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“税界”の裏話 財務次官ポスト 本命温存で浅川財務官が当確の理由

政府は6月10日、女性記者へのセクハラ問題で4月に辞任した福田淳一氏(58)の後任の財務事務次官に浅川雅嗣財務官(60)を充てる人事を固めた。発令時期は、通常国会の会期を見極めた上で決めるとしているが、財務官からの事務次官起用は、これまでにない人事だ。

2トップ不在という状況が続いている財務省だが、ようやく幹部人事も落ち着きそうだ。

マスコミ報道によれば、財務次官に浅川雅嗣財務官(60)、浅川氏の後任の財務官には武内良樹国際局長(58)が就任する方向だ。

これまで各マスコミでは、財務次官候補として、浅川氏と星野次彦主税局長(58)の名前が挙がっていたが、いずれにしろ、次の次の人事を見据えた「繋ぎ役」的な意味合いが強く、財務省の国際部門トップの財務官が事務次官に横滑りするのは極めて異例だ。

そもそも、加計問題や福田氏の辞任問題がなく、平穏にこの時期を迎えていれば、次期次官の本命は、岡本薫明主計局長(57)だった。ところが、岡本氏は森友学園問題の決裁文書改ざん時に文書管理や国会対応を担う官房長だったことから、「1回休みで傷をつけないよう温存する」方針が早々に決定していた。

岡本主計局長の温存により、福田氏辞任以降は、矢野康治財務官房長が事務次官の事務代理を行っているが、ポスト的な序列なら主計局長が担うのが自然だと思う。それだけ主計局長のポジションは高いのだ。

岡本主計局長を次の次官にするためには今回、岡本主計局長より入省年次が下の人にはできないという理由もあった。そこで浮上したのが浅川財務官だったとされる。大手新聞社の中には、星野次彦主税局長(58)が事務次官当確というような報道もあったが、その星野氏も入省年次は岡本主計局長より前だ。もし、星野主税局長が事務次官になれば、大蔵省から財務省に代わってから初めての主税局長からの事務次官だった。ちなみに、その前の主税局長から事務次官ポストについたのは、1981年の高木文雄氏以来。高橋氏は、前年の自民党総選挙で党を支配するに至った田中角栄の引き上げで就任。このときは、自民党内で田中氏と福田赳夫氏との、いわゆる「角福戦争」があったことが影響しており、福田氏は主計局長だった橋口收誌氏を次官に推していた。このときの次官争いは、世に角福戦争の代理戦争ともいわれた。高橋氏は田中氏の蔵相時代の秘書官だった。

さて、今回の浅川財務官の事務次官の就任は、麻生財務相の意向が強く働いたとも言われる。浅川氏は、財務官を異例の3期務めている。

ここまでして岡本主計局長を温存したいのは、事務次官の本命中の本命として育てられてきたからだ。岡本主計局長は、「10年に一人の大物次官」「最後の大物次官」「影の総理」と呼ばれた勝栄二郎元財務次官の『秘蔵っ子』と言われる。東大法学部を卒業し、1983年、大蔵省(現・財務省)に入省。主計局次長、官房長を経て2017年7月、主計局長に就いた。

財務省の事務次官は、主計局の要職を歩み、官房長、主計局長を経て就く“王道コース”を進むケースがほとんどで、岡本主計局長は、省内外から次期次官の大本命とみられてきた。辞任した前事務次官の福田氏もそうした経歴だった。

今回の財務省のトップ人事。異例の問題続きで、国民からは財務省内の浄化及び変革を望む声も強かったが、結局、エースを残すことでその体質改善にはほど遠いように感じる。今後の事務運営に注目したい。

著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は租税研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャーとしても活動。
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