「ふるさと納税」をすれば、豪華な返礼品がもらえてこんなにお得!---年度末には、ふるさと納税を扱うサイトのCMが大変多く放送されていました。サイト経由でふるさと納税を行えば、12月31日の夜ギリギリまで同制度を活用できるということもあり、駆け込み需要ならぬ「駆け込み寄附」も多かったのではないかと思われます。さて、制度としてすっかり定着しつつあるふるさと納税ですが、批判的な意見を耳にすることもしばしばです。今回は「ふるさと納税」について考えてみましょう。
ふるさと納税の3つの意義
ふるさと納税制度による寄附金控除制度は人気のある施策であるといえましょう。
この、ふるさと納税制度にはいかなる意味があるのでしょうか。総務省より、平成19年10月に公開された「ふるさと納税研究会報告書」では、同制度には3つの意義があるとされています。
第一に「納税者の選択」です。
税は国民の生活を支える行政サービスの原資であり、公正かつ厳格な税制のもとで、国民の義務として負担されています。したがって、一度税制が決まれば国や地方自治体によって課税権に基づいて強制的に税が徴収されることになります。これが近代社会での伝統的な税制ですが、これに対して、ふるさと納税制度では、納税分の一部につき、自分の意志で納税対象を選択することができます。自分で納税先を選択すること、そしてその使途を選択することで、改めて税の意味と意義を考え、納税の大切さを自覚する貴重な機会になると考えられているわけです。
第二に「ふるさとの大切さ」です。
自分を育んでくれた地方はかけがえのない存在といえましょう。現在の我が国では、人材を育てること、食料の提供、森林や河川といった自然の維持など、地方の果たす役割は非常に大きく、地方なくして都会の繁栄はありません。ふるさと納税を通じて多くの人が「ふるさと」へと思いを馳せて、「ふるさと」の恩に感謝する貴重な機会になると考えられます。また、出生地や過去の居住地に限らず、自分が応援したい地域にふるさと納税を行うことも可能であり、豊かで環境にやさしい地方を育てることにも繋がり得ます。
第三は、「自治意識の進化」です。
各自治体は、ふるさと納税制度によって「納税」を受けるべく、自らが持つ魅力を存分にアピールする必要があります。「納税」された税金がどのように使用され、その成果としてどのようなものが期待されるのかなどの情報提供の活発化、ひいては自治体間競争が刺激されましょう。この切磋琢磨は、自治体とその住民に、「納税」してもらうに相応しい地域のあり方を改めて考えてもらう貴重な機会となり、自治意識を進化させることができると考えられるのです。
現住所地へのふるさと納税
もっとも、ふるさと納税制度には、いくつかの問題点が浮上します。
上記第二にいうように、ふるさと納税制度の重要な意義の一つに「ふるさとの大切さ」を挙げることができますが、現住所がふるさとである人にこの制度の適用を認めるべきかという問題があります。
生まれ育った地域に定着して、長くその地で生活を続けている人はたくさんいます。その人たちも、自らの住むふるさとを大切に思う気持ちに変わりはありません。そうであるとすれば、自分の現住所地を所轄する自治体に「納税」することもふるさと納税制度の趣旨に合致するように思われます。
しかしながら、それはそもそもの本来的な納税であって、ふるさと納税の本質である寄附という考え方には馴染みません。ふるさと納税は、名称こそ「納税」ですが、その本質は「寄附」であることを忘れてはなりません。
本来納めるべき所轄自治体に納税することを、「ふるさと」への寄附と位置付けることには疑問があります。これを認めることは、すなわち、通常の納税を、自治体に対する寄附活動と同一視することを意味しているのです。ふるさと納税制度を活用することにより、本来の納税に代えて、寄附額の一定額の控除を許容することは、本来の納税の意義自体を没却するおそれもありましょう。
そうであるにも関わらず、現住所に対するふるさと納税を行える自治体も現存します。この点についての早期の見直しが喫緊の課題ではないでしょうか。