国税OB税理士が監修。公認会計士・税理士・会計事務所・企業経理担当、税金・会計に関わる“会計人”がいま必要な情報をお届けします!

会計人ニュース

注目キーワード

  • KaikeiZine
  • 税金・会計ニュース
  • “税界”の裏話 竹中工務店 従業員着服で重加算税約5千万円  従業員の行為も法人の行為とみなせる

“税界”の裏話 竹中工務店 従業員着服で重加算税約5千万円  従業員の行為も法人の行為とみなせる

今年4月、大手ゼネコンの竹中工務店(大阪・大阪市)が大阪国税局の税務調査を受け、2015年12月期までの5年間に約1億5千万円の申告漏れを指摘された。このうち約4600万円は「隠蔽又は仮装」を伴う所得隠しと認定され、重加算税を含む追徴税額(更正処分)は約4900万円だった。税務上注目したいのが、従業員が行った不正行為も法人の行為と見なせるのかということだ。

今年4月、大手ゼネコンの竹中工務店が大阪国税局の税務調査を受け、2015年12月期までの5年間で約1億5千万円の申告漏れを指摘されたとの新聞報道があった。同社は、重加算税を含む追徴税額として約4900万円の更正処分を受け、全額納税している。

この申告漏れは、元社員の男性が在籍当時、ビル工事を請け負った協力企業に工事代金を水増し請求させ、水増し分の計約4600万円を私的に流用していたもの。この水増し分について国税局は、法人税の重加算税の賦課要件である「隠蔽又は仮装」に当たるとして重加算税を課した。同社は、元社員の男性を懲戒解雇しているが、大阪国税局は、実態として協力企業に支払われていないため、経費として求められないと判断。同社としては、ミスや不正を見抜けなかったことの責任もあることから、重加算税の賦課決定を受け入れ追徴税額を全額納付している。

この申告漏れ事案で税の専門家の間で関心が集まっているのが、従業員の不正行為による申告漏れも、重加算税の対象になるのかということ。基本的に役員に関しては、会社の行為と同一視することが多いが、行為の主体が従業員となると、会社の行為と同一視できるのか議論の分かれるためだ。

国税OB税理士の話では「従業員であっても会社の主要な業務を任され、長期にわたる不正や多額な不正など会社が通常注意しておけば容易に発見できる不正行為(管理監督責任)については、法人の行為と同視することができると判断することがある」と指摘する。裁判例や裁決でもこうした事例はいくつも見受けられる。

ただ一方で、課税当局においては、調査先企業の管理監督責任の不履行及び、事実関係などを証拠化する必要がある。たとえば、不正を犯した従業員に業務をどこまで任せていたのか、会社としてチェックはどのようにしていたかなどだ。とくに、重加算税を賦課する場合、課税当局では必ず「質問応答記録書」を作成するが、その中の記載事項として「重要な事務を担当していたこと」「この従業員に業務を任せきりにしていたこと」「法人が何らかの管理・監督をしないまま放置していたこと」について証拠化しておく。

現実的には、税務調査シーンにおいて従業員の行為も会社の行為として認定することは極めて難しいとされる。この竹中工務店のケースでも、実際にこの従業員がどこまで重要な業務に関与していたのか、課税当局として証拠化するのは用意ではなかったはずだ。実際の調査の現場では、表面化されていない課税当局と竹中工務店との駆け引きがあったものと推察される。

著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は租税研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャーとしても活動。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/
■KaikeiZine
https://kaikeizine.jp/

ページ先頭へ