多くの税理士・税理士法人が現在、「経営革新等支援機関」となっている。中小企業庁から3月6日に公表された同支援機関は、新たに352機関増え、合計2万7811機関となった。このうち、4分の3が税理士・税理士法人とされるが、支援機関としての使命を全うしているのはまだ少ない状況だ。そのため政府は、認定支援機関に対して5年更新という新たなハードルを設けようとしている。
税理士や税理士法人のホームページをみていると、「経営革新等支援機関に認定されました」という記事をよく拝見する。
「経営革新等支援機関」は、国から中小企業の経営をサポートする一定以上の専門知識・実務経験を有する機関として認定されたことを意味する。つまり、国からお墨付き得た経営支援のプロフェッショナルと言えるわけだ。
認定機関になれるのは、商工会や商工会議所、銀行や信用金庫などの金融機関のほか、税理士、公認会計士、弁護士などだ。中小企業庁の管轄のもと、平成24年8月30日に「中小企業経営力強化支援法」が施行され、経営革新等支援機関を認定する制度が創設された。
どうして、こうした支援機関ができたとかというと、中小企業をめぐる経営課題が多様化・複雑化するなか、中小企業が成長していけるように国としてサポートしていくのが狙い。2017年版中小企業白書によると、日本の中小企業社数は約380万9千社。全企業数の99.7%を占める。国として、中小企業を支援し、経済成長にブレーキを掛けないことは緊急の課題になっているのだ。
税理士や公認会計士などの認定機関にとっては、国のお墨付きを得ることは大きなメリットだが、利用する側の企業にとってどのようなメリットがあるのだろうか。
まず、日本政策金融公庫の「中小企業経営力強化資金」を利用する場合、同支援機関のサポートを受けるなどの幾つかの条件をクリアすることで、同公庫の創業融資に比べて1%ほど低い金利で融資が受けられる。
また、「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」で示された方法で行う革新的なサービスの創出・サービス提供プロセスの改善や、同改善についてIoTなどを用いた設備投資を行い、生産性の向上を図るなどの条件をクリアすると、補助金などが付与される。つまり、同支援機関を利用することで、借入時に金利の優遇を受けることや、補助金が付与されるなどのメリットが受けられるわけだ。
中小企業庁によれば2018年2月28日現在、認定機関は2万7811機関に上る。このうち直近1年間で認定支援業務を行っていない者が約3割存在し、このいわゆる“幽霊認定支援機関”の質をどこまで維持・確保できるかが大きな課題になっている。「営業で使えるかと思って認定機関になったが、とくに相談も仕事の依頼もない」(神奈川の税理士)との税理士の声は少なくない。
専門家を有効活用して欲しい国に対して、支援する側の税理士側も、上手く中企業経営者に認定機関の話ができていない。
こうした状況に、支援認定機関に有効期限を設け、一定基準をクリアしないと更新できないようにする動きがある。現在は、一度認定を受ければ期限などの縛りはないが、今後は認定機関に5年の有効期間を設け、期間満了時に改めて業務遂行能力を確認する更新制を導入する計画。政府は2018年2月13日に「生産性向上特別措置法案および産業競争力強化法等の一部を改正する法律案」を閣議決定し、国会で審議を進めている。
なお、同改正案には、5年更新導入ほか、廃止の届出規程等も新たに設けており、“幽霊認定機関”は順次整理していく予定だ。