婚姻の成立要件は何でしょうか?我が国は届出婚主義を採用していますから、戸籍法の定めるところに従って適法に届けられた場合にのみ法律婚を認めています。所得税法や相続税法にいう「配偶者」は民法上の法律婚を前提とした概念であると解されていますので、届出の有無が重要になるわけです。しかし、節税のためだけの目的で婚姻の届出がなされた場合にはどうでしょうか?

内縁配偶者と配偶者控除

課税実務上、内縁配偶者に対する配偶者控除の適用は認められていません(以下、所得税法においては配偶者特別控除も同様)。この点、所得税法上の配偶者控除の適用の有無が争点となった最高裁平成9年9月9日第三小法廷判決(訟月44巻6号1009頁)は、「所得税法83条及び83条の2にいう『配偶者』は、納税義務者と法律上の婚姻関係にある者に限られると解するのが相当」と論じています。我が国は届出婚主義を採用していることから、法律婚というためには、適法な婚姻届出がなされている必要がありますが、適法な婚姻の届出という要件を満たした配偶者のみを所得税法上の「配偶者」とし、同控除が適用されるための一つの法的基準としているわけです。そして、このような婚姻届出を配偶者該当性の要件の一つとする考え方は、相続税法上の配偶者控除においても同様に考えることができます。

したがって、配偶者控除の対象となる配偶者とは、適法な婚姻届出のある配偶者のうち、所得税法上あるいは相続税法上の一定の要件を満たした者と解されることになるのですが、その逆はどうでしょうか。すなわち、配偶者として適法な届出さえあれば、配偶者控除の対象となると考えてよいのかという問題です。