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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:金地金密輸の処分件数・脱税額ともに過去最高を記録

近年、金地金の密輸が急増しており、その背景には消費税の増税が深く関係しています。財務省の発表によれば、平成28年度において金地金密輸事件の処分件数、脱税額ともに過去最高を記録しました。消費税率10%への引き上げが迫る中、税関では対策を強化するとしています。

■金地金の密輸が急増

金地金の密輸事件が近年急増しており、その背景には消費税の仕組みがあるといわれている。金地金の取引は消費税の課税取引に該当するため、金地金の売買は消費税込みで行われ、保有している金地金を売却した場合には消費税込みの価格で買い取られる。

以下の図は、財務省が公表した金地金密輸のスキーム図である。

(出典:財務省資料)

金地金の密輸は、消費税を申告・納付せずに国内に持ち込んだ金地金を国内の金買取業者に売却することによって、消費税額相当分を利益として獲得することを目的に行われている。

例えば、本体価格500万円/kgの金地金5kg(2500 万円)を輸入する場合、本来であれば輸入時に税関で200万円(2500万円×8%)の消費税を納付する必要がある。しかし、密輸者は、その消費税を納付することなく、金地金を国内に持ち込む。そうして密輸した金地金を市中の金買取業者に消費税(200万円)込みの価格で売却することによって、密輸者はこの消費税相当分を利益として得ることができる。

金地金の密輸によって得られた利益については、国外に持ち出され、新たな金地金の購入資金に充てられているようだ。
一方、金買取業者が買い取った金地金は、その後は正規の流通経路に乗ることとなり、国内需要を上回る分は輸出され、国際的な金市場に還流しているとみられている。

■金地金の密輸事件の処分件数・脱税額が過去最高

全国の税関当局が平成28年7月〜29年6月の1年間に摘発した金地金の密輸件数は467件(前年度比1.6倍)、その脱税額は8億7361万円(前年度比1.4倍)となり、ともに過去最高を記録した。

その要因としては、そもそも金地金が小型で隠匿が容易な高価な物品であること、密輸を企てる者にとって密輸に対する罰則が軽いと見られていること、国内の金買取業者における換金が比較的容易であること、金地金の国際価格が存在することから価格の予見性があるとともに、近年、その価格が高止まりしていることなどがあると言われている。

 

金地金密輸事件の処分件数と脱税額の推移(平成 24~28事務年度)

(出典:財務省資料)

財務省資料によると、金地金密輸の処分件数は消費税が8%となった平成26年から急増していることが分かる。今後、消費税率が8%から10%へ引き上げられると、密輸による儲けが更に大きくなることから、税関では空港に設置する金属探知機やエックス線検査装置の台数を増やすなど、対策を強化するとしている。

■金地金取引と所得税

個人が保有している金地金を売却した場合、所得税の計算はどのように行うのであろうか。金地金の売却は、状況に応じて「譲渡所得」「事業所得」「雑所得」のいずれかに分類される。

個人が持っている金地金を売却した場合には、金地金の売買業者等を除き「譲渡所得」に該当する。もし、営利目的で継続的に金の売買を行っている者であれば「事業所得」又は「雑所得」に該当する。

金の譲渡所得は、給与所得などの他の所得と合算され、総合課税の対象となる。総合課税の対象となる譲渡所得の金額は、譲渡益(=譲渡価額-(取得費+譲渡費用))から50万円の特別控除を差し引いて計算される。さらに金の所有期間に応じて、短期譲渡所得(所有期間5年以下)に該当すればその全額が総合課税の対象となり、長期譲渡所得(所有期間5年超)に該当すればその2分の1が総合課税の対象となる。

例えば、400万円で購入した金地金を500万円で売却したと仮定しよう。

もし所有期間が3年であれば短期譲渡所得に該当するため、譲渡所得=500万円-400万円-50万円=50万円となる。
所有期間が7年であれば長期譲渡所得に該当するため、譲渡所得=(500万円-400万円-50万円)✕1/2=25万円となる。

■「200万超」の取引は法定調書を提出

200万円を超える金地金を買取店に譲渡する場合には、本人確認書類の提出を要し、買取店はこれを確認し、支払調書(金地金等の譲渡の対価の支払調書)を税務署に提出することになっている。買取店から提出される支払調書により税務署が取引の実態を把握しているのである。

支払調書がきっかけとなって申告漏れが把握された事例もある。この事例では、支払調書を基に金地金を譲渡したとされるAに対して申告期限等を知らせるはがきを郵送したところ宛先不明で返戻された。そこで調査を行ったところ、金地金の売却時に貴金属取扱店に提示された本人確認書類は偽造されたもので、真の譲渡者はBであることが明らかとなった。Bは、金地金を譲渡した場合には支払調書が税務署に提出され、譲渡の事実が把握されてしまうため、本人確認書類を偽造し金地金の譲渡所得を申告から除外していたというものだ。

税務署では、法定調書等から情報を入手し申告漏れの有無をチェックしている。確定申告シーズンを迎えるにあたり、申告漏れがないように注意したいところだ。

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租税調査研究会事務局
tax@zeimusoudan.biz

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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