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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:税務当局による国外情報の入手⑤~国外送金等調書

財産の国を跨がる移動や保有を網羅的に把握するため、法定調書制度が年々拡充されています。現在、国外財産の把握等に活用されている調書として、「国外送金等調書」、「国外証券移管等調書」及び「国外財産調書」が挙げられます。今回は「国外送金等調書」について解説します。「国外送金等調書」は海外取引を利用した不正計算を把握するための最大の武器として活用されています。

1 制度の趣旨

外国為替法の改正により、国境を越えた資金のやり取りが自由になるにしたがい、海外に財産を移したり、脱税を目的として海外取引を悪用したりすることが問題視されました。

そこで、所得税・法人税・相続税その他の内国税の適正な確保を図ることを目的として、国外送金等調書制度が平成 10(1998)年4月に施行され、国外送金及び国外からの送金等の受領が、一定額を超えた場合に、取り扱った金融機関に「国外送金等調書」の提出が義務化されました。

2 国外送金等調書とは

国外送金等調書は、国外への送金又は国外から送金を受領した金額が100万円を超えた場合に、金融機関が税務署に提出する法定調書をいいます。
国外送金等調書には、

① 送金者又は受領者の氏名・名称
② 国外送金等年月日
③ 国外の銀行等の営業所(支店)の名称
④ 相手国
⑤ 本人口座の種類、口座番号
⑥ 国外送金等の金額
⑦ 送金原因

などが記入されるため、国税当局にとっては、海外取引に係る資金の流れや国外財産を把握するための重要な情報源となっています。

《国外送金等調書の流れ》

《国外送金等調書のイメージ》

国税当局にとっての目の付け所としては、たとえば

■個人の口座へ海外の企業から送金がある→その金額は収入として申告されているかを検討します。特にその個人が法人の代表者となっている場合などは、法人の収入として計上すべきもの(例えばコミッション収入)を個人の口座に入金させることにより法人の収入から除外しているのではないかと疑われることもあります。

■日本から海外にある本人名義の口座へ多額の送金をしている→当該預金の運用益を申告しているか、国外財産調書に記載しているか、等を検討します。また、将来相続が発生した場合には、当該預金が相続財産として申告されているかどうかもチェックされます。

■タックスヘイブン国へ多額の送金がある→タックスヘイブン国に会社を設立して租税回避をしているのではないか、タックスヘイブン対策税制の対象になるのではないか、等について検討します。

■海外への送金目的が「使用料」など、源泉徴収が必要なものである→源泉所得税の納付事績を確認し、著作権、工業所有権の使用料や機械等のリース料の支払いなどについて源泉徴収が適切に行われているか検討します。

■海外の家族名義の口座に送金している→贈与税の対象とならないか検討します。

3 国外送金等調書の提出枚数の推移

国税庁が発表した国外送金等調書の提出枚数の推移は以下の通りであり、年々増加傾向にあります。資金の国境を越えた移動がいかに盛んに行われているかが分かります。

《国外送金等調書の提出枚数の推移》

(出典:国際戦略トータルプラン 国税庁)

4 税務署からの「国外送金等に関するお尋ね」

「国外送金等調書」に基づいて国外送受金の取引内容を確認するため、「国外送金等に関するお尋ね」といった照会書面が送付される場合があります。これは申告漏れを把握するために税務署が発行する質問状です。

このお尋ね文書は強制力のない書面なので、回答しなくても罰則はありません。しかし、回答をしないと税務署から「問題があるのではないか」と疑われ、税務調査に発展する可能性があります。正確かつ正直に回答することが肝要です。

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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