国税庁はこのほど、平成29年度査察事績、いわゆる「マルサ白書」を公表した。同年度に全国の国税局・所の査察が行った告発件数は113件で、昨年度に続いて消費税の輸出免税制度を利用した不正還付事案については積極的に取り組んだことを明らかにしている。

今年3月末までの1年間に着手した全国の査察件数は、174件で前年よりも4件少なく、平成に入ってから最も少なかった。これは、経済取引の広域化・国際化・ICT化の進展により、脱税の手口が巧妙・複雑していることが影響している。
こうした中、平成29年度において国税庁が特に力を入れて取り組んだ事案は、社会的波及効果が高い事案。消費税受還付事案、無申告ほ脱事案、国際事案など。
検察庁への告発の可否を最終的に判断した処理件数は、27年度以前からの継続事案を含めて163件(前年度193件)となっている。このうち大口・悪質等により検察庁へ告発した件数は69.4%に当たる113件(同132件)だった。脱税額については、処理事案に係る脱税総額(加算税含む)は135億900万円(同161億600万円)で、告発分はこのうちの100億100万円(同126億9200万円)を占めている。
告発事案を税目別にみると、「法人税」が61件、脱税額は56億4500万円。「所得税」は19件で、脱税額は19億5000万円。「消費税」は27件で、脱税額は17億6800万円(このうち11億4千万円は消費税受還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む)の脱税額)。「相続税」は3件で、脱税額は3億8700万円。「源泉所得税」は3件で、脱税額は2億5100万円となった。告発件数の多かった業種のトップは26件の「建設業」。次いで、「不動産業」が10件、「人材派遣」が5件となっている。

告発した113件の業種・取引内訳をみると、最も多いのはワースト1位が指定席となっている「建設業」。26者と前年の30者より減少しているものの、平成27年度の15件、同26年度の16件より大幅に増加している。
2位以降は、「不動産業」10者、3位「人材派遣」5者となっている。平成28年度は、5位まで紹介されていたが、29年度は3位なでしか公表されておらず、おそらず、査察部門としては業界もかなり絞って深度ある調査を行ったものと思われる。