海外観光客向けの免税店を運営する法人が、消費税の免税制度を悪用して約70億円の不正還付を受けていたとの報道がありました。近年、こうした消費税の不正還付は増加しており、消費税率10%への引き上げが予定される中、国税当局も監視を強めています。
■消費税70億円不正還付申告 秋葉原の免税店(平成29年8月10日 読売新聞)

東京・秋葉原の免税店運営会社であるT社が、消費税の免税制度を悪用し、訪日外国人旅行者に金製品を売ったように装っていたとして、東京国税局から2017年2月までの約1年間に消費税約70億円を不正に還付申告していたと指摘された。国税局の調査では、T社の販売に実態はなく、仕入先の金加工会社のM社に金製品を買い戻してもらい、再び同じ商品を仕入れるという循環取引を繰り返していたとみられる。重加算税を含め約100億円を追徴課税した模様。T社は処分を不服として国税不服審判所に審査請求している。
関係者によると、T社は2017年2月までの約1年間に、M社から仕入れた金製の工芸品を中国や韓国の訪日客に計約900億円で販売したとして、仕入れにかかった消費税約70億円の還付を申告したという。
税務調査の結果、ツアーの行程で富士山にいたはずの日時に秋葉原で金製品を購入していた訪日外国人がいたことなどが判明したようだ。また、税関の記録からも大半の製品が国外に出ていないことが確認されたという。
T社は、「対面でパスポートを確認しており販売は適正。商品が循環していたとしても、会社は関わっていない」と説明している。この点は今後の審査請求の行方に注目したい。

■消費税の「輸出免税制度」とは
事業者が国内において課税資産の譲渡等を行った場合に、それが「輸出取引等」に該当する場合には消費税が免除される。しかし、その仕入れ等に係る消費税額は仕入税額控除をすることができるため、輸出専門事業者の場合は、結果として仕入れにかかった消費税の還付を受けることができる。
【輸出物品販売場における輸出物品の譲渡に係る免税】
輸出物品販売場(免税ショップ)を経営する事業者が、外国人旅行者などの非居住者に対して物品(輸出携行品)を販売する場合には、消費税が免除される。一方、免税ショップの事業者が国内で仕入れた商品には消費税分が上乗せされているため、事業者が申告することにより仕入れ時に支払った消費税が還付されることになる。
輸出物品販売場とは、事業者が経営する販売場で、非居住者に対し物品を免税で販売することできるものとして、その事業者の納税地の所轄税務署長の許可を受けた販売場をいう。また、輸出物品販売場において非居住者に対し免税で販売できるのは、通常生活の用に供する物品で、輸出するために一定の方法により購入されるものに限られる。
■後を絶たない消費税の不正還付
架空の輸出売上を計上することにより消費税の還付金を受け取る手口は、消費税不正還付のオーソドックスなやり方である。本年6月に国税庁が発表した平成28年度の査察の実績では、消費税の告発事案は23件であり、うち11件が不正還付に関する事案であった。消費税の不正還付は国庫金の詐欺ともいえる悪質性の高い行為であることから、今後も積極的に取り組むとしている。