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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:エストニアから学ぶべきこと② 電子政府の導入により手続きが簡素化!

エストニアでは電子政府の導入により多くの行政手続きが電子化され、利便性が大きく向上しました。エストニアでは日本にはない独特のシステムが数多く見られます。今回はそのいくつかを紹介します。

■エストニア電子政府(e-Estonia)

エストニアでは、電子政府の導入により、多くの行政手続きが電子化され、ビジネスのオペレーションが飛躍的に早くなっています。法人登記では、電子化により所用時間が510分から30分へと大幅に短縮されました。

オンライン率は所得税申告では95%、銀行取引では99%に達しています。

Source) e-Estonia, eSparQNow.com

医療部門でもクラウド化が進んでおり、「電子カルテ」や「電子処方箋システム」が導入されています。医者はクラウド上の電子カルテに書き込みを行うことにより診察記録が登録され、患者本人や他の医療関係者がアクセスすることができます。患者は情報の非公開を選択することも可能です。また、「電子処方箋システム」では、病院と薬局がオンラインで接続されており、患者はIDカードを提示すれば処方薬を入手することができます。日本のように印刷された処方箋を持ち歩く必要はありません。

また、エストニアではインターネットを使って選挙の投票を行うという「電子投票」も可能となっています。本人確認、投票の電子署名をIDカードの電子署名機能を利用して行うようです。

エストニアの場合、「冬がつらい」といった気候もオンライン化を後押ししたと言われています。冬の寒さが厳しいエストニアでは、外出せずにインターネットで手続きできる利便性が魅力的であったため、日本のマイナンバー制度導入時のような国民からの抵抗はあまりなかったそうです。

■IDカードの保有率は98%

エストニアでは、国民にIDが割り振られており、15歳以上の国民はIDカードの取得が義務付けられています。保有率は98%となっています。

このIDカードを使うことにより、各種行政手続きが簡単に行えます。

このカード1枚で身分証明書、運転免許証、健康保険証、公共交通機関のチケットとしての役割を果たすほか、インターネットバンキング、ネットショッピングなどの民間サービスでも広く利用されています。

日本のマイナンバー制度では、個人情報のセキュリティがとかく強調され、かえって手続きが煩雑となり使い勝手の良いシステムとはいえません。マイナンバーを使うことによる利便性をもっと向上させる必要があると思われます。

■便利なポータルサイト

エストニアの電子政府では、さまざまな行政サービスをポータルサイト上でワンストップで提供しています。国のサービスのなんと99%がオンライで提供されています。

ポータルサイトでは、自分の情報の閲覧が可能であり、生年月日、住所、学歴、勤務先、所有不動産、医療情報、運転免許等の一覧が可能となっています。自己の情報を閲覧した者を確認することも可能であり、不正アクセスに対しては厳しい罰則があります。

逆にオンラインでできないものは、結婚、離婚、不動産登記だそうです。

■e-residencyとは

e-residencyとは、非居住者向けのeサービスをいいます。非居住者向けのIDカードを入手すれば電子納税などの非居住者向けサービスが利用できます。また、IDカードがあればオンラインで会社を設立することもできます。

e-residencyができてから、日本人がエストニアで会社を設立するケースが増えています。業種としてはコンサルティング系やウェブ系の企業が多いようです。

■エストニアでの会社設立

エストニアの法人の形態としては、以下の5種類があります。

・Private limited company(有限会社)
・Public limited company(株式会社)
・General partnership(ジェネラル・パートナーシップ)
・Limited partnership(リミテッド・パートナーシップ)
・Commercial association(商業協会)

これらの中では、有限会社が最も多く利用されています。
エストニアの法人設立の最低資本金は2,500ユーロです。資本金払い込みのタイミングを会社設立時に選択することができるため、資本金の払い込みなしで設立することが可能です。資本金の払い込みなしで法人登記するケースが非常に多いといわれています。

 


【視察スポット】
e-Government Academy

電子政府サービスに関するコンサルティングを提供するNPO。世界各国へコンサルティングを提供しています。エストニアの電子政府が成功したことで、各国からの問い合わせが殺到したために設立されました。各国からコンサルティングフィーが入るため、億単位のビジネスになっているようです。

e-Estonia Showroom
エストニア電子政府ショールーム。エストニア政府が視察者向けに世界最先端のエストニア電子政府を解説しています。毎日世界中から多数の視察者が訪れています。日本のマイナンバー制度はエストニアをモチーフにしています。

日本からも政府税制調査会の中里実会長らが視察に訪れています。

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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