いてきた。
でも、今回の転職で気が付いた。職場や業界を正しく選べば、同僚のタイプも結構選べるのだということに。使い切れないくらいの給与は必要ない。気が合う同僚と、やりがいのある仕事をして、毎日楽しく働きたい。私にとって、NGOは天職である。

お金儲けで世界を救う(4)儲けて救う
さて、前回の【電卓持って世界一周!】お金儲けで世界を救う6つの方法(前編)〜レソトなう〜に引き続き、ソーシャルベンチャーがどのようなアプローチを用いて、お金を稼ぎながら世の中を改善しているか紹介していこう。
4番目に紹介するアプローチは「儲けて救う」。本業は社会貢献とは全く関係なくて構わない。そこから派生した「利益」で貢献する。日本でも企業のCSR(Corporate Social Responsibility = 企業的社会貢献)という言葉が一般的になって久しいが、こういった活動も企業の「儲けて救う」の一環である。
利益の一部を障害者教育の財団などに寄付している企業もあれば、従業員が街の清掃活動や植林などを手伝うことでCRSとする企業もある。
私が働くKick4Lifeが「儲けて救う」タイプの組織なので、詳しく紹介していこう。
Kick4LifeはPeterとStevenという若いイギリス人の兄弟2人が始めたNGOで、レソトの地元の子どもたちにサッカーのトレーニングやライフスキルの教育を行うことにより、彼らが将来スポーツ特待生として大学に行けるよう、サポートを行っている団体である。
サッカーの活動費がどこから来るかというと、同じ会社が経営している、レストランとホテルの収益からである。Kick4Lifeのオフィス、レストラン、ホテルはひとつの建物の中で隣り合わせになっていて、その横にはサッカーグラウンドが併設されており、どこにいてもボールを蹴っている人が見える。
朝の7時ごろ、Kick4Lifeのレストランにコーヒーを飲みに行くと、吐く息も凍えるような寒さの中、9歳くらいの子どもたちが真剣にウォーミングアップをしている。そのような光景を見ていると、自分の仕事が直接誰かの未来につながっているのを実感できて、胸が熱くなる。

日本での「儲けて救う」の一例としては、「Table For Two」というNPOがある。こちらは元マッキンゼー・アンド・カンパニーの小暮真久さんが立ち上げた団体で、Table for Twoが監修した定食を食べると、1食につき20円の寄付金が、途上国の学校給食の費用にあてられる。20円は途上国の給食1食分の値段なので、日本人が定食を1食食べると、途上国の子どもが給食を1食食べられるという仕組みだ。なので“Table For Two”。