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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:エストニアから学ぶべきこと① エストニアでは税理士は消滅?

エストニアでは、「法律の簡素化」「行政のIT化」「付加価値人材の育成」を3本柱とした改革がなされました。税制も極めてシンプルなため、税理士は消滅したと言われています。

■エストニアはどんな国か

《エストニアの一般データ》

人口:約130万人
面積:4万5千㎢ (九州と沖縄の面積とほぼ同じ)
首都:タリン
経済成長率:1.6%(2016年)

エストニアは1991年にソ連から独立した際、「インフラなし」「資本なし」「人口減少」「酷い過疎化」「資源なし」という非常に厳しい状況の中、「法律の単純化」「行政のIT化」「付加価値人材の教育(子供IT教育、北欧型教育)」を中心に改革がなされました。その結果、世界最先端電子政府の開発・運営に成功すると共に、今日では世界でも屈指のIT立国・スタートアップ大国へと成長を遂げました。

その一方、士業は魅力的な仕事でなくなってしまったため、有能な人材が目指す職業ではなくなってしまったようです。

■エストニアの租税システム

エストニアの租税の特徴として、「シンプルなシステム」「少ない例外」「広範な課税ベース」「低い税率」が挙げられます。税率も以下の通り、原則として単一税率が採用されています。

個人所得税:20%
法人税:配当された利益に対して20%
付加価値税(消費税):標準税率20%、軽減税率9%
社会保障税:33%

個人所得税では、日本のような累進課税という制度はなく、所得にかかわらず一律20%のフラットな税率が採用されています。

法人税は、法人が利益を内部留保している限り課税されず、配当した段階で20%が課税されるというユニークなシステムとなっています。利益配当しなければ課税されないため、利益を減らすという節税策はあまり意味がありません。

付加価値税(日本でいう消費税)は20%(標準税率)と9%(軽減税率)の2段階となっており、日本に比べるとかなり高率です。軽減税率が適用されるものは書籍、雑誌、医薬品、宿泊施設の利用料などに限定されており、食料品や衣料品などの生活必需品に対しても標準税率が適用されます。1万6千ユーロ(2018年以降は4万ユーロ)を超える課税収入がある者が消費税の納税義務者となります。

相続税や贈与税はありません。

国際課税の分野では、日本でいう「タックスヘイブン対策税制」や「過少資本税制」に相当する制度はないようです。

■電子申告の利用率はなんと95%!

エストニアでは、電子申告割合は非常に高い水準となっています。所得税については電子申告の義務はないものの、電子申告であれば還付を5営業日以内に受けられるというメリットがあります。法人税については既に電子申告の利用が義務化されています。個人を含めた電子申告の利用率は約95%となっています。

日本の電子申告の利用率とは圧倒的な差があります。

■エストニアでは税理士は消滅?

このようにエストニアの税制は極めてシンプルであるため、資格が必要な税理士や公認会計士は不要となり、それらの職業は消滅したと言われています。

厳密にはすべての業務が消滅したわけではなく、付加価値の高い仕事が少なくなり、儲からない仕事になってしまい、魅力的ではなくなったというのが現状でしょう。
会計事務所の業務としては、日々の記帳業務、給与計算、銀行口座の開設サポートなどが中心のようです。

日本では税制が複雑なため、税理士が不要になることはないでしょうが、記帳業務などの単純作業はIT化の進展により需要は減少すると思われます。今後は付加価値の高い業務に移行していくことが必要となるでしょう。

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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