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2018路線価 全国平均で3年連続上昇も二極化鮮明に

国税庁が7月2日に発表した2018年分の路線価(1月1日時点)は、全国平均で前年比0.7%上昇となり、17年の同0.4%上昇から伸び率が拡大した。47都道府県のうち、前年比で上昇したのは18都道府県、下落したのは29県で昨年の32県から減少した。とはいうものの、上昇率が高い地域とそうでない地域の二極化が進んでいることも鮮明になった。

相続税や贈与税の算定基準となる2018年路線価(2018年1月1日時点)が国税庁から発表された。

路線価とは、国税庁が発表するもので、道路(路線)に面する宅地 1㎡あたりの土地の価格のこと。その年の相続税や贈与税を計算する際の目安となる。路線価は、土地取引の指標となる公示地価の約80%となっており、立地条件がよい角地は側方路線影響加算率を乗ずることで評価額を高く、間口が狭ければ間口狭小補正率を乗じて評価を低くするなどの調整がなされる。

今回発表された全国約33万1千地点(標準宅地)の対前年の変動率は、全国平均で0.7%プラスとなり、3年連続の上昇。訪日外国人観光客の増加によるインバウンド需要や、市街地の再開発計画がある地域が全体を押し上げた。

東京や京都などが大幅に上昇。好調な企業業績を背景にオフィスの移転・拡張の需要が高く、国内外の投資家による資金投下も影響している。一方、同じ県内でも、中心部や訪日客増の恩恵を受ける地域と、それ以外の人口減少が進む地域との二極化傾向はより鮮明となっている。

都道府県別の変動率では、トップは沖縄の5・0%で、那覇市のホテル需要が押し上げた。次いで20年の五輪開催を控える東京(4・0%)、仙台市で再開発が進む宮城(3・7%)と続き、福岡県(2.6%)、京都府(2.2%)も2%を上回る上昇率となっている。

また北海道(1.1%)、宮城県(3.7%)、広島県(1.5%)なども健闘している。

都道府県庁所在地の最高路線価をみると、上昇は33都市と前年の27都市から拡大。下落は水戸市のみで、前年の3都市から減少した。横ばいは13都市。路線価が一番高かったのは、路線価トップの常連である東京都中央区の銀座中央通りの「鳩居堂」前で、1平方メートル当たりで4432万円。前年比9.9%アップで、バブル期を超えた前年に続き、過去最高を更新している。

 

<都道府県庁所在地都市の最高路線価ベスト5>

*1平方メートルあたり、単位万円、カッコ内は前年比上昇率

 1:東京都中央区銀座5丁目 銀座中央通り         4432( 9.9%)

 2:大阪市北区角田町 御堂筋               1256( 6.8%)

 3:横浜市西区南幸1丁目 横浜駅西口バスターミナル前通り 1024(13.3%)

 4:名古屋市中村区名駅1丁目 名駅通り          1000(13.6%)

 5:福岡市中央区天神2丁目 渡辺通り            700(11.1%)

 

個別地点で上昇率全国トップは北海道ニセコ地区の「道道ニセコ高原比羅夫線通り」で同88%の上昇。スキーリゾートとして世界的に人気が高まり、外国人が高額なコンドミニアムなどを購入するケースが増えたものと予想される。

上昇率2位は、京都市東山区の祇園四条駅周辺で同25.9%アップ。訪日観光客の増加で商業施設の賃料などが高騰していることに影響している。

都市部や観光地を中心に地価上昇の勢いが増しているのは、訪日外国人客の増加が挙げられる。2017年の年間訪日客数は2800万人を超えて過去最高。今年はさらに上回るペース。訪日観光客が増えれば、宿泊や買い物、飲食などの需要は増え、街の経済回復につながる。

また、マンション需要の根強さも地価を押し上げている要因になっている。東京都心部などでは物件価格の高騰でファミリータイプの供給は減少しているものの、1億円を超える高額物件は売れ行きが好調だという。また郊外や地方都市でも駅の近くなど利便性の高いマンションは人気が高く、用地を確保するのが難しい状況となっている。

さて、こうした都市部を中心とした地価上昇はいつまで続くのであろうか。東京五輪が開催される2020年前後にピークに下落するとの見方もあるが、山手線新駅や渋谷駅、虎ノ門地区など五輪後も大規模な再開発が計画されている地区も少なくないため、五輪前後に東京の地価が一時的に弱まったとしても、中期的に地価上昇が止まるとは限らない。

注目されているのが、中央区晴海5丁目に整備中の選手村。都の計画では、大会後に複数のデベロッパーにより改修され、24棟で計5650戸のマンション群になる。一部は22年度末ごろから販売が始まる予定で、銀座や丸の内に近いエリアで大量の住宅がまとまって売りに出されるため、需要を刺激する可能性もある。

東京以外の都市においては、そもそも五輪の影響によって上昇しているわけではないので、五輪後もあまり影響がないものと考えられる。

注視したいのが、日銀による大規模な金融緩和策。今後も続く見通しなので、アベノミクスが目標とする物価上昇率2%の達成見通しが立たず先が読めない状況。日銀の国債大量買いで超低金利が維持され、土地やマンションを購入しやすい状況がこのまま続けば、地価の上昇基調も続くとの見方が多い。

注目を集めるのが、中央区晴海5丁目に整備中の選手村。都の計画では、大会後に複数のデベロッパーにより改修され、24棟で計5650戸のマンション群になる。一部は22年度末ごろから販売が始まる予定だ。

一方で、29県は路線価は下落しており、都市圏と人口減少が進む地域での差が広がっている。たとえば、四国4県は26年連続の下落だ。石川県は横ばいから下落に転じ、北陸新幹線の開業効果が続く金沢市以外の観光地が振るわなかったのと予想される。

京滋でも、人口集積地とそうでない地域の差は顕著だ。

著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は租税研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャーとしても活動。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
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