国税通則法上、「隠蔽・仮装」行為による過少申告や期限後申告等については重加算税が課されますが、ここにいう「隠蔽」という概念は、「故意に基づくもの」と理解されています。すなわち、「意図しない隠蔽」という概念はそこには存在しないと解されているのです。他方、新聞等の報道では、「意図的に隠蔽」などといった表現が散見されますが、果たして、租税法の解釈論で通用している用語(概念)の理解の仕方は一般的といえるのでしょうか。

「意図的に」隠蔽された自衛隊の日報

南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)に係る日報を巡り、当初陸上自衛隊が破棄したとしていながら実は保管がなされていたことについて、防衛省による隠蔽の有無、および稲田朋美防衛相(当時)の関与の有無等が世間の注目を集めました。報道によると、特別防衛監察の結果では、かかる日報の情報公開請求に対して、陸上自衛隊の中央即応集団司令部の幹部が当初から意図的な隠蔽を指示していたことが判明したというのです(日本経済新聞平成29年7月28日夕刊)。しかし、結論としては、稲田防衛相にデータ保管に関する報告があった可能性が認められるとしながらも、非公表方針を了承した事実はないと判断されたようです。

この一連の騒動の発端となった日報について、「意図的に」隠蔽したことが問題となっている点に、若干の違和感を覚えます。それは単なる表現の問題なのかもしれませんが、この問題が仮に、国税通則法上の「隠蔽」であるとすれば、この点は極めて重要な論点となり得ます。なぜなら、国税通則法上、「隠蔽」の有無は、納税者に重加算税が課されるか否かという問題に直結する非常に重要な判断基準であるためです。これは、一般的な用語の使い方と租税法上のそれとで、どれほど用語の意義が異なるのかという関心事項といってもよいでしょう。