国税組織は、国税庁-国税局-税務署というピラミッド組織となっています。国税庁において国際業務に携わる部署として、『国際業務課』と『相互協議室』があります。これらの部署では、外国税務当局との円滑な関係の構築、税に関する国際会議への参加、移転価格課税を受けた場合の相互協議など、重要な業務を行っています。

国税庁において国際業務を行う部署として、長官官房に『国際業務課』と『相互協議室』があります。

■「国際業務課」の業務

国際業務課では、外国の税務当局間の協力関係の促進や経験の共有を行うため、アジア税務長官会合、OECD税務長官会議、OECD租税委員会などの国際会議へ参加したり、開発途上国への技術協力(注)などを行っています。また、外国税務当局との租税条約等に基づく情報交換の窓口としての役割も果たしています。近年、海外情報のリソースとして情報交換が注目されていますが、この情報交換は国税庁の「国際業務課」を経由して行われています。海外の税務当局に出張して行う情報交換ミーティングにも、国際業務課のスタッフが参加しています。

 

(注)開発途上国に対する技術協力

国税庁では、国際協力機構(JICA)の技術協力の枠組みなどの下、開発途上国の税務行政の改善、日本の税務行政に対する理解者の育成などを目的に、アジア諸国を中心に、開発途上国に対する技術協力に積極的に取り組んでいます。

技術協力の形態としては、①開発途上国への職員派遣(現地税務当局の要望を踏まえ、職員を講師として派遣するもの等)、②国内に海外からの研修生を受け入れ、講義などの実施(開発途上国の税務職員を対象として、日本の税制・税務行政全般について講義を行うもの等)があります。

 

■「相互協議室」の業務

相互協議室は、移転価格課税等により国際的な二重課税が発生した場合に、租税条約の規定に基づき外国税務当局との相互協議を実施する部署です。

移転価格調査は、主に各国税局の移転価格担当部署で行いますが、移転価格課税後の相互協議は、国税庁にある「相互協議室」の職員が行うこととなります。

国税庁と国税局は別組織ですが、相互協議室と国税局の移転価格の担当部署との間の人事交流は頻繁に行われています。

この相互協議は、移転価格課税だけでなく、移転価格の事前確認、外国法人の支店等へのPE課税(恒久的施設課税)、使用料等の源泉課税に関するものもあります。

国税庁の発表によると、平成28事務年度において、相互協議1件当たりに要した平均的な期間は、29.1カ月となっており、二重課税の解消に至るまで、いかに時間を要するかが分かります。

■主要国・地域に長期海外出張者を派遣!

国税庁では、海外の情報を適切に収集し、また 各国税務当局との連携強化を図るため、昭和60年から、米国をはじめ我が国と経済的つながりの大きい国・地域へ職員を長期間派遣しています。派遣期間は地域にもよりますが、2〜3年程度となっています。アジア地域や非英語圏では3年というケースが多いようです。現地で生活し、現地の税務当局との折衝などを行うため、高度な語学力が求められます。

長期出張者の主な業務として、

○派遣先国の税制・税務行政などに関する情報の収集

○国税庁からの依頼に基づく現地企業の実態確認や情報収集

○相手国の税務当局との連携が必要となる事項につき、重要なパイプ役(情報交換ミーティングのセッティングなど)

○日本からの出張者のアテンド

○国際会議への出席

などがあるようです。

 

《長期海外出張者の派遣都市》

ワシントン、サンフランシスコ、オタワ、ロンドン、パリ、ベルン、ソウル、北京、香港、上海、シンガポール、ジャカルタ、バンコク、マニラ、シドニー、ボン、クアラルンプール

 

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租税調査研究会事務局
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